トップ 差分 一覧 Farm ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

日本物理学会2013@徳島大学

[アウトラインを表示]

日本物理学会 秋の大会@徳島大学

徳島はおそらく二度目.前回の学会が10年くらい前にあったと思う.そのときは徳島文理大学であったことは覚えているが街の様子の記憶はない.最近は昨日のことも覚えていないので,10年も前のことを覚えているわけがないと,少々諦めている.また,新しい街に来たと思って楽しめばよい.

1日目

宿から大学までは20分ほどの徒歩.お城の回りを散策して大学に着くには朝飯後のよい散歩である.天気予報では涼しくなると言っていたが、毎日暑いくらいの良い天候で上着は要らなかった.

量子スピン系

久しぶりに量子スピン系にでる.本当に久しぶりで、知らない風景が広がっている.ほぼ、藤堂研・川島研セッションだ!

  • 固有値計算ライブラリー:

Rokkoは下部にいろいろある固有値計算パッケージのラッパーらしい.確かにそんなのがあるといろいろと便利だろうなぁ.しかし,こういう発表が物理学会に出てくるとは時代が変わってきたなぁ.いいとかわるいとか言っているのではなくてね。

  • 諏訪さんの不変推定量:

確かに以前にも誰かに似たような話を聞いたような気がする。藤堂さんに教えてもらったのかな。相関時間の推定にもつかえるかなぁ。使えるとは思うけど、積分しないといけないので、相関が切れるまでは観測できることが前提にはなる。遅い緩和の系はむずかしい。

全体として、面白いような面白くないような。。。

液液転移

午後はシンポジウムにでる。液液転移の様子がかなり明らかになっているようで、かつ第二臨界点が水の熱力学異常の原因となっている説があることは知らなかった.それから、非平衡な相転移に関する認識のなんというか標準化がすごい.平衡の相転移と違う点はあるのだろうか?だれに聞いていいのかよくわからずに悶々としてしまう。

  • 細線内での相転移
  • 松本さん:話うますぎ。液液界面をみたのか?ということで数値実験で見てみたというもの。確かに見えたのかも知れないけど、それでどうするのかがやはり疑問。でも、見ないことには始まらない。スピングラスの液的励起なるものはそもそも見えていない、川島さん以外は。
  • 渕崎さん:久しぶり。渕崎さんの系は平衡状態の相転移として液液転移することがわりとはっきりしているらしい。そこをちゃんと詰めるのがよいのではないかと思ったら、最後の渕崎さんの締めでもそうおっしゃっていました。本格的な実験もされるとは驚きです。

2日目

午前中はガラスのセッションへ、午後はトポロジカルシンポジウムに行こうと教室に入った瞬間に押し出されてしまった。。。行き場がなくて、あちこちさまよう。

3日目

最近は年も取ってきて、長い出張が堪える.夜も早めに寝ているのだけどね.

磁性セッション

朝一番に田畑さん@京大の講演があるので、そこにいく.

  • Yb系のフラストレート磁性. 四面体上へのs=1/2のハイゼンベルグ模型のモデル物質がみつかったということ.s=3/2だけど、結晶場を考えると下の二つしかみえなくなるとので有効的にs=1/2.四面体間の相互作用はほぼないと思って、磁化率も熱容量もほぼ完璧にあう.合うと面白くないんだよなー.
  • カイラル磁性物質がみつかったという報告.あー岸根さんの話をちゃんと理解しておけばツッコミ入れられてのだけど。。。磁化曲線の磁場方向依存性が顕著に違ったような。。。一次転移みたいだけど、一次転移でなかったような。。。電気伝導が面白かったような。いかん、記憶が曖昧すぎて情報になっていない。
  • 田畑さんの話:以前にやったSK模型のエイジングの結果に近いように見える.二段階ストップにおいて、温度上昇と温度下降に顕著な違いが見られた.すぐには理解できなかったけど、RSBっぽい.その昔、この非対称性をどうやって液滴描像から反論したのだっけ.全体として、長距離スピングラス系は平均場描像でよさそうな感じ。この系の臨界指数と磁場中相転移を理論模型で計算しないといけない。。。これは私のタスク。
  • 斎藤グループ@東邦大:ランダムネスを調整して、スピン液体からスピングラスへ1変数でつながる物質群をつくって、AC、DCの帯磁率を測定している.確かに、キレイにクロスオーバーしているのが見える.その昔,混晶の割合を変化させて、DCの履歴を見る実験はたくさんあったように思うけど、このセッションではこの発表だけ.混ぜるときれいに?!スピングラスになるんだよな。ガラス実験でもこんなことはできるのかな?

