第9回のおさらい

今日のおしながき
  1. 線形応答理論
    1. 複素アドミッタンスと分散関係...補足
    2. 久保公式
今日のまとめ

例によって,講義の前には物性セミナーがあるわけだが,そこで加藤さんに「Kramers-Kronigは大学院の講義でやるのかなー」と聞くと,「それは無いでしょう」と帰って来た.セミナーの時に出てきたら,その場でやらせますと力強いコメントを頂く.普段甘々な福島だが,それではイカンと思い,講義ではしゃべらないことにする.因果律と解析性の関係と証明のアウトラインだけを話した.

今日のメインは久保公式を量子力学的に出してくることである.ここでやるのは外力を摂動項として,Liouville方程式について一次摂動をやってみる.量子力学IIとかIIIとかでやるような計算で密度行列の時間発展を調べる.計算したい量は,摂動的に加えた力に対する変位の期待値であり,形式的な解を代入した格好から応答関数を求める.久保の恒等式とカノニカル相関を用いれば,最後にコンパクトな式にまとまる.変位として,直接変位を考えれば緩和関数とカノニカル相関が,それから流れを考えれば応答関数がカノニカル相関で表されるので,それらを用いて,複素アドミッタンス(感受率)とカノニカル相関の関係を陽に書き下すことができる.これらはまとめて久保公式と呼ばれるものである.

途中でのカノニカル相関を出したところで,少しだけその性質を見てみた. 古典極限では通常の相関関数になるように定義されていて,古典系の相関関数の持っている幾つかの性質が成り立っている.その性質は証明は与えていないので,試してみるとよいだろう.講義でも少しぼやいてしまったが,このカノニカル相関の気持ちを私はまだよく理解していない.歴史的な背景があったようにも思えるし,必然性があるようにも思える.下へ..

今日の宿題:
  1. 分散関係を示すのは宿題にします.
  2. 久保の恒等式を示せ
  3. カノニカル相関の性質:対称性,定常性,実数性
今日の質問:
カノニカル相関の古典極限とは?
今日の雑談と反省:

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