第8回

今日のおさらい
  1. スピングラスの平均場理論
    1. レプリカ対称性の破れ,AT安定性
      1. 磁場相図,AT線
    2. Parisi's RSB ansatz
今日のまとめと反省

先週はRS解の安定性を議論しましたが,ほとんど大事な部分では不安定であることがわかりました.ただ,これだけだと大事な研究だけど,渋すぎるのですが,本当に重要なのは磁場中でも不安定領域が存在することを示したからです.実際にAT線として呼ばれているその境界線で,RS--非RS転移が起こっているようです.その線を先ず説明する.

ここ最近,渋い話が続いていて,質問も出にくいようだったので,今日は,RSの破り方をゆっくり議論して,計算の詳細は省略してしまう作戦にでる.1step, 2stepと絵と行列を書いて,ドーンと無限回破りをやってしまう.これはこれで卑怯だとは思うのだが,計算のアウトラインまで示すことにして,ドドーンとした計算は全くしなかった.自分でやる気になったときにできれば,それでいいかと思うことにした.とても威張れないが,個人的にはfull RSBの安定性の議論は計算したことがない.そのうちにやってみたいところ.講義ではde Dominicis-Kondorの仕事だけ紹介する.来週は,TAPの見方を説明してから,レプリカ理論の意味付けを考察してみる.

今日の宿題: なし

今日の質問:
  1. 分割位置はどうやって決まるのか?
  2. q1>q0は決まることか?
    これらは基本的には平均場理論を変分的に扱う方法と見なせることができる. 1ステップRSBでは3つのパラメータが出てくるので,それらは鞍点条件から出て くる.さて,qの2つの値の大小関係はどうかというのが,林さんからの質問であっ た.計算の頭から思い起こすと,そいつに対する制限はかけられないような気が する一方で,補助場をいれるところでqのsqrtが出てくるので,「ウーンこれは仮 定するしかないかなー」というような答えをしてしまった.でも,とても気持ち 悪いので後でゆっくり考え直してみることにする.大体の答えは,ねもとさんにメー ルを書いている途中に気がつく.こういうのはマーフィーの法則かもしれない. 「人に質問しようとすると,答えが浮かぶ.」どうでしょうか.最後もう少し詰 まれば答えになるので,そのうちにノートを公開することにする.
  3. レプリカスピンと実スピンの対応関係?
  4. 絶対零度でエントロピーは残留しないの?
    沢山縮退がありそうだと思える直観とは相容れない.
今日の雑談:
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Koji Hukushima (hukusima@phys.c.u-tokyo.ac.jp)