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2008年の一言

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2008-12-17

不惑に突入

二月以上も更新しないとは,あまり忙しいふりをしない方がよいだろう.12月には二度札幌にやってきた.今日まではDEX-SMIの研究会があった.ちょうど自分の発表は朝一番で,不惑になって初仕事が研究会での発表という幸せな状況になった.50になったときにも人前で話ができるようになっていたいものだ.

2008-10-10

めったに起こらないこと

先日掲載が決まった伊庭さんとの論文に対して,西森さんがNews and Commentを書いてくださった.話題は「めったにおきないこと」.帰り道に夜空を眺めようと思ったのだが,あいにく雨空なので,隕石も落ちてこないか,今晩は(隕石と天候は関係ありません).ノーベル賞ウィークにいささかスケールの小さい話ではあるが,こんな記事を書いてもらえることは十分にRare eventなのである.ありがたいことだ.そう,有難いことだ.

2008-9-30

もろもろ

学会のレポート書いた(ここ).

rare event projectの最初の伊庭論文が,JPSJでEditors'choiceれる.

冬学期が始まる...講義のページをいじる.

2008-9-18

学会直前レポート2008秋

昨日までIW-SMI2008に出席.明日からは物理学会へ.今回は私も含めて,4名(5件)の発表があります.それでは前宣伝をすることにします.

中島哲くん
前回の発表で,1RSBの現れる一般的なシナリオを提案したので,今回はそれを未知の世界に展開してみようとします.具体的にはスパースランダムグラフ上のスピングラスの問題です.これまでに1RSBの構成法についてはいろいろと研究されてきましたが,今回のは熱力学的に最も自然な形式になっています(きっと).最後にMCとの比較もしていて,熱力学極限にはとてもゆっくりだけどしっかりそこを目指していることが確認できています.今回は彼の希望でポスター発表します.最終日ですが,是非見にきてください.
坂田さん
相互作用がゆっくりと変化するスピン系で,フラストレーションにある種の相転移があることを数値的に示します.スピン系が相転移すれば,相互作用系にも何かがおこることはある意味で自明ですが,今回はそれがずれても起こることが示唆されます.まだレプリカ計算では答えられていなくて,少なくともDotsenkoのRS解ではうまくいかないようです.RSでもよさそうなところですでにおかしいので,根本的に考えないといけない感じです.本当は長距離相互作用系を研究するはずでしたが,今回は平均場系に留まっています.本質的には変わらないかな.この話はもともと進化のモデル研究からの派生で,そちらの最近の進展はポスター発表します.
中島千尋くん
Migdal-Kadanoffくりこみ群で見付けたことを,実際の有限次元系でMC検証することが目的です.2次元系でもスピングラス相転移が起きる..といえば,びっくりする人も多いかもしれません.起きるんです.こういう状況では.
同じ研究室にいるとなんとなく話題が引き寄せあうこともあるかもしれません[1].実際に今回は意図せずして似たような話になってしまいました.その中で私だけはちょっと浮いています.伊庭さんと以前にやっていて準安定状態自動抽出作戦で,彩色問題を調べてみました.3月まで中田くんがいろいろと調べていて,それを横目にみて,うまくいきそうな感じはしていたのです.さらに,ここ数年coloringをやっている知合いに刺激されていることもあり,今回はちょっと踏み込んでみました.まだまだ踏み込みは足りないのですが,まずは第一歩.MCで局所磁化が計算出来るよというのがおもなメッセージ.「いやーそれはふつうできるよ」というのは不真面目なMCプレーヤーです.まじめなMCプレーヤーが出来る..出来そう..きっと出来ることを今回示します.11月の会議でくるお客さんにも楽しんでもらえるのではと期待しています.

口頭発表はすべて21日,ポスター発表は23日です.多くの人に聞いて頂けるとありがたいです.

今回は,座長..そしてポスターセッションの座長が当たっている.よほど世話人の人に嫌われているんだなーと思う.

  • [1]上の話はある意味で全て有限のレプリカ数での物理とみなせます.うーん,冬の特定の成果発表会はこれでまとめるか.「有限のレプリカ数で見える統計物理の世界]

2008-8-4

高校生とのひととき

今日の午前中に,ある伝手で高校生2年生10人の前で話をする機会があった.どうして私のところに話が来たのかはよくわからなかったが,その高校は大学のころからよく知っていたので迷わずお受けすることにした.話のお題は「研究内容」と先方から指定されていたのだが,目的は大学受験への動機を強くすることだろうと勝手読みして,研究の話の前に「大学での物理」の話をした.大学の講義でもそうだが,若かりし自分に対してウケることを目標としてみたわけだ.高校生のころの自分は完全にブルーバックスおたくであって,物理に対してある意味で(ストレートだけど客観的には)ちょっと曲がった興味を持っていた.粒子は光速で飛び交い,統一理論に向けて,頭の中はビッグバーンだったわけだ.もちろん,ニュートン力学も知らずに...大学にはいって,3・4年生のころにそれらがすっかり変わってしまう相転移のようなことが起こるわけだが,その顛末話をしてみた.17才の自分なら,「...聞きたくない!」と言ったかもしれないが,高校のときに抱くイメージと大学での学問はずれていて,だが,しかし大学での学問はすごーくよいものだということがわかる一つのよい例だと思う.

