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日本物理学会2008春

日本物理学会@近畿大学,3/22-26, 2008

春の物理学会へ向かう.今回は前日に数学会との合同シンポがあり,さらに次の日に研究会がくっついていて,長めである.近畿大は大阪の南にあり,JRの鶴橋から近鉄で少しいったところに位置している.毎日,電車で通ったが,帰りに鶴橋の駅で,焼肉のいい匂いがするのは心が揺れた.一度くらい食べにいけばよかった.近畿大学はきれいなキャンパスで,外人が接客するレストランがあるのは面白かった.英会話勉強用なのだろう,留学生の方々が接客し,会話しに寄ってきてくれる.駒場にも欲しい.

第0日目

数学会との合同シンポに参加する.何度も同じことを書いている気がするが,もうちょっと若いころはこのよう行事に参加する気はなかったのだが,これもまた年をとったということか.合同シンポを企画された方々に感謝をしながら,朝一番の鹿児島会長の挨拶からしっかり拝聴させていただく.開始前の状況としては席はまばら,個人的な印象としては,年配の方々と非常に若い学生さんに相分離していて,我々世代は希薄な感じした.

  • 午前中は蔵本先生と三輪先生.対照的なお話だった.少し前の蔵本先生の縦書の本を読んだときと同じ印象を今日の話からも受けた.なんというか,我々の分野の人にはきっととても当り前のことを主張しているようで,とても気持ちよいけど,それほど説明されるということは,自分らの感覚は非常にレアなのかと心配になってしまう.さらに,敵はもう身内ではない時代なので,我々は何を意識して,外にどのように発信するかという大事な「物理学のゆくえ」には時間がなくてつっこまれなかった.これは残念.最後に田崎さんが「ありきたりの質問」と称して,「普遍性かぶれて,他の分野に乗り込んでいくことに真の意味はあるのか?」(というような趣旨の質問だったと思う)には...ありきたりだけど,ちゃんと考えないといけない問題...だけど...続いて三輪先生は私にとって初遭遇で,難しい話だった.でも,数学者は本当に楽しそうに研究していることだけはわかった(こどものような感想だけど).ΔゼロでJordan-Wignerにいかなくても,そこは弱点だけどもの,自明でないことを含んでいるのかもしれないという感覚は独特な感じ.
  • 午後は,田崎さんの講演から,加藤先生の話まで,実に勉強になった,いろんな意味で.そういえば数学者の講演を聞く機会は今までそんなになかったので,非常に新鮮でよかった.田崎さんもそうだけど,加藤先生の話は本当に芸だと思う.しかも,その中に研究への愛が滲みでているわけで,わしも10年20年たったときにそうなっていたいものだ.

第一日目

いつもよりも一日はやく学会モードにはいっているので,初日から動きまわる.

スピングラスセッション
実験のセッションにいく.香取さんの話と佐藤研の話だけ聞かせてもらう.いろいろ質問したいことがあったが,ちょっとだけで他に移る.理論的にどうすればよいのかまだピーンとは来ていないが,面白い話題だと思う.一番近いのは吉野さんかな.メゾスピングラスでへんなデバイスとか作れるといいのだけど...フラクトンの最近の結果も聞きたかったのだが,他と競合していて聞けなかった.とても残念.

古典スピン系
富田さんと岡部研の安田くんの発表に反応する.富田さんにはいろいろと教えてもらう.彼の使ったO(N)法はFukui-Todo法IIなのだが,それはまだ論文になっていない.藤堂さんがんばってそれも書いてください!個人的には,藤堂さんや富田さんや尾関さんとおしゃべりしているときが一番刺激的に思える.安田くんのは驚くべき結果である.前回の学会でその片鱗は出ていたのだが,今回はそれを完全にダメを押した形になっている.有限サイズスケーリング関数がものすごく普遍的になっていて,臨界指数の異なるあるクラスに対して成り立っている.調べられたのは彼ら独自の相関関数比だが,Binder parameterや相関長比等の標準的な量でも試して,無限系を外挿して臨界指数を評価すると,さらにダメを押すことになるでしょう.
確率課程
うーむ,想定していた内容と全然ちがった.ちょっと横にいくと面子と内容が分かっていないなー.
JPSJフレンドシップミーティング
お昼ごはんを食べにいくのではなく,高山先生に会いに,そしてJPSJの現状を知りにミーティングに出る.OA化が知らないところでものすごい勢いで進んでいる.どのような戦略をとればよいのかは,もっと国レベルで考えないといけない問題だ.SCOPE3のアイデアも面白いが,物性物理の業界で機能するのか,あるいは機能させることがよいのかどうか不明.
若手奨励賞講演
午後は領域11の若手奨励賞講演を聞きにいく.この分野で今一番イキの良い若手がここに来れば見られる.もちろん,もう自分は若手ではないので,そこの舞台にあがることはない.そうした人達に負けないようにがんばりたいものである.