情報統計力学

それで、戻ってきたのは高邉くんの発表.そして、酒井くんの発表.二人ともに無難にこなす.酒井くんの発表は詳細つりあいをやぶるMCMCの続報。あまり劇的に改善されることはないような状況になってきている。上手くいくのは、一次元系と平均場系。でも、こうやって上手くいくところといかないところの境界を知ることが重要だと思う。上手くいくところだけで喜んでいるようでは、方法論の研究者としては二流以下でしょう。高邉くんは線形計画法に緩和した制約問題の最適解を統計力学的に研究したもの。わかりにくかったかもしれないが、緩和した線形計画問題は対応する統計力学のレプリカ対称解でぴったり合っているところが面白い。専門家はそれは当たり前でしょう!?と思うかもしれない。そうかもね。でも、いつでもP-NPの境界とRSーRSBの境界が一致することがわかっているわけではないのだから、これは自明でない結果だと考えています、私は。

古典スピン系

午後は表面構造にも行きたかったけど、ここに残る.

  • 渡辺さんの数独話はいろいろとあるので、上のページにコメントすることにする.
  • 石塚さんの話はちょっと面白かった、いつもなんですけど。断熱近似をしているので、ランダム系と似た構造をとっている。スピンがゆっくり動いて、電子が早い変数としてMCMCで扱われている。ランダム系のときには遅い変数のサンプリングはしないのだけど、ここでは電子系が重みを決めていて、遅い変数のサンプリングをしている。この意味で、以前やった相互作用のサンプリング問題と同じ構造である。それでちょっとよくわからなくなったのが、状態密度の計算で、定義は状態密度のスピン系の重み平均なのか?というのが質問だったんだけど、うまく質問の意図を伝えることができなかったように思う。まあいいのかな。
  • 恵知中さんと尾関さん。原田さんスケーリングBSAの動的拡張がこれ。この拡張のよいところは、自動化されていて、Bootstrapなんかがバシバシできること。これまでに人が手でやっていたので、大変。このプログラムがあれば。。。
  • 熊野さんの話は、レニーエントロピーの特異性をCFTで調べるという、かっこよい研究。二倍のTcのところにも有限サイズ異常があるとのことだけど、理屈はよくわからない。理屈を知るなら平均場模型でもいいのではないかということで、帰ってからさーと計算してみたけど、やっぱ平均場模型じゃだめだな。やる前に気づけよって感じ。この計算はFranz-Parisiポテンシャルの計算に近い。だから、何というわけではないけど、そっちにエントロピー論としての知見がなんか見つからないかなぁと思う。ネタバレも関係なしにここに書くにはすでに戦略が。。。

最終日

ポスターセッション

午前中はポスターセッションに出向いて、できるだけいろんな人に張り付いてみた.奥西さんのところの学生さん?はコミュニティー検出をWang-Landauでやっていた.最近メッセージパッシングでもされていて,ちゃんとするならMCMCでもよいのではないかと思っていたところだった.解だけ出なくて励起状態も見えるので、知恵を出せばいろいろと解析できるのではないかと思う.というわけで、データを見せてもらいながら思いつくことをベラベラ喋る.ランダム系のポスターもあったけど、どうもうちの学生さんが見ていたのでそこはお任せした.能川さんのパッキング問題や富樫さんとこの学生さんのネットワークの話を聞いて,松下さんの話もたっぷり聞く.タンパクの有効模型のシミュレーションからマルコフ状態模型を作って遷移ネットワークの温度変化を見ていた.とても面白い.transition-path samplingなのと見方が違うのだけど、どっちがよいかはこのみの問題か.あっという間に終了のベルがなる.

ランダム系セッション:

  • 大方、西森研のセッション.こういうのが物性基礎論・統計力学のセッションだなーとは思うが、さすがに飽きる.いろいろあると思うけど、自分の研究室で福島研セッションみたいになることだけは避けたいなぁと改めて思った.そんな中で、さすがに関さんや宮崎さんは味があってよかった.特に宮崎さんは面白かった.無限ランダム固定点というのをちゃんと理解していないのだけど、やっぱり結構変態的な固定点だということが今日わかった.
  • この前半セッションで唯一西森研関係者じゃなかったのが、うちの高橋昂くん.学会デビューだったので,胃はひっくり返っていたことだっただろう.でもよくがんばったと思う.あのセッションだとどのくらい興味を持たれたのかはよくわからない.おそらく、宮崎研の池田くんだったかがダイナミクスについて質問してくれていたが、気になる点である.MCMCなので、ガラスの人には賛同されないかもしれないが、臨界発散を見るような長時間なダイナミクスを議論するには問題ないだろうと思う.それで静的転移温度直上で熱活性的なダイナミクスが見えなかったのだから、素朴な1RSBは受け入れられない.みんなそう思っているのだとは思うけど、どうしてくれるのだろうか.その辺りをガラスな人と議論したかった.最終日までは残ってくれていなかったか.
    • これはどうでもよいことかもしれないけど、学会で学生の発表の援護射撃は一切しないのが指導方針である。そのように学生に伝えておくのを忘れていたかもしれない。思わず興奮してコメントすることはあるかもしれないけど、できるだけ耐えるようにしている。自分が学生のときもそうだった。明示的に言われたかどうかは覚えていないけど、「舞台に上がれば芸人はひとりぼっちです」だからね。援護射撃なんかされたら屈辱感しか残りませんからね。その代わりに、いつも聴衆の中で目立って頷いてくれていたのが根本さんで、目をつぶってふんふん聞いてくれていたのが高山先生でした。

座長:

1学会1座長でよかったのだけど、最終日の最後のセッションの座長というのは、世話人に嫌われているとしか思えない.日ごろの行いが悪いか...飛行機の時間が迫っていることもあり、まあそれとは関係なしに、時間をきっちり守ることに専念する.改めて,まったりと時間のある研究会でどっぷり議論する方が楽しいですね.ちょっと学会は忙しない.

  • さて、それでこのセッションの一番は鈴木正さんの話だった.いつも堅実で面白い.時間がなくて質問できなかったけど、低温でどうしてできないのか?とか、微分量も計算ないか?とか.レート関数の計算ができれば、次は曲率なんだと思うけど、そこから臨界指数に関係する量が出てくるかどうかは全然わからない.あと、転移の次数もわからないかな.自明な解との入れ変えで相転移するので、一次転移のレベルクロスのように見えてしまうけど、どう理解するのかはわからなかった.
  • 桐井さんのチョコ板モデルは何が含まれているのかわからないことが多くてちょっと面白い.ダイナミクスも気になるし、励起状態のトポロジーも気になる.後者は自明なんだろうね.あれで、フラクタルな液滴励起がでてきたらびっくり.
  • 中村さんのは圧巻なんだけど、一つ気になるのはスケーリングといっているのが、木に竹を嗣ぐようなスケーリングになっていて、とても美しいと呼べるものではない.原因は、見ている帯磁率の絶対値のスケールがほぼ一定の領域なので、重ならないということだと思う.時間スケールを1000倍になっても、全然大きくなっていないということだから...そこはちょっとへんな感じがする.

  • 学会期間中のお昼は大学のすぐ側の食堂に通う.なかなかよかった.その他に、夜のセッションもそこそこがんばった.最終日の前の日にY-ebisuの二階のトイレが印象的だったことを記しておきたい.赤い看板が目立っていたが最後の夜に訪れることができてよかった.それから、トクシマ・バルもよかった.UOROMANのワインバーも。

[ページのアクセス数: 0000387]

[ページのアクセス数: ]

最終更新時間:2013年09月29日 08時34分12秒