!!!第5回おさらい !!今日のおしながき *統計力学の基本的な考え方 ** カノニカル分布 *** 熱平衡の条件 *** 統計力学的エントロピー *** 熱期待値 !!今日のまとめと反省 前回の最後はカノニカル分布の形を導出するところまででした.まだ,完全では無かったです.今回は普段はけっしてすることのない復習を黒板一枚分でざーとレビューしました.どうだったでしょうか.復習しながら,どこが問題だったのかと,今日はどこに向かおうとしているのかを説明した.まず,カノニカル分布の指数の肩の係数の意味を考えてみたい.まだ,熱力学は登場していない.この段階で確率最大化の条件から,熱浴と系の間の関係を見付ける.この条件から,もう熱浴の詳細によらないことがわかる.さらに,このつりあう条件は熱力学第ゼロ則っぽいなんて言ってみる.個人的にはここが限界かなと思う.ここからその条件の物理的な意味を考えるために,少し熱力学の知識をつかう.まず,一番大胆なのは統計力学的エントロピーとして,ボルツマンのエントロピーを導入する.そうすると,さっきの条件は熱力学でいう逆温度のつりあう条件になっている.ここで熱というか温度の概念を入れたことになる.その状況を少し議論する. これで,カノニカル分布の意味が与えられたことになった.確率分布が分ったので,期待値を計算しようというわけである.まだ,具体的な計算はできないが,形式論で何が言えるかを考えてみた.まず,エネルギーを計算して,それが分配関数を微分して得られることをしめす.これでエネルギーという量に関する予言を形式的に与えたことになった.それではその予言はどのくらい正しいのかを調べるために,ゆらぎを計算してみる.あれこれと計算すると比熱と関係していて,示量性を課すと,ゆらぎはし量的でないことが示された.ここから1自由度あたりのエネルギーの予言がほぼ確実になることを説明する.以前に説明した論理とまったく同じことがここで出てきたと言うわけである.今日はここまで. !!今日の宿題 *練習問題の解答例を配ったので,復習を是非してください. *2ー8の答えが中途半端で止まっています.エントロピーが増えることをしめす問題です.ぜひ,答えを完結させてください. !!配布するファイル *練習問題の続きを配ったです:{{ref note-sm2006-p2.pdf,統計熱力学2006おさらい5}} *解答例を3枚配りました.:{{ref note-ans-sm2006-v1.pdf,統計熱力学2006おさらい4}} !!今日の質問 今日はボチボチ質問が出てきて良かったです. !田崎さんの本はどうですか? 講義の前にWEBに公開されている原稿について,上の質問を受ける.「田崎ファンなんです」とな.公式見解として,「まだ読んで無いので詳細なコメントはできない」と冷たくあしらう.なんかモー娘(ふるっ!)のコンサートにいって,AKBはどう?って聞くような感じじゃないの? それにしても,最前列の学生もご丁寧にそのコピーをもっていたりして,田崎人気は駒場でも凄い.ちょっとやっかみもこめて少しだけコメントしました.研究者を少しでもめざすなら「ファン」は止めた方がいいと言っておきました.プロ野球選手を目指している子供達に聞いてごらん,「ヤクルトファン」「ロッテファン」はいても「イチローファン」はいないのですよ.イチローは憧れの目標です.イチローみたいになりたいと思ってがんばるんです.そういうものです.田崎さんの教科書じゃなくて,論文読んで,「こいつすごい!こんな研究者になりたい」と思うようにならないといけないと思います. 一方で,純粋にファンであることも悪いことではありません.「浅田次郎ファン」っていますよね.ちょっとしたエッセーでもすーとはいってくる読みやすい文章を書かれます.こいつは凄いと思います.でも,もちろん,作家になる気は毛頭ありません.そういうときにファンになるんじゃないかな. !E2で微分するの?マイナス? 普通に微分して変数変換するだけです.が,確かに一瞬気付きにくいところです.こういうところを突っ込んで欲しいです.ナイスつっこみでした. !βで微分するのはどうして? 期待値をとることと,微分することは同じです.といって,説明する.きっと説明の途中で答えわかったんだと思います.それでいいんです.これもちゃんと伏線張ってありましたね.おそらくそこに気付いたのだと思います.あれと同じなのです. !{{tex \langle E^2\rangle}}はN^2に比例するような気がするんだけど,どうして最後は{{tex N^{1/2} }}になるのかな? これは講義の後に質問されました.計算は追えたけど,ふと気付いてしまったというような質問ですね.いい感じです.確かにおっしゃるとおり,N^2に比例します.でも,第二項の引き算でその項はキャンセルします. !{{tex S=k_B\log W}}はどうやって正しいと思えるのか?検証できる? これはなかなか難しい問題です.講義で今後示すのは,統計力学の中でうまく熱力学関数をつくれて,熱力学と矛盾無く構成ことまでです.この式が本当に正しいどうかは難しいと思います.実験的な検証も右辺の評価が難しいのだと思います. !!今日の投票用紙の裏より 今日はなんだか一杯書き込みがあったな.無いよりはよいことです.ボチボチコメント返します. !統計力学は近似が多いですね. 物理の多くは近似です.どう近似と付き合うかは学ぶべきところかと思います.私も近似はなかなか好きになれなくてねー.センスがいるんです,近似には.