第1回

今日のおしながき
  1. 導入
    1. 科学の中の物理
    2. 物理の中の力学
  2. 運動の記述
    1. 質点の位置ベクトル
    2. 速度ベクトル
今日のまとめ:

まずは自己紹介からと考えていたが,あまり自己紹介らしいものはしなかったような気がする.講義の内容に入るまでに,この講義の一般的なことがらを話した.特に大学の講義の考え方や,みなさんにとって重要?な成績評価について説明した.参考書の紹介もここには書けないような?内容をしゃべりました.考えてみれば,みなさんにとって,この講義が記念すべき大学での一番最初の講義となった.責任重大である.全シリーズの学生の感想では,第一回のこの序論というか雑談の評判が良くなかったので,どの程度話をするものかを直前まで迷っていた.完全に無くすのは私の講義でなくなるような気がしたので,ちょっと急ぎ気味だったが,とても一般的なことを話した.物理学の考え方の一端と,物理の中の力学の位置を確認しておいた.入試問題の話もしたが,どうしても話が古臭い感じがしてしまう.それを打破してみたい気持ちと古臭さを味わってみたい気持ちがごちゃまぜになった講義になりそうな気がする.

与太話ばかりでもしかたがないので,力学の内容に少しだけ入る.まずは運動の記述のための準備を説明する.簡単のために質点の運動を記述したり,あわよくば予測したりしたいと思うのが,力学の最初である.そのためにはどのように運動自体を言葉にするかが最初の一歩である.ここでは運動は時々刻々変化する座標で記述すると考える.そうすると,時間に依存した位置ベクトルが任意の時間で表現できれば,運動がわかったと思えるだろう.さて,その位置ベクトルの時間に関する関数形がわからない場合に,次にどっちに運動するかを予言したいとしよう.そのためには,現在の時刻の位置ベクトルだけでは全く次の位置ベクトルが予測できないのは自明なことである.例えば,ボールを投げて,写真をとったとしたときに,その写真だけから運動を予測することはできない.実際に運動を見ているときにはボールがどちらに飛ぶかは経験的にわかっている.それはどうしてかというと,位置ベクトルの他にその時刻における速度ベクトルが分かっているからだろう.

そこで,速度ベクトルを定義してみる.この速度ベクトルを使えば,現在の時刻の位置ベクトルから少し未来〔過去)の位置ベクトルを評価することができる.その少し未来の位置ベクトルからさらにもう少し未来の位置ベクトルを予測してみたいとする.そのときに,少し未来の速度ベクトルがわかれば,同じようにしてもう少し未来の位置ベクトルがわかる.さて,少し未来の速度ベクトルを知るには...やはり,加速度が必要な気がしませんか.その続きは来週に.

今日の配布物:
簡単な講義の仕様をメモしたものをお配りしました.重要な情報はこのページのアドレスくらいかもしれませんので,ここには挙げないです.必要な方は御連絡下さい.
今日の宿題:
  1. 時間の関数として,位置座標が次のように与えられている場合の運動を描いてみよう.
    • x=a cos (wt)
    • y=a sin (wt)
    • z=u t
  2. 速度ベクトルを求めてみよう
今日の質問:
A1/2とは何?

ルートです.√ともかきます.こういう質問は大事です.そこで悩むと困っちゃいますからね.その昔,とあるセミナーで(えらい)先生が居眠りされていて,突然起きたかと思うと,「そのHは何デスか?」と聞いて,発表者が「コレコレです」と答えると安心してまた眠りにつかれた場面に何度か遭遇しました.よほどHが気になるのでしょうか.(もちろん?そのHはハミルトニアンです).講義で質問するのは居眠りしてない証拠ですから,結構です.もっとも,講義が進まなくなるくらい質問が来たら,黙れといいますから,それまでは遠慮なくどうぞ.

物理専攻志望ではないが,(特殊じゃなくて)一般相対論を学ぶために必要な事柄は...

たゆまぬ好奇心と答えたかったが,それではあんまりなので,適当な情報を与えました.本当のところは,ミニマルに必要な情報は何かはわからないというのが答えです.

O(Δt2)とはどういうこと?

大きさがΔt2程度の項をサボって書いています.講義で示したのは,テーラー展開なので,その大きさの項がどんな形かは正確にわかりますが,時には本当にわからないとか,興味がないので省略する場合があります.もちろん,数学的にいい加減な意味ではなくて,Δtの大きさの項は含んではいけません.

受動的観測と能動的観測のちがいは?

よくかんがえてみれば,その境界は微妙なので,完全に二つは切れている場合ではありません.ここで言いたかったのは,自分から積極的に状況を設定して,実験してみるかどうかの違いがあるということです.その昔,自然のことを知りたいと思ったときには,まずあるがままを観測してみることしか術が無かったのだと思います.例えば,昆虫を観測するとか,星の毎日眺めるとか...これを受動的実験と呼んでいます.そのうちに,理想的な状況を自分で作って実験するという手続きが考えられました.重い石と軽い石を斜塔の上までもっていって,そこから落としてみるという感じです.こうした手続きを能動的実験と呼ぶとする.この手段は物理学者が持ち込んだものでしょう.検証をしてみることと,上の二つは独立です.例えば,星の観察でも実証を含めることがあります.ハレー彗星が今度いつ来るかを予測して,それを待っているというのは,受動的観測だけど,実証的観測ですね.

相対論と量子論を講義の関係で両方をとれないが,どっちをとる方がよい?

好きな方でしょう.来年も開講されるだろうから,その時に反対側をとればよい.

今日の雑談と反省:

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