第10回のおさらい

今日のおしながき
  1. 統計力学の基本的な応用
    1. 相互作用のある系
      1. 平均場近似
今日のまとめと反省

先週の続きとして,平均場近似の話をゆっくりする. まずはスピンの平均値を導入し,各スピンはそこからのずれとして考える.ずれの二次の項を無視するのが平均場近似である.これは空間次元が大きいところでのみ正当化される.この近似をすると,結局は一体問題に帰着するので,その後の計算は簡単である.問題は一体何をやっているのかをわかることである.何かしらヘンな磁場の元でのスピンの統計力学の問題である.それから分配関数を計算して,先に設定したスピンの平均値が本当に平均値であるという式を立ててみると,それがスピンの平均値の決定方程式(self-consistent equation,自己無撞着方程式)になる.この方程式はいろいろな設定で出て来る.その方程式を解くことで,相転移の存在,すなわち,高温でm=0であり,ある温度より低温ではm>0になる.もっと正しくは,低温ではその方程式はm=0m=±m_0の三つ解を持つ.どの解を選ぶかというのは,熱力学の言葉で言えば,「ヘルムホルツの自由エネルギーが最小になる解を選ぶ」,ということになる.そうでなければ,スピンの期待値のもっともらしいほうを選ぶわけである.それは自由エネルギーの最小値を選ぶことと同じである.そこで,自由エネルギーを微分して,どちらがよいかを調べた.そうすると,T<Tcではm=0の解は極大になることがわかる.というわけで,m=m_0が正しい解ということになる.

後は,他の物理量を調べてみたいところだが,比熱やエネルギーは宿題にしておいて,帯磁率を計算してみる.結果は,Curie-Weiss則が出て来る.それは,転移温度で帯磁率が発散