やっても悪くなくて全く問題のない近似もあれば,致命的な近似もあるわけです.前者が物理的な描像をあきらかにしてくれることがよくあります. !授業をひさびさに受けましたが,面白いですね! 「ひさびさ」...ですか. !髪型がさわやかですね! おおきに.寝癖のままです. !独特の字がすてきですね! 君ら,褒め殺しか! 読みにくかったら指摘して下さい. !数学不可ってる人間は内容理解よりも式変形でつまづきます. そうですか.式変形はもう少しざっくり考えてもいいかもしれません.講義はライブなので,全てを押さえて聞くのは難しいかも知れません.何をやっているかという「心」を見失わないようにして,式の変形は家で復習のときにわかればよいのでは... !休んだときはHP以外にどんな本などを参照すればよいですか? 確かにこのページは機能していないです.やはり,横に教科書をおいておきたいです.初回に紹介した本はどうでしょうか. !新しい記号や重要な用語をもう少し黒板に書いて説明を残して下さい.そうしないと他の疑問点を考えていたり,板書していてききのがした時につらいです. なるほど.アガサクリスティー本の表紙カバーの裏のようなことですね{{fn なんのこっちゃわからんかもしれません.彼女の本は登場人物が多くて,本を読んでいて途中で誰がだれだかわからなくなることが多いです.そこで役にたつのが主要登場人物一覧表.カバーのめくったところにあるんです.}} 確かにねー.ちょっと考えておきます. {{footnote_list}} !勉強不足なので細かくコメント不能.他の講義よりも難しいと思います. 他の講義と比べるのも,まあ次元の違うものを比較しているようなもんだしね.でも,難しいと言うことね. !そろそろどの授業も復習しなきゃいけないくらいたまってきた.あわわわわ.おまけ:サイトの「講義場所」が何か変だすよ. がんばって復習してください.ためると大変ですよ.御指摘ありがとう.直しました. !日本語の文書による説明の部分は大部わかりやすいと思いますが,式を変形していくところの説明をもう少し丁寧にしていただけると助かります.それに初出の文字はいちいち定義してほしいです. なるほどね. !文字の定義がたまによくわからなくなります. こちらも注意しますが,是非止めて聞いてください.こっちは調子よく何も考えないでしゃべっている可能性が大きいです. !復習しないとついていけなくなるときがある程度に難しい 理想的でしょうか?何も復習しないで,お気楽モードで講義にでても,おそらく何も残らないでしょうから. !変数の定義を覚えるくらいには復習しないと授業に出る意味がないようなので復習します. 変数を覚えておくにこしたことはありませんが,それでもなお講義中にそのAはなんですか?と聞くのは全く問題ありません. !ボルツマン定数はプランクの考案によるものです.あるときプランクの弟子があればプランクの定数というべきでは?といったら「わしは定数は2つもいらん」といったとさ. これは有名な話ですね.今日ボルツマン定数が出てきましたしね.今年の前半にプランクの1906年に書かれた熱輻射の理論という本を読みましたが,そこにも自然界の基本定数として挙げられています.もちろん,彼はhのこともまだプランク定数とは呼んでいません.kもボルツマン定数とは呼んでいなかったかな. さて,物理の業界で重要な貢献をした日本人(おそらく)に与えられる賞に仁科賞がありますが,今年の受賞者の一人が東工大の西森先生です.わたしの研究分野に近いのですが,彼の受賞理由が「ランダムスピン系における西森ラインの発見」でした.日本人の名前がついていて,世界的に通用する数少ない例ではないでしょうか.この西森ラインも当初は彼自身で名付けられたわけではありませんでした.同じ日本人の方が,西森さんの貢献を讃えて,「もうこれは西森線と呼んでもいいのではないでしょうか?」と物理学会でコメントされたことがきっかけのようです.私も自分の名前のつく何かが見付かればよいなーと思っています. !!今日の雑談 *今日の投票数は,{{colorsize red, 6, 58}}でした.ここら辺で落ち着くのでしょうか.増える理由はないので,この数を最終回までキープしたいところです. *今日のアンケート 講義の内容は難しいか? でした.これは講義の最後にお願いする「授業評価アンケート」にもある項目です.最後に聞いてもみなさんにはフィードバックがかからないので,1/3を過ぎたところで聞いてみました. *結果は, ,かんたんすぎ,かんたん,ちょうどよい,むずかしい,むずかしすぎ,欄外 ,0,1,13,31,5,3 でした.まあまあ理想的かと思いますが,上のコメントにも頂いたように,定義がわからんとかそういう難しさは減らして行きたいです. *復習論:授業評価アンケートの話を講義中にも少ししましたが,一般にアンケートのけっかからわかるのは,予習復習をしない学生が非常に多いということ.今日はみなさんに復習のすすめの話をしました.もうそんなことは言わないでもわかると思いますが,復習は大事ですね.ありきたりな理由しか思い付きません.本当に講義を楽しむために復習は必要です.伏線に反応できるのも講義をよく復習している人だけです.刑事コロンボを見ても,何もわからないと楽しさは半減です.しかも,非常にもったいないのは,わからないときには何事もなかったかのように過ぎてしまうことです.他人がそこで楽しんでいるということも全く気付かないというわけです.もったいないですね. [このページのアクセス数:{{counter st2006-5}}]