ここまで,基礎的な考え方ばかりを続けて来たので,ちょっと飽き飽きしてしまった人もいるかもしれないから,今週からしばらくはカノニカル分布の応用を楽しんでみたい.まずは一番簡単な「理想気体」の例題をやってみる.理想気体は相互作用のしない粒子系であるが,この場合には状態和(積分)が簡単にとれてしまう.あまり,その事実に触れることなく,カノニカル分布の計算の仕方を淡々と説明した.定式化やモデル化ができても,実際に計算出来ない系は世の中には極めて多いが,そのことよりも,カノニカル分布の考え方や使い方を見ることを重視したかったからだ.理想気体とはいえ,最初に分配関数を計算しようとすると,いろいろと問題は出て来る.これまで,ミクロな状態は暗に離散的に数え上げることができることを仮定してきたが,古典系では状態を表す変数である,位置と運動量は連続変数であることから,まずつまづいてしまうかもしれない.そのあたりの説明をまず行った.具体的には位相空間をメッシュにきって,計算するわけだが,そのメッシュのサイズと量子性の関係をまず議論した.
実際に分配関数からヘルムホルツの自由エネルギーを計算してみた.そこで,自由エネルギーの示量性について確認したわけだが,実は示量性を保証するために分配関数の計算式にすでに秘密のゴマ(N!)がふってあったのだ.その理由は気体分子の識別不可能性から状態数の数えすぎを考慮したためであるが,古典力学にはその根拠を説明できず,量子力学の存在を必要であった.量子力学誕生前夜のお話である.先週エネルギーや比熱が系の粒子数に比例することを説明したが,この理想気体の例では実際にそうなっていることがわかる.
自由エネルギーからエネルギー,圧力を計算することで,状態方程式やベルヌーイの式,エネルギー等分配則等の,高校の物理でもやったかもしれないことを,統計力学的に導出してみた.
なーし.
- ガウス積分やってみよう.
- log Zってどんな意味があるのか?
- 形式的には,確率の規格化定数,あるいは熱力学での自由エネルギーに関係していることは議論したが,もっと物理的にどんなイメージを持てばよいのかということであった.これはちょっと一般的な疑問すぎて答えるのが難しかった.おそらく,具体的な問題を通じて実験に観測出来るようを議論するようになればいいが,その前の段階で,形式論を越えて何かをイメージすることは難しいのではないだろうか.
- 位相空間分割のメッシュとプランク定数について.