第2回

今日のおしながき
  1. 運動の記述
    1. 加速度ベクトル
    2. 単位について
    3. ベクトルの演算
  2. Newtonの運動の法則
    1. 第一の法則
    2. 第二の法則
今日のまとめ:

前回は,速度ベクトルの定義から,未来を予測することを考えた.それは力学ではなくて,運動学と呼ばれるものである.極端な話では,質点の運動でなくても,株価の変動でもよいわけであった(もちろん,決定的な違いはあるけど...).その議論をもう少しだけ進めて,もう少し未来を先読みしようとすると,現在の速度変化,すなわち加速度が必要になる.今回はそのあたりから説明する.簡単な例題は宿題として出してみた.改めて,ちかいうちにレポートとしても出してみた.さて,この議論をドンドン進めてみると,現在の加速度の変化としての超加速度や,そのまた変化等を考えればさらに未来へ進めるような気がする.原理的にはそれは間違っていないだろうが,「力学」ではそこは考えない.力学では,加速度が「力」で決まると考える.これが良く知られているニュートンの第二法則である.そこに行く前に幾つかの準備をしておく.

まず,力学以前に必要な次元をまとめておく.そこでは(質点の)位置を表す「長さ」のスケールと運動を表す「時間」のスケールが必要であり,逆にその2つでことが足りている.速度や加速度もこの2つの次元で表されている.さて,次にベクトルの性質について簡単にまとめておいた.ベクトルの加減,内積(スカラー積),外積(ベクトル積)等である.特に最後のベクトル積は高校では出てこないものの,その便利さは後々効いていることになる.

さて,ここから力学の世界に入る.まずは,ニュートンの法則から入る.第一と第二法則を黒板にドドーンと書いてしまう.ほとんどの力学の教科書に書かれているこれらの法則だが,読めば読む程に暗黒の世界にひきずりこまれるような気がする.ここで重要な質問を幾つか受けたので,ゆっくりと話をする.しかし,クリアな解説にはならなかったなー(雑談へ).第一と第二法則の関係は微妙である(質問へ).それでも,2つ法則のもっている明らかな二面性については割とすっきりとしたのではないだろうか.すなわち,これまでにやってきた運動学としての側面として,「運動の状態」から「力」なるものを予測する術が一つである.すなわち,軌道を観測した時に加速度運動から力を決めることができる.もう一面は力がわかったときの,運動の予測である.後者はいわゆる微分方程式を解くことになる.この点はこの講義でもう少し詳しく見て行く.

このあたりでタイムアップ.今日は5分前に終了する.十分前には終わるように心がけて行きます.

今日の配布物:
なし.
今日の宿題:
  1. 前回のつづき.加速度ベクトルと速度ベクトルが直交していることを示せ.
  2. ベクトルについてのいくつかの恒等式を示せ.
今日の質問:
Newtonはどうして第一法則に気付いたか?

それはニュートンに聞いて下さい...
講義では,第一法則の行っている状況はこの世の中ではなかなか実現しにくいにもかかわらず,よく発見できたものよなー,とコメントしたところでこの質問が跳んで来た.地球上では重力のしがらみ(この言い回しはガンダムからかな)があるし,摩擦の無い状況は日常生活からはかけ離れている.それではどうして見付けたか? もっともこのいわゆる慣性の法則と呼ばれる法則は,以前に何人もの人(ガリレオ,デカルト,ケプラーら)に気付かれていたようである.おそらく,力というものを記述しようとしたときに,それが無い状況をまず考えてみる必要があったのではないだろうか.どこか遠くに一人ぼっちでいる質点の気持ちになってみると...でも等速直線運動しているとは思えないな(すでに慣性の法則やら,宇宙で物が漂っている映像が頭に浮かんでしまっている)
また,「物理法則はいかにして発見されたか」(ファインマン著)を開けてみたくなった.

第一の法則は第二の法則に含まれるのか...

これはよくある難しい問題である.まず,第二法則の力を零にしてみると,運動方程式から等速直線運動が出て来る.問題は,これ以上のことを第一法則が語っているかということである.第一法則の文面だけからは,正直これ以上のことを見付けることはできない.しかし,その意味を考えると,どうだろうか.

慣性系とはどういうこと?どうやって作る?

(追記:2004.04.22) 教室での解答は,静止している質点と等速直線運動している質点が等速直線運動に見える座標系のことを慣性座標系と呼ぶことにしよう,と説明した.そのような座標系は実は無数にある.例えば,静止している方の質点にくっついている座標系は慣性座標系であるし,同様に等速直線運動している座標系にくっついている座標系も慣性座標系である.同様に,その中間の等速直線運動している座標系でもよいというわけである.そうすると,慣性座標系ではない座標系も当然あるわけである.例えば,加速度運動する座標系は慣性座標系ではない.これは非慣性座標系と呼ばれている.私の説明(といっても正しいかどうかよくわからんし,私のオリジナルな説明ではない,きっと)では,非慣性座標系と差別することで慣性座標系を定義しているようなところがある.弱点は後でまた議論する.

すでに休憩時間に入っていたその時に,ある学生が「それでは混乱するでしょう」と話しかけて来た.それは昨年の冬学期の私の電磁気を受けた学生であった(こういうのはちょっと感動するよね).その学生によれば,「第二法則が成り立つ座標系を慣性座標系とする」のが,簡明だということだ.しかし,先の非慣性座標系でも(講義であとから出て来る)なぞの力を導入することで,第二法則を成り立たせるようにすることはできるので,その説明も少し欠けているところがある.また,力の存在がちゃんとわからなければ(慣性)座標系が設定できないような状況のようにも思えて,これは気持ちが悪い.上の方の説明では,2つ質点を持ってきているので,ここでいう非慣性系は慣性系ではなくなっていることはわかる.

例えば,ある本には,「第一の法則が成り立つような座標系を慣性座標系と呼ぶことにしよう」と書かれている.私の説明でも,まず最初に,「静止」しているとか,「等速直線運動」の存在が仮定されている.座標系を指定していないのに,すでに状態が記述されているわけである.しかも,「外力がない」と状況が指定してある.力とはそもそもなんだかわからないうちに状況が設定してあるのはどういうことか...自由落下する質点には力が働いているが,そのことを知らずに自由落下する質点にのっかった座標系から見ると,静止しているように見える.「これは慣性座標系である.外力など働いてはおらん」と言い張ることはできるだろうか.
それから,先程の弱点はこうである. 上の説明では,静止しているものと等速直線運動しているものが,すでに存在してしまっているので,結局はある慣性系が存在していて,そこから他の慣性系が作れることを言っているにすぎない.

だんだん,こんなことをWEBで公開しているのがまずい気がしたきた.どなたかコメント下さい(と書いても書かなくても,コメントが飛んで来たりのが,最近のネットワーク事情ですね).さて,深みにはまってしまったところで,よくあるもう一つの解答?を紹介しておこう.「慣性系は,ニュートンの3つの法則が成り立つ座標系のことである」これであなたは納得できるか?

テイラー展開の意味がわかりません.

例えば,なぜそこに1/2がつくかが不明ということでした.さらさらっと説明できればよかったですが,あらためてプリントを配ることにします.

今日の雑談と反省:

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