福島研セミナー







「メソスコピックなガラス系の階段的な応答」

講師 吉野 元 氏(阪大地球宇宙)
日時 2006年2月22日(水) 午後2時00分$\sim$
場所 16号館 827



スピングラスや高分子ガラスなど、ガラス的な系で温度をわずかに変えたり、外場をわずかに 変化させたりすると、rejuvenation(若返り)という奇妙な現象が起こる。一つのシナリオ として、系のエネルギーランドスケープが、環境パラメータの変化に繊細に応答して大きく変化 するという「カオス効果」が提案されている。我々は最近、1段階のレプリカ対称性の破れを 示す平均場模型でこの問題を研究している。具体的には、準安定状態のアンサンブルにおける 外場に対する応答をレプリカ法などを用いて解析している。まず、ある一般化された complexity(状態密度のlog)を導入し、これを用いて巨視的な側面を解析した結果[1] を議論する。次に、「熱揺らぎのサンプル揺らぎ」の解析に基づいたより微視的な アプローチを議論する。[2] とくに、非線形応答関数は非自己平均的であるとともに、 熱力学極限ではそのサンプルゆらぎが発散することをレプリカ法、低温展開の2つの方法で 示す。この結果から、メソスコピックなサイズの系で外場を掛け、変化させてゆくと 無数の階段的応答が観測されると予測される。有限次元系で重要だと考えられているdroplet励起 との関連も議論する。

本研究は Tommaso Rizzo 氏 (ENS Paris)との共同研究です。

[1] T.Rizzo and H. Yoshino, cond-mat/0508592
[2] H.Yoshino and T. Rizzo, in preparation.

連絡先: 福島孝治


Koji Hukushima 平成18年2月17日