先週はカノニカル分布の形を導出してみせたのだが,途中で式変形があいまいな ところが一ヶ所あった.そこを補足するところから講義をはじめた.簡単な変形 でったが,先週はちょっと舞い上がってしまったいた.今週は落ち着いてゆっく りやってみる.さて,本題は次からで,今日は,物理量の平均として,ゆらぎの 計算をやってみる.具体的にはエネルギーのゆらぎとして,比熱を調べてみる. ここで,温度変化に伴うエネルギーの変化分がエネルギーのゆらぎと関係してい ることがわかる.これはかなり一般的な系の応答ととゆらぎと関係式の例になっ ている.また,ゆらぎのオーダーの考察から,自由度辺りのエネルギーの予測が 限りなく決定的な予測になっていることを確かめる.おはじきの時にやってみた 考え方と全く同じである.
先週のエネルギーと今週の比熱の期待値の計算を通じてみて,どちらも共通する ことは,物理量の計算の際にいちいち確率の和の計算をしなくてもよかった点で ある.すなわち,logZのあるパラメータの微分を通じて,求めたい量の計算がで きたわけである.和の数が膨大であることを考えると,これは著しく問題を簡単 にしている.一方で,確率統計に詳しい方は母関数の方法に相当していることを 思い浮かべるかも知れない. さて,ここで,log Zのイミを考えてみたい.それ は統計力学の中だけでは答えることはできない.(もちろん, 母関数としての意味はあると思えるかも知れないが,それは物理的には何も新し いことは行っていない).さて,その意味付けは熱力学に探ろうとするの が,統計力学の立場と言える.まず,マクロな系での圧力をミクロに表現してみ ることを議論する.エネルギーEをもつミクロな状態iが壁を押す力をFiとして, ミクロな圧力を定義して,そのカノニカル分布での期待値をマクロな圧力とする わけである.一方で,熱力学の知識から,圧力やエネルギーとヘルムホルツ自由 エネルギーの関係を導いておく.熱力学の関係式と,統計力学の関係式の対応を 見ると,どうやら-kBTlog Zがヘルムホルツの自由エネル ギーと同じように思える.そうおくことによって,統計力学の計算が熱力学の関 係式と矛盾無く構成できていることがわかる.実は,既に統計力学エントロピー として,エントロピーの導入と熱力学の関係式から,温度の導入をしているわけ でが,その導入の仕方が矛盾していないことは確認できるし, また,ヘルムホルツの自由エネルギーと対応をみると,熱力学のエントロピーが log Wと対応していることがわかる.
先週は,カノニカル分布の形を導出したが,そこでのexp(E/kbT)のTが温度と いわずとも,平衡条件を特徴付ける量であることを議論してきた.今週の議論 では,より温度としての意味合いが高まったのではないだろうか.熱力学との 整合性がかなりつよい拘束を統計力学にかけていることがわかる.次回は,理 想気体を例にして,熱力学的な状態方程式(ボイル・シャルルの式)をみること で,さらにその確信を強めたいと考えている.
なーし.
- なかったような気がする.
- なぜエネルギーや比熱が系の粒子数に比例するのでしょうか?
- それは熱力学での自由エネルギーの示量性からの要請というべきものだと思いま す.適当な模型を持ってきたときに,かならずそうなるかというと,それはわか りません.ただ,自由エネルギーが示量的で無い系は熱力学的に奇妙な系といわ ざるをえません.来週行う理想気体は,その昔,一見すると奇妙な系になりかけ ていました. その様子は来週説明します.
- O(N)とはどういう意味か.