先週の続きから,ソレノイドコイルのつくる磁場を求めておく.ゆっくり説明してみた.通常の本だと,アンペールの法則を使ってパパーンと答えがかいてあるところだが,ここでは,何から何が言えるのかを丁寧に説明してみる.アンペールの法則だけからは当然全てのことはわからない.一度,ゆっくり考えてみて欲しい.
続いて,電磁誘導の話をする.電磁誘導現象についての実験を簡単に紹介する.磁場中で回路を動かすと,回路に誘導電流が流れる.このときに回路全体に渡って電荷を動かそうとする力が生じるわけだが,これを起電力という.この起電力は,式で表すと,回路にそった電場の線積分で表される.誘導電流をつくるもう一つの例は,回路を止めておいて,磁場(磁石)を動かしたり,磁場を切ったりつけたりする実験である.この場合も,相対的には磁場を止めておいて,回路が動かしたことと同じであるとここでは考えることにする.そうすれば,回路の中の荷電粒子を動かしたときに磁場から受けるローレンツ力から起電力を解釈することができる.すなわち,先の起電力を表す式は,ローレンツ力へいって,そこから(磁荷なしの法則とガウスの定理と..を使って)磁束の時間変化に負号をつけたものに等しいことがわかる.これがファラデーの法則である. 微分形にするためにストークスの定理を使うと,電場の回転と磁場の時間微分が関係していることが分かる. ここにきてやっと磁場と電場が時間変化を通じて混ざったことになる.このファラデーの法則は静電場のうず無しの法則に対応している.確かに,静電場の場合は磁場の時間変化がないので,ファラデーの法則はうず無しの法則に変わる. 電磁誘導の例題として,導体の近くで磁場を動かしたときに生じる渦電流の話をする.交流電流発生器の原理もこのあたりにある.磁場中を平曲回路をくるくる回せばよい.
最後にマクスウェルの変位電流の話をする.ファラデーの法則が実験事実を記述するために考えられたのとは対称的にこの最後の法則は理論的である.そこでは静磁場のときにアンペールの法則から話がはじまる.両辺の発散(ナブラとの内積)をとると,左辺が自明にゼロになるのに対して,右辺の電場の時間微分が一般にはゼロにならないことからつじつまがあわないことがわかる.この不整合性を導く途中には,アンペールの法則と電荷保存の法則とガウスの法則を使っている.どれかが間違っていることになるが,マクスウェルの考えたことはアンペールの法則を修正することであった.先のゼロにならない部分を最初から引いておくことにしたわけである.変位電流と呼ばれる新しい項を含んだ式をマクスウェルーアンペールの法則と呼ばれている.ここでもまた電場と磁場が時間を介して結び付いている.
今日出てきた(というか,これまでに出てきていたけど修正された)法則に,ガウスの法則と磁荷無しの法則を足した四つの式がマクスウェル方程式と呼ばれている電磁場を支配する方程式である.これにローレンツ力とニュートンの運動法則を付け加えれば,電磁現象は全て記述・説明できることになる.大あわてで今日はここまで走ってみた.
なし
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- 渦電流の例題の磁場の方向が...
- まちがっています.逆向きです.結果として,渦電流の方向も間違っています.すみません.正しい方向をよく考えてみて下さい.