小学校のときに,担任の先生が「大学には遊びにいくようなもの」だと冗談でおっしゃったことがあった.私が本気にしてはいけないと思われたのか,その夜にわざわざ家までいらして,そのいきさつを両親に説明してくれた.田舎育ちの自分は純粋に学問への憧れがあったので,先生の言ったことの意味がわからずにいた.大学に入学したときに,その「意味」はよくわかって沢山遊んだが,それでも学問をする姿勢は保ちつづけることはできた...できた?というか,好きでやっていたのだ.そうでなければ「相転移」は起きなかったのだと思う.最先端の「研究内容」はほとんどしなかった理由も感じてもらえたかな.今日の話は,冗談ではなくて,本気で大学で学問することをすすめたつもりである.最先端の話で頭の先っちょをピピーと刺激するよりも,腹の底の方でジワーとするのが大事だと思ったわけだ.何も東大に行くことだけが全てではない.どの大学に行っても,5年後に目をキラキラして学問しているみなさんがいることを切に望みます.

午後には東大の工学部の先生を訪問するらしい.そこで,ピッカピカの最先端のテクノロジーを見せつけられて,心踊らされてしまったら,午前中の話はなかったことになるで...>自分.

2008-7-14

教科書と論文と

今日で大学院の講義が終了.今回は統計力学に関することを自由にできたので,相転移と臨界現象に関する古典論文を紹介する一連の講義にしてみた.ピックアップした話題は,こちらの中の大学院・統計力学のページにリストしてある.講義としては,うまくできた感じは全くしないし,一方で学生にウケていた感じも全くしなかった.ということは,失敗講義なのか???おそらく,そうであろう.このラインアップでうけない講義をしていては,先人たちに申し訳ない気分でいっぱいである.原因の一つは,情報をきちんと伝えていないことにあるのだと思う.一つの論文を一こまで紹介するのは難しくて,結局ダイジェスト的な解説をすることになる.それでも十分に意味のあることだとは思っていたんだが...

大学院くらいのレベルになると,新しい知識を学ぶのは,教科書か論文か?と疑問になる.当然,どっちもどっちなことはわかっている.ただ,これだけ情報が溢れている時代にあって,少しゆっくり時間をかけてオリジナルの論文を読むのも悪くはないだろうと思うのである.けっしてスマートではなく,どろどろとしていて,現代的にはもっと賢くまとまる議論でも,やはりパイオニアの力強さと切れ味は教科書では学べないことも多いのではないだろうか.KT理論の解説などどの教科書を読んでもわくわくしないだろう.是非,新しい道を切り開くべき若い人達に,数十年前に新しい道に踏み込んだ研究者の結晶を味わってほしいと思う.今回の講義はその誘いを目指していた...のであった.

2008-6-7

大学院説明会と研究室公開

5月31日(土)と6月6日(金)に大学院の入試説明会があった.一仕事してきました.毎年この時期になると広報に悩むのだ.確かにうまくやっていない気がする.大プロジェクトを掲げて突き進むタイプの研究室ではないので,学生さんへのアピールが難しい.私は何に興味を持っているかということと,この研究室に来て何ができるかは全く別のことだと考えています.共通の興味を持てることは要求しますが,だからと言って同じことをやってはダメなんだと思います.0.8福島になってはいけないし,ましてや0.6福島程度だとこの業界では生き残れなくて,1.5福島くらいでないとダメです.とすれば,何をアピールすればよいのでしょうか?しぶいようでも統計力学が好きであるとか,平衡統計力学,やわらか系物理がすき.物理でない問題も好きで考えるけど,ベースは物理的思考であって,意外?と物性物理は好きで,なんとなく複雑系に乗り切れなくて,経済物理は好きでは無くて,ばりばりの生物は嫌いで,...こんな感じで許してもらえるかな.

