!!かきまぜるスプーン [酒井くん論文|http://arxiv.org/abs/1301.4801]がプレプリントサーバーにアップされる. コーヒーにクリームを入れてしばらく待つと,クリームは溶け込んだ平衡状態になる.このとき,何もせずにじーと待っていると,拡散の結果として平衡状態になるが,明らかにスプーンでかき混ぜた方がさっさと溶ける.物理系の平衡状態を素早く作りたいときに,どんなスプーンを使えばよいだろうか?スプーンをさしたまま残しておくとそれは元の物理系とは異なるので,できればかき混ぜるスプーンはいつの間にか消えてくれるか,見えな方がよい... 例えば,物理系のモンテカルロ・シミュレーションを行うときには,さっさと平衡状態が作りたいわけである.うまくかき混ぜてくれるスプーンはどこにあるだろう?酒井くんの研究を柔らかく言えばこんな感じだろうか.詳細つりあい条件を満たした拡散過程ではなく,がちゃがちゃかき混ぜて,それでいて望みの平衡状態を作りたいわけである.酒井くんが見つけたのは,一次元動的イジングモデルの解析から,詳細つりあい条件を破るけど「ねじれ詳細釣り合い条件」を満たすある遷移確率を用いると,動的臨界指数zが1になることがわかった.詳細つりあい条件を満たしているときはz=2なので,これは拡散現象であって,z=1になったということは弾頭的?緩和になっている.局所状態更新する遷移確率でこれが出てくるのでちょっと不思議.それから詳細つりあい条件からのずれをパラメータ化すると,どうやら詳細つりあい条件を満たす点が一番遅くなっていることが解析的にわかった,少なくとも調べた範囲では. きっかけはSuwa-Todoの仕事であって,「なぜirreversibleにすると緩和時間は短くなるなるのかをかんがえてみよう」というのが課題である.そもそもPeskunの定理も成り立たないので,よい遷移確率を決めるための指導原理がないわけである.ここは落ち着いて解ける模型で加速する具合をみてみようなどと思ったのがことのはじまり.まったく飛び道具を使わずに示しているので,堅実な仕事だと思う(自分で言うか?).記憶が正しければSTATPHYS24の会議の休憩中に藤堂さんからSuwa-TodoがPRLに採択されたことを教えていただいた.あれから3年たったか.