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今日の一言/2008-7-14

教科書と論文と

今日で大学院の講義が終了.今回は統計力学に関することを自由にできたので,相転移と臨界現象に関する古典論文を紹介する一連の講義にしてみた.ピックアップした話題は,こちらの中の大学院・統計力学のページにリストしてある.講義としては,うまくできた感じは全くしないし,一方で学生にウケていた感じも全くしなかった.ということは,失敗講義なのか???おそらく,そうであろう.このラインアップでうけない講義をしていては,先人たちに申し訳ない気分でいっぱいである.原因の一つは,情報をきちんと伝えていないことにあるのだと思う.一つの論文を一こまで紹介するのは難しくて,結局ダイジェスト的な解説をすることになる.それでも十分に意味のあることだとは思っていたんだが...

大学院くらいのレベルになると,新しい知識を学ぶのは,教科書か論文か?と疑問になる.当然,どっちもどっちなことはわかっている.ただ,これだけ情報が溢れている時代にあって,少しゆっくり時間をかけてオリジナルの論文を読むのも悪くはないだろうと思うのである.けっしてスマートではなく,どろどろとしていて,現代的にはもっと賢くまとまる議論でも,やはりパイオニアの力強さと切れ味は教科書では学べないことも多いのではないだろうか.KT理論の解説などどの教科書を読んでもわくわくしないだろう.是非,新しい道を切り開くべき若い人達に,数十年前に新しい道に踏み込んだ研究者の結晶を味わってほしいと思う.今回の講義はその誘いを目指していた...のであった.

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最終更新時間:2008年07月19日 18時35分32秒