第二日目

高校生のJrセッションが予定されている日で,以前から興味を持っていた.ところが,日程の都合上今回もまたいけなかった.本当に残念.Jrセッションのプログラムを見ていると,とても楽しそう.10年後の大人のプログラムよりも楽しそうだぞ.彼らは我々のプログラムを見て,憧れてくれるのだろうか?まあプログラムよりも本物の講演を聞きに来てくれるとそれでいいのだけど.

化学物理+領域12若手奨励賞
北尾さんの仕事に興味があって,ピンポイントで聞きにいく.遷移行列から自由エネルギー地形を推定する考えだが,これはεマシーンとかとも同様.もちろん,普通に完全な遷移行列はできるはずがないのだから,情報を捨てる必要がある.その段階で恣意的なってしまう.今回も状態は適当に選ぶようだ.やはり簡単ではない.ただ,最初の思想が非常に分かり易くて,短時間の沢山の並列計算からいかに長時間に起こることを知りたいようで,そこに共鳴する.発表はクリアーで質疑応答も明解で,講演の後で少しだけ,こちらの考えを話したが,実に素早い反応が返ってくる.聞けばD2の学生さんとのこと,こういう出会いがあるの学会のよいところだ.休憩の後には領域12の若手賞の講演会があったので,最初の杉田さんの話だけ聞かせてもらう.カルシウムポンプの話だったが,これは勉強になった.
フラストレーション・シンポジウム
その後は昼休みまで,ずーと研究打ち合わせ.お昼を食べるチャンスがなかったが,パンを買ってフラストレーションのシンポに潜り込む.この午後にはフラストレーションのシンポが並列に走っている.同じ領域の企画で,似たような内容が並列に並ぶのはまったく問題であるし,感じが悪い.意図していないのだとすれば,世話人の制度の問題だ.途中で,上(RJ会場)から下(RH会場)へ移動.複雑秩序シンポにちょっと寄り道.上で理論解析した話の実験の話が下にあったり...

第三日目

ポスターセッションやら
中田くんのポスターの周辺をウロウロ.結構多くの方々に聞いてもらっていたようだった.ありがたいことだ.途中から,情報統計のセッションやら,生物進化やらをうろちょろする.金子さんの熱っぽい講演は久々に聞いた気がする.立川さんの話はもっとゆっくり聞きたかった.これは駒場でできることだ.そうこうしながら,裏で一生懸命算数を続ける.

第四日目

とうとう学会最終日.出張も長くなるとヘロヘロ気味だが,今日が本番だったりする.

スピングラス・セッション(午前)
坂田さんと斉藤さん@菊地研の講演がある.坂田さんの話への聴衆の反応はいまひとつだった.これは研究が悪かったというよりは,言葉が通じなかったことが理由だろう.後で数人に説明するとそれなりに興味を持ってもらえたと思う.聴衆をみてそれにフィットした話をするのは,大人でも難しい.斉藤さんの発表もまあまあでした.発表することで,次に繋がることはあるわけで,実際に面白い話を聞かせてもらった.それから,Vietくんに久々に会った.もうちょっと話をしておけばよかった.結構大変な計算を続けていて,面白い結果になっている.結局,overrelaxation法も合体して,L=32のハイゼンベルグスピングラスに至っている.そうそう,佐々木さんの話は相変わらずうまかった.雰囲気を一変できる稀有な人だと思う.研究も着眼点が気持ちよい.もっとも自然な疑問をぶつけたら,「待ってました」とばかりに次のスライドが出てきた.けっして,「さくら」ではありません.ただ,そのスライドは是非見せるべきだったと思う.そっちの方が面白いじゃないの.当然,吉野さんのtwin experiment解析がしたくなるし... 
スピングラス・セッション(午後)
うちのダブル中島が講演.まずまずの発表だったか.尾関さんにはしっかり反応してもらってよかった.吉野さんの話は面白そうだったが,あきらかに10分講演用ではなかった.今回の結果にいたる前に10分過ぎていたような.小渕くんの研究はよくわからなくて面白そうだった.もっとよく理解してみたい.伊庭さんの話はやはり独特.普通の人にはこれが高野ー宮下法の発展系とは思えないし,そもそも高野・宮下法を知っている人は少ないはず.