それから6月6日には研究室公開があって,今年は駒場に来て初めて参加してみた.この週と前の週は本当に目が回りそうになっていて,この企画も思わず吹っ飛ばしそうになっていたのだが,院生の人に完全に助けてもらってポスターを作ってもらった.結構よくできていると思う.これをみると,変わったことをやっている研究室に見える.当日は,上の説明会があったり,3限に講義があったり,物性セミナーが夕方にあったりで,非常にドタバタしていたが,何人かの1年生とおしゃべりできたのは楽しかった.彼らにも喜んでもらえたとしたら,お互いによい時間を過ごせたのだと思う.参加してよかった.というか,研究室のみんなありがとう!

今度は夏のオープンキャンパス(8/1)だ!

客層はもっと若めだろう.

2008-5-13

継続することの大切さ

これは3月に卒業した平間くんの学習の研究の話.

ある特別なケースだけから一般論を語ることはできないが,こんな例もあるのだという気持ちで読んでほしい.設定は,真の教師から学べる中間教師と,中間教師の出力から学習する生徒の問題で,中間教師と生徒はともに性能が低いので,真の教師の能力には到達できないようになっている.真の教師はもう無くなってしまった偉人で,そこから必死に学ぼうとしている我々研究者がいて,その元に学生がいるような構図になっている.問いは,この設定で生徒は中間教師の能力を越えられるかということである.つまり,学生が指導教官を越えられるか?という問題を,単純化したオンライン学習理論で研究してみた.

答えはYesだ.その際に,中間教師はもう十分に成熟していて,どんなに学習してもある一定の能力以上には達しない状態においても,そこで学習を止めてしまうより,向上しなくても学習を続けている方が学生の能力を上げることがわかった.中間教師の出力の性能はどちらも同じであるにもかかわらずである.

指導教官は休まずに勉強しろ...

というのが平間くんからもらったメッセージであった.

しかも,能力が中間教師を越えるのは一時的な効果で,ずーと学び続けると能力は落ちるわけで,ある程度学んだら指導教官から離れた方がよいと言っているようにも思える.そして,平間くんは修士2年で卒業していったわけなのだった...論文はここ

2008-5-2

物性セミナー始まります.

今学期も物性セミナーが今日から始まりました.今学期の講演予定は物性セミナーのWEBに掲載されています.ようやく,やり方も慣れてきて,定例的に行われることが自然になっています.この普通感が大学院生にとっては大事なことだと思っています.特に肩に力を入れずに多分野の話に耳を向けることができる感覚は,大学院生のときに身につけるべきものだと思っています.今回も比較的若手で活発な研究者をお呼びしているので,その意味でも刺激的なはず.初回の桂さんはそんなキレのよい大学院生でした.そう,私が大学院生のときに感じていた典型的なキレている東大の院生って感じです.よい目標になるのではないでしょうか?

2008-4-11

数独も好きだけど...

日経BPから出た広域科学専攻の紹介本を見てくれた1年生の学生さんから,「先生は数独の研究をしてるんですね.」などと言ってもらうのはうれしい.力学や電磁気学ですっとびボールやテルミンの話をするのもいいけど,少しは研究に関したことを若い学生と話をするのは楽しい.数独の研究は確かに楽しくて好きなのだけど,本当に深いところまで行けていなくて,深いところがあるのかどうかわからない.例えがどうかわからないけど,数独にはオセロ的な楽しみはある.オセロは子供でもだれでも楽しめる.でも,同じ白黒でも囲碁の方が断然深くて,面白い.子供には理解されないことが多いけど.来週からは,大学院で講義を担当します.オセロな話ではなくて,囲碁な話をします.

2008-3-31

巣立ちの季節

この三月で二人の学生が卒業する.卒研生を除けば,福島研を巣立つ最初の学生ということになる.二人ともに優秀で,修論のテーマは自分で見つけてきて,せっせと研究をしていた.それは卒研のテーマとは全く異なるものであって,自分の興味のおもむくままに決められたのだと推測する.もちろん,気ままにできるような趣味では無いので相当にがんばったことだろうし,一方で就職活動もやっていたのだから立派なものである.大学院で二年学んだ知識が実社会ですぐに役に立つことは少ないだろうが,そこでの経験は,思い出としてではなくて,体の中に染み込んでいることだと思う.自分にできることはそこまでかな[2]

さて,先週,物理学会があったが,そのエントリーはちょうど修論格闘中の12月であった.彼らにとっては最後の学会になるので,エントリーを打診してみたが,一人には丁重に断られた.理由は,「学会よりも論文を書いてみたい」ということだった.それを聞いて正直はっとさせられた.どういう感覚でそう思ったかはともかく,論文を書くという作業は経験しておいてよいだろうと初めて認識した.この二週間(もかかってるのか?)ばかりそれに手をかけている.内容は修論の内容をクリアにするために,修論後に新たに計算したものである.時間がなくて,額をつき合わせてガチガチできなかったのが本当に残念だった.彼がいる間の投稿至らなかったが,ほとんど完成した.でも,机にはまだ数本論文が溜っているのだ.さあ,つぎいってみよー.

