統計物理学おさらい3
第三回おさらい
今日のおしながき
- 2.統計力学の基本的な考え方
- 2-1統計的な見方 つづき
今日のまとめと反省
先週の続きで,期待値の計算をやってみる.確率・統計といえば,期待値の計算だが,ここでは微分して計算する方法を示す.それはこの後の統計力学で使う標準的手法で,何がうれしいかを説明しておいた.
続いて,グループに別けたときの場合を考察してみる.ここでもほとんどが当り前の結果なんだが,特に尤もらしい値と期待値が一致していることを見て,さらに尤もらしい値の近傍の確率分布の形を調べてみた.今日のキモはここで,分布の幅の二乗がグループ1の人数に反比例していることである.その人数が大きな状況で,分布がピンとなることがわかる.ここでその数がアボガドロ数だったらとすると,ほぼ決定論的な確率的予言を与えることがわかる.なんというか,日常の確率の感覚とは大きく違う結論である.これは自分で計算して体験する必要があると思うので,練習問題を示しておく.
次回からは,物理の問題の話をするが,今回までのところは確率問題の基本的なところと,統計力学で用いる状況の簡単な例になっているので,よく復習しておいてほしいところ.というか,こんなとこでおいてけぼりになんないでね.大事な話は次回からですから.
今日の宿題
- 計算の途中を逐一チェックせよ.
- ガウス分布がを大きくしたときにどうなるかをグラフに書いてみよ.
- コイン問題について調べよ.
配布するファイル
- 先週の宿題の答えを一部と今週のノート,さらに上のコイン問題の詳細を含んでいます.但し,その上の問題のネタばれも含んでいますので,注意して下さい.note-20051021.pdf(418) 間違いを見付けたら連絡下さい.
今日の質問
微分で計算するカラクリがわからん?
恒等式であることが説明したらわかってもらえたと思います.
物理を学ぶための必要最低限の数学ってどこ辺りですか?
そうですね.聞かれて即答できずに困ってしまいました.微分・積分できて,線形代数に,...ってそれはどこまでできることを考えているかな.ガウス積分,常識???特に物理をめざすわけではない学生がマスターしておく最低限ですか.ううう.まあ,そんなミニマル探してないで,あれこれ勉強しましょう.
講義でも少し話しましたが,私はファインマン派かランダウ派と別けたとすると,学生のころは完全にランダウ派でした.もっともランダウの教科書のどれ一つをとっても完全には理解してませんでしたけどね.そのランダウの伝記を読むと(読まずとも結構有名な話しで)理論物理学を目指す最低限のことが理論物理学教程,つまりランダウの教科書に書かれていますというわけです..つまり,あれを知らずして理論物理学者にはなれんというわけです.それとは別に,数学としての必須の事項が幾つか挙げられていて,幾つかある項目のうちの一つに「微分方程式を級数展開でとけること」というのがあったと記憶しています.いやー,なんでもかんでも級数展開してました.そういうこともあるので,私がここで的確なコメントをすることは,私みたいなアホな学生には意味があるんだと思うんだけどね..
(2005.10.25,追記)これだけではなんなので,いちおう参考書を挙げておきますと,物理専攻じゃない人が読める物理数学の教科書として,和達先生の「物理数学」岩波があります.比較的簡単に読めると思います.物理専攻の人はこんなじゃだめですよ.
ガウス分布の式で1/2ぬけてまーす.
あれっ,そうでした.もっと早く言ってよね.
今日の投票用紙の裏より
プリント配布かつWEBでdownloadできるようにしてくれるとありがたいです.
もっともな意見ですね.
テキスト入りのPDF作ってください.
これってどういうことだっけ?
プリント作ってもらえるのは非常に助かります.
気持ちはわかります.結構プリントちゃんと作る教官もいらっしゃいますね.でも,なんか簡単に「助け」ちゃうのは抵抗があるなー.
チェック以外もほしいです.
これ意図がわからないので,要説明です.ノートを配ってほしいということでしょうか?
ガウス分布って何ですか?
そうだよね.そうだよね.反省.
今日の雑談
- 今日の投票数は, 91でした.なんか順調に減ってるじゃないか.もしも,興味が持てなくて止めちゃったんだとしたら,せめて今回くらいまでは聞いて欲しかったな.そこまで持たせられなかったのは問題点です.その逆で,簡単過ぎて飽きちゃった人は,またしばらくしたら帰って来て下さい.切に希望.
- 今日のアンケートは「プリントは配った方がいいかどうか?」でした.前学期の講義で改めて認識したのは,最近の若い人は電子ファイルに関してほとんど抵抗を感じなくて,その便利さをよく知っているということでした.ひょっとしたら,もう紙は配らなくてもいいのかもと思ってしまったのです.結果は,
配った方がよい | Webからdownloadしてもよい |
---|---|
60 | 25 |
それから,「両方がよい」というのが,5票ありました.やっぱ,まだまだ紙は大事だということですね.ちょっと安心.
- 今週は通常の講義の他に,東工大に集中講義に行ってきました.そこでは統計力学的な手法の一つのモンテカルロ法を物理を専門としない大学院生に話してきました.文化の違うところで話をするというのは,極端かもしれませんが,ここで物理を専門としない学生に統計力学を話すのと共通するところがあるかもしれません.なんとか,統計力学の考え方を伝えたいものですな.例えば全然話しは違いますが,囲碁の業界では「味が悪い」という表現があります.囲碁を知らない人にはさっぱり意味がわからないことだと思いますが,囲碁の文化を知りうる人達が確実にある共通の考え方を共有している例だと思います.決して特別な専門用語を使いあって喜んでいるのではなくて,非囲碁文化人にはわからない特殊なものの考え方がそこには存在しるのだと思います.物理にも沢山そんな考え方があるわけで,多くの人とうまく共有したいものです.えーと,何にもオチはありませんでした.
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最終更新時間:2005年10月25日 09時13分15秒