ナノ磁性研究会

もう一日ナノ磁性研究会のために三の宮に移動.朝9:00から16:30までみっちり研究会.面白い話を聞かせてもらって,確かに勉強になる.Fukui-TodoIIの方法もまた少し理解が深まる.誤解していたところもあった.これは本気で使ってみようと思う.昨晩の懇親会での会話から急遽数独の話題を提供することになった.えーと,かじりつきの部分だけだったので,本当はどういう経緯でこの研究に至ったかとか周辺の状況も話をしないと本当にヨタ話のようにしか聞こえないと思う.確かに一般ウケする話題だと思うし,それを狙ってやっていて,かつ,それを利用しているところはある.でも,それだけでははちょっと残念で,本当は日本の負け現状を悔しく思っての研究なんだけど...まあ,そんなことはどうでもよいとして,久々に川島さんや常次さんとおしゃべりができてよかった.どうでもよいことだけど,私がたびたび使う「おしゃべり」という言葉は川島さんのマネなのである.

  • 今回の学会はいつにも増してプログラムの編成がよくなかったように思う.世話人の方々は大変なのは承知の上で文句を言いたい.実際に原田さんには直接話をした.
    • 上にも書いたが,シンポジウムの競合は問題だと思う.しかし,現実には多くのシンポジウムが企画されているので,同時にぶつかるのは避けられないのは事実である.ただ,似たようなシンポジウムは,その開催許諾も含めて調整してもよいと思う.さらに,シンポは主に2日目や3日目の午後に開かれることが多いが,十分に集客が期待されるシンポならば,初日の午前中や最終日の午後にやってもいいはずである.
    • 領域11での内部不文律として,スピングラスとニューラルネットは並列しないことになっていたと思うが,それは最近守られていない.是非検討してほしいし,情報統計力学との並列も外してほしい.
    • 関連して,領域12のガラスセッションもせっかく領域11との合同でするならば,スピングラスとはずらしてほしかった.うーん,段々個人的な要望になってきているなー.
    • もっと基本的なこととして,細かいことだが,休憩の時間はあわせてほしい.講演数の関係で開始時間にずれがあるのは仕方がないとしても,休憩の時間の調整はしてくれた方が聴衆には便利である.
  • 今回は情報統計力学セッションにほとんど参加しなかった.岡田さんや田中さんや三好さんのお姿は拝見したのだけど,挨拶すら出来なかった.樺島さんとはちょっとだけ話ができた.学会期間中に話題になったのだが,樺島さんの最近の仕事であるIzykson-Zubar公式の拡張についてのヨタ話.イジクソンズバーとは怪獣の名前みたいだと樺島さんはおっしゃるが,先日のアイススケート男子を見て気づいたのは,Zubarはジュベール(伸ばすところで息を抜く)では無いだろうかということ.イズクソン・ジュベールとなれば,怪獣ではなくて,王子が出てきそうである.
  • ということを帰りの新幹線の中で書きなぐる.いつもよりも長めの出張で疲れたので,ビールでも飲みながら書こうと思ったが,時間的に新幹線には何も買えずに飛び乗ることになり,売り子さんもいっこうにやってこない.かなりおもしろみに欠ける文章になってしまっているのは,それらのためです.
  • 何人かの人にこのページのRSSが正しく発行されていないと指摘される.やはり,今の若い人はRSSを見てるのね.ちょっと調べてみたら,原因は分かりました.普段はlocalなnote PCですべてを書いていて,そこでは正しく動いているが,サーバーへ上げるときに正しく動いていないことが判明.そこは解消できたはず.

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最終更新時間:2008年03月27日 19時41分22秒