第6回

今日のおさらい
  1. スピングラスの平均場理論
    1. レプリカ対称解
      1. 秩序変数
      2. 相図
今日のまとめと反省

先週は,レプリカ法を用いて,補助場による積分表示まで示した.今日は,その 積分の評価からはじめる.まずは,例によって,鞍点評価したいのだが,補助場 が一杯あって難しい.有効模型はレプリカ指標の転置に関する対称性を持ってい るから,鞍点解のそのような性質を持つべきだろうというのが,レプリカ対称解 の精神だが,形式的にはそうでも,実際的には難しくてできないというところだ ろうか.その仮定の元で計算を進めて,レプリカ対称な自由エネルギーの表式を 得た.鞍点条件から,補助場の状態方程式が求まる.qとmで対称な?キレイな形 にまとまる.

次に,qやmが元々の模型の秩序変数に等しいことを示して,相図を書いてみる. この解析は強磁性の時にやった議論と同じである.この辺りで一度意識が飛びそうになる.自分のノートの気持ちが理解できなかっただけなんですがね.気を取り直して,レプリカ対称解での絶対零度のスピングラス強磁性転移の境界を求めておく.レプリカ対称解がダメなことがわかっているからか,この値が乗っている教科書は今までのところ,高山先生のと堀口先生のものだけ.それからSKの本論文と.実際にやると一瞬悩むのでやっておく.

このあたりは計算だけで消耗なので,来週こそは計算ノートを配ることにしようと,今は意気込んでおく.qとかmとかだけ見ていると,レプリカ法自体は大胆だったものの,後は普通の平均場相転移論になっていて,全然驚くことはない.大騒ぎするほどのことは何にもないようにみえる.来週は,エントロピーが負になってしまうことを示してから,どこが悪いのかを考えてみることにする.そこからがオドロキのはじまりであった,少なくとも私には.
今日の宿題: なし

今日の質問:
  1. レプリカ対称解は実験結果に対して結構いけているのか?
    ぼちぼちですわ.相図がでる.リエントラント転移なんかでちゃう.リエントラント転移は実験でも観測されているが,きっとSKの解析の後で積極的に探されたのだと思う.それから,線形帯磁率はカスプる.非線形帯磁率が負に発散する.ここまではイケテいるところ.でも,比熱はカスプっちゃう.エントロピーは負になっちゃう.ほとんど来週のネタをばらしてしまった.それから,実験ではダイナミクスに関連することが多いのですが,そっちはこの理論では扱えません.
  2. 計算あってそうだけど,どこが悪いのか.
    計算はミスってはいません.が,鞍点の安定条件が破れていたというのが,答えで,それは来週見ていくことにします.ただし,レプリカ法自体が大失敗している可能性は考えていません.
  3. 秩序変数はサイト磁化の二乗のランダム平均か.
    元の定義?,提案はそうでした.今日もその量が補助場qに対応していることを示しました.先週もここら辺で書きましたが,それが最もらしい秩序変数かというと,どうでしょうか.元の提案はEAでした.よさそうには見えますが,半分は人間には見えない量だとあきらめも入っているような気がします.
今日の雑談:
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Koji Hukushima (hukusima@phys.c.u-tokyo.ac.jp)