  • [2]客観的に読むと,超放任主義に見えるかもしれない.特に大学院を目指す若い学生が見るとね.そこまで放任ではないです

2008-3-18

学会直前レポート

前回の一言から一月が経過.あっという間に学会直前です.今回は私はサボりです.

 「指導教官がサボっちゃいけません.指導教官も苦しんでいるところを学生に見せるべきです」

と共同研究者からおしかりを受けたりしています.まあ,今年に入ってからもセミナー(先月)やチュートリアル(先週)で何度か苦しんでいたし,この一月は苦しそうにしているのを学生さんたちにも見られているように思います.それはともかく,学生さんたちが研究室を代表して?話をします.前日の夜にドタバタしている悪い指導教官を見習うことなく,ちゃんと今日その学会発表予行練習をしました.みなさんそれなりに面白い話題を提供することになっていますので,ここで掟破りの直前一言レポートをします.これが一人でも多くの方の聴衆と,さらにツッコミをいれてくれるきっかけになることを願っています.

中島哲也君
pスピングラスの大偏差解析から始まって,どうして多くのスピングラス系が1RSBを示して,それ以上のRSBが起きないことの理由に一つの確からしいシナリオを説明します.私の長年の疑問に私は十分に満足した解答を与えています.
中田豊君
ランダムグラフ上の4色問題の彩色ー非彩色問題の転移直前から広いパラメータ領域で1RSBっぽく見える相があることを指摘します.相図はCavity法の結果とほぼ一致します.これはそんなに自明ではない...と思う.
坂田綾香さん
進化に対する簡単スピンモデルの研究から,表現型の揺らぎが適当に大きいときにスピン系でいうところのフラストレーションの少ない遺伝型が実現して,それが摂動に対してロバストになっていることを示します.
中島千尋君
二温度系(パーシャルアニーリング系)はレプリカ法を使うと,有限のレプリカ数の平衡統計力学模型になりますが,その有限レプリカ数系でのある種のMKRGを構成し,RGのフローを示します.当初思っていたほど簡単ではなかった.
平間毅君
彼(と中田くん)はこの三月で卒業し,今回の学会では発表しませんが,今までやったことを論文にまとめています.現在,ほんとにゴールへ向けて邁進中.

という感じです.乞う御期待!...何を?

2008-2-19

基礎科学科という名前

Department of Basic Science...今,訪れている大学の学科名はナノなんたらなんたら学科という名前に最近変わったらしい.いろんなところからお金を持ってこれないと,もう大学としてはやっていけないし,お金をとれない学者はいらないということらしい.でも,どうみても格好悪い名前である.格好なんてどうでもよいと思うかもしれない.でも,格好は大事である.それにくらべたら,基礎科学科というのは,すごく格好がよい.私は東大出身でも,基礎科学科出身でも無いので,思い入れは全くなくて,純粋にそう思うのだ.でも,どうやら,この名前を格好よく思う人は非常に稀なようで,特に若い学生にはウケが悪いということらしい.この格好良さが分からないよう輩は来るべきではない!なんて言ってしまったら,クビになってしまう.一生懸命にその格好よさを宣伝しないといけないのだろう.

2008-2-6

修士論文発表会終了!

朝から夕方までみっちに,Cグループの9名とD1の1名の修論を聞きにいく.審査に関係していた学生さんは事前に修論を読ませてもらっていたし,そうでない学生さんはその発表をよく聞かせてもらって,適宜質問させてもらった.審査と関係ない先生方も私も含めて数名張りついていたし,大学院生も結構いて,盛り上がった気がします.よくありがちな,関連する研究室が変わると聴衆がごっそりかわったり,聴衆が審査員の先生だけといったことはこのCグループにはありません!!.個人的には,こういう雰囲気は大事だと思います.こうしたことが,M1へもよい影響を与えていて,それなりの質を保っていると思います(きっと).研究室の3名のみなさんもよい発表だったと思います.もうちょっと私が突っ込んでもよかったかもしれませんが,あまり余計に突っ込むのもあれかと思って,逆に助け船も出しませんでしたけど...その分はよその研究室の学生さんに思いっきり質問をぶつけてみました.それが礼儀という気もするのでね.とにかく,M2のみなさん,ご苦労さまでした.

2008-1-1

新年あけましておめでとうございます.

今年もどうぞよろしくお願いいたします.駒場に来てから,早くも5年が過ぎました.助手ならばそろそろ移籍を考える時期になりました.「これが駒場での仕事」と胸を張れるよう成果を出せるよう,今年一年実り多い年にしたいと考えております.

平成二十年元旦

福島孝治

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最終更新時間:2008年06月11日 23時00分15秒