トップ 差分 一覧 Farm ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

今日の一言/2006-4-20

研究室の境界

大学院が研究室に分れていることには基本的に賛成である.大学院生は研究室に入って,精一杯研究すべきだし,研究室でこそ成長できるのだと思っている.しかし,一方で,(特に理論の場合)専門にのめり込むばかりではなくて,同時に広い視野とバランス感覚も磨くべきだとも思っている.それは,研究室の境界を少し越えたところで養われる.今の自分が,量子スピン系の話や固体物性論の話をすぐに理解できなくても,興味を持って聞くことが出来るのは大学院のときに養った感覚である.その意味で当時の筑波大学物理は良い機会を提供してくれていたのだと思う.私もそんな機会をここ駒場で提供したいと強く考えている.その一つは明日からシリーズが始まる物性セミナーであり,またもう一つは今日から始まった輪講である.今日の輪講には5研究室から総勢10人の院生が集まってくれた.それぞれ院生さんたちの研究分野は物性理論と言えば共通だが,スペクトルはかなり広い.それが集まって一冊の本を読むんだから,面白くならないはずがない思う.ちょっと輪講をするには人数が多いのだが,できるだけ有意義な時間が過ごせるように頑張って行きたい.

学生が大学院の研究室を選択する材料の9割以上はボスの資質だと思う.研究内容が面白いとか,勢力的に研究しているとか...なので,学生に来てもらうためには自分がバリバリ研究するのが一番である.これは研究室単位の競合であり,多くの場合競合相手は別の大学にいることになる.もし,残りの材料があるとすれば,それはその大学院の持っている「雰囲気」とか「薫り」なのかもしれない.なんとなく訪れてみたくなる雰囲気ってあるのではないだろうか.今いる大学院生が研究室の境界を少し越えたところで交じりあって(もちろん私もまざりたい),「駒場に来れば切磋琢磨できる」というような雰囲気がうまくできればよいと思う.大袈裟かもしれないが,こうしたことは大学間の競合に負けないために我々にできるこましな正攻法の一つなのではないかと思う,けっしてCOEをとってくるとかではなくて.

今日は一言ではなくなってしまった.

[ページのアクセス数: ]

最終更新時間:2006年04月20日 21時00分43秒