!!日本物理学会秋の分科会@岩手大学,2008/9/20-9/23 今年の物理学会秋の分科会は盛岡の岩手大学である.もう10年ぶりくらいだろうか.黄色みがかった稲穂が広がる田園風景をみながら,秋の気配を感じるものの,期待していたさわやかな気候とは反して,蒸し暑い毎日がつづく.ふと一年前の札幌も暑かったことを思い出す.宿は盛岡の駅の近く.昔の記憶をたどって,大学を目指すと,見覚えのある焼肉冷麺屋さんを発見して,まいごになることは逃れた. 毎回書きつづけてきた学会レポートも相当に飽きてきた.個人的にはよい学会ではなかったので,なかなか筆も進まないものだが,なんとかできる範囲でがんばってみたい. !第一日目 :スピングラス:今回は初日にスピングラスセッションがあった.まあ,聞いたことのある話が多かったので,それほど心がおどったわけではなかったが,北谷さんの話が一番面白かった.セッションの始まる前に,森田くんの仕事の一般化で,「あんた,あのときなんかゆーとったやーん」...「なんか言ってたかもしれないけど覚えていないし」...という会話のあとで講演を聞くと,段々思い出してきた.そして,肝は式(11)です,きっと.一度手を動かさないとわからないけど,この条件式が昔「できない」とコメントしたことが覆ることになる原因で,要請としてはかなり緩い.ガウス分布の場合はおかしいのではと田中利さんが斜め前でぶつぶついっていて,ちょっと混乱したけど,休憩時間にはちゃんと整理されていた.問題なし.量子アニーリングも数件あって,ここで無くても..と思いながら,鈴木正さんの講演中のおそらく誰もひっかからないだろうある部分がつぼにはまる.講演のときには質問はせずに,後で鈴木さんを捕まえておしゃべりしておいた.今度あったときにデータを見せてくれるとのこと.小渕くんの話はこの前来てくれた時にアウトラインを聞いていたのに,講演はきちんと理解できなかった.しっかりステートメントが強化されていたので,動揺してとんちんかんな質問をしてしまう.大関くんの話もこの前に勉強させてもらったのでよく分かっていた.個人的にはN線の外に議論が出ていて,そごく健全になって拡がったと思うのだが,この興奮は聴衆には共有されていないようだ. 学会の立上りとしては,ぴゅっとスイッチが入るよいセッションだったかもしれない.招待講演者がキャンセルになったので,先の焼き肉屋に冷麺を食べにいく. :ガラス転移・ジャミング:午後はこのセッションにでる.近くの業界ではここが今一番ホットな感じがする.すごいのかすごくないのか分からない発表もあるのだが,どうやらプロパーな聴衆の反応を見ているとすごいらしい.いろいろと勉強になる.一度,シンポジウムでもして,サーベーしてほしい(最近あったか?).佐々研の現役学生さんのお二人は,そういえば最近話を聞いていなかった.面白げではある.もうちょっと平衡統計力学のテクで攻められるような気もする.ちょうど斜め後ろで樺島さんがぶつぶつ言っている.吉野さんの話はこの前駒場に来られたときに聞いていたが,何に驚いたかというと10分トークに内容が収まったところ(これは佐々木さんの指摘ですよ).アブストラクトなうまい説明だった... 夜は佐々木さんを捕まえて夕食をいっしょにする.南部なんとかというところに行きたいということで,地図を見ながら探索すると,10年くらい前にも来た店だった. !二日目 発表の資料に手をいれていてあまりよく眠れなかった.朝は20分程度の散歩で大学に到着.最近,学会では必ず散歩している気がする.けっして趣味ではないのだけど. :古典フラストレート系・スピングラス:前半のセッションは座長である.数年前に回ってきた座長の出来はいまひとつだったので,今回は気合いを入れる.予稿集は必ずしも発表内容とフィットしないことがあるので,適当に予習しておいて,リアルタイム反応の感度を挙げて挑む.あまりでしゃばらないように,かつ会場を盛り上げるのが座長の努めということで,がんばってみました.質問者の不透明な質問をクリアにして発表者にお渡しするのも座長の努め.前回よりはよかったかな.ただし,ここでエネルギーを費した感がある.Vietくんのは,くるまえにプレプリントまで読んでおいたので準備万全のつもりでいたが,実はノーマークであったのがいけなかった.講演タイトルを読み上げるときに,本当に初めてタイトルをみたのであった.「one dimensional...」?えっとそんなことやってましたっけ?そうです読んでおいたプレプリントはまったく関係ありませんでした.あわてて質問をかんがえる.大久保くんは初めて認識したが,優秀な学生さんが川村研には集まるものだなーなどと関心していたら,彼はポスドクでした.失礼しました.みなさん楽しい内容だったので,気持ちよく座長ができました.きっとここで運気を全て使ってしまったんだろう. :後半セッション:休憩明けは私から.学会前にめずらしく練習なんかやったんだけど,プレゼン能力は年々落ちている.ひっどい発表だった.田中和さんと伊庭さんと筋の見える人にしか理解できない発表でした.12月の研究会はこの話題をもう一度ゆっくり話すか...そうそう,前日に尾関さんと話していて,「同じ研究室なのにPCが別々なのは常識ないようねー」といわれていたので,この日の福島研3連発はPC共通にすべきと今朝思い立つ.ただ,3人ともOSが違うわけで,私の資料はPDFだったので,坂田さんのPCにコピーする.最近愛用のWalkmanはUSB直結でメモリーとしても使えるので大変便利.そして,坂田さんのPCは...キティーちゃんで溢れていて,後から気づいたがきっとキーマップも変えられていて,使いにくい...とうとう福島もキティーちゃんデビューすることになった.やはり尾関さんに怒られても自分のPCでやるべきだった.次の中島くんは...ひさびさに赤面ものだった.西森さんの指摘のとおりATモデルですね.ノーマークなはずはなかったんだよ.ただ,臨界指数の件は認識していたが,MattisSGの存在は認識していなくて,油断してました.飲み込むのに数分かかって,坂田さんの発表の前半は頭真っ白でした.やはり,n<1で数値計算すべきでした.というわけで,坂田さんの発表の半分は聞いていなかったのだけど,ここでも調子よく西森さんから突っ込まれて,私はできるだけ黙っていました.いろいろ指摘を受けてよかったです.樺島さんからの質問にはなんと答えてよいか...次回に計算してデータを見せましょう.後は佐々木さんのところの講演2件.これをM2でやるのかというような複雑なお仕事でした. :非平衡ゆらぎシンポジウム:午後の最初はシンポジウム.前半までで出る.鳥谷部さんの実験の話は初めて聞く.驚くより他にない.他に散逸していることがないの?という感じ.ビーズ見てるんですよね.うーむ,すごい.やはりFDTの破れは引き算なのね.でも割算と矛盾するわけではないのか.ということは,帰りの散歩で中島哲くんと話していてわかる.FDTの破れがない周波数ではx=1で,ずれているときにはx<1というだけのことですね. :その後:シンポジウムにずーといてもよかったんだけど,ちょっと思い立って,外にでる.まずはポスターセッションを見に行って,慶応の佐藤研のポスターを見る.残念ながら発表者はいなかったが,ひと通り読む.AgMnの微小化はいろいろと難しいらしい.その後は領域3のスピングラスセッションにいく.谷口さんの発表に間に合わなかったのは痛恨.斎藤さんの話は面白そうだったけど,みなさんの指摘されるように他の実験が必要.せめて比熱の測定をしてエントロピーだけでも見てみたい.セッションが終わったので,佐藤先生にポスターのことを少々質問して,領域11に戻ってきて,稲垣さんの話だけを聞く.逆問題的に何かわかればよいのだけど,難しい. この日は研究室の口頭発表が終わったので,半分打ち上げ.西森研の若い学生さんにも混ぜてもらって,十分にしごかれました.へこたれていても仕方がないのでがんばります. !3日目 :フラストレーション:古典スピン系にも行きたかったが,今回は磁性セッションにでることにする.フラストレート系は実験的には盛り上がっているようだ.10年以上も前に提案された川村宮下のトポロジカル秩序が議論されていて,楽しそうだ.ったけど,実験的にクリアな証拠が見付かっているようには見えず,もやもや感だけが残る.後は話が難しくてうまく聞けなかった. :液晶:後半はふらりともどってきて,液晶セッションにいく.ここはアタリだった.荒木さんの話も面白かったし,佐々木一夫研の発表も面白かった.液晶なので電場とカップルしている配向の自由エネルギー最小を見付ける問題になる.ポアソン方程式をといて最適化して温度冷やして...それだけでもなんとなく面白い.お昼ごはんは佐々木研に混ぜてもらう. :マルチシミュレーション:後半は別に面白そうなシンポもあって迷ったが,ここに来る.楽しい話が沢山あった.大谷さんの話は一度ゆっくり聞きたいと思っていたので,よい機会だった.迫力満点で面白かった.電極反応など小学生でも知っている現象なのに,物理的には難しくてチャレンジングな問題だと思う.でも非常に難しい.阪大の尾方さんの話も非常に面白かった.彼は工学系で物理学会では話したことが無かったらしい.内容はやはり工学なんだろうけど,素朴に面白かった.金属ガラスはかなり普遍的に2%ひずみで割れるらしい.ただし,ナノスケールだと10%ひずんでも割れない.ミクロとマクロの顕著な違いがあるわけだが,第一原理計算からマルチスケールシミュレーションでシナリオを作っている.本当か?というと,そこまでつまっている感じはしないが,第一感的にはそうなんだろう.100nmぐらいのずりが起きると融解が起きて,後は崩壊するということだが,決して100nmのシミュレーションをやっているわけではない.マルチスケールをみるモデル化にはどうやらものすごいセンスが重要らしい.カーボンナノチューブの熱変形も面白い.その前にもう一つ話題があったけど忘れた.いつか形状記憶合金の統計力学的物性理論的研究をやってみたいものです. 今回も情報統計力学セッションは欠席.体が2つあればなー. !4日目 :ポスターセッション:午前中は領域11のポスターせっしょん.しかも私は座長.お仕事がんばる.ポスターの座長の仕事を勉強する.ポスターセッションの座長というのは,特に重要な仕事はあまりない.ポスター発表がきちんとされているかを確認して,学会員でない人や学会登録中である人の確認作業をする.投票で決まるposter awardを設定して,その選考委員長くらいにしてくれてもよいような気がする.現実は適当に見張りに回って,いくつかの講演を聞く.寺本さんとひさびさにおしゃべり.εマシーンとは書いてなかったけど,シンボル化したマルコフ連鎖の話を聞く.小松崎研という感じ.シンボル化するときのユニークネスの保証はなくなるとのこと.何か力学系としての普遍な構造が残ればよいとおもうのだけど...それからSLEの発表をみにいく.以前にちょっとだけ勉強したので不思議さだけは認識している程度だったが,まだまだ勉強不足でポイントがいまひとつ掴みきれなかった.ただ,大事な感覚を思い出させてくれたような気がする.何かしら非自明な関係式なり予言なりがあったときに,自分なりに飲み込もうとする姿勢である.そのときに数値実験はそれなりの役割がある.SLEの彼の話はそんなテーストだった.最近領域11に関して盛り上がりに欠ける感じがするのはこうした素朴な追求がないからのような気がする.もともと領域11というのはごった煮かつ個人経営集団なんで盛り上がりは期待しないのが当然かもしれない.でも,すごい非自明な驚くような関係式があったときに,とりあえず数値実験や摂動計算をして飲み込むのがそれに興味を持つ証だと思う.半分くらい自戒も込めているのだが,そうした研究が少ない.たしかにそれは研究ではないのかもしれないが,あまりにも遠くから眺めているだけで,だがしかし,眺めている人数が多いというのはおかしい状況だと思うのだ.今日は少しだけSLEが近くにきた感じがする.けっして自分から寄ったわけではないんだけど...後はあまり落ち着いて回れず,基本的には座長席にいる.ちょうど座長席に前に,中島哲くんと坂田さんのポスターがあり,それなりにお店は反映しているようでよかった.中島哲くんの方はいわゆるプロ級の人達がかなり来てくれていたようだった.坂田さんの方は,私のよく知らない,きっとその道の人が来てくれているのだろう.五味さんも聞きに来てくれていて,後でちょっとおしゃべりする. 午後は非平衡やらネットワークやらをふらふらしてから,帰路につく.前日に駅ネットしておいてよかった.お疲れさま>自分.土日や休日に学会があるのは,家族のある人にはよくないですねー.年々そう思います. [{{counter JPS2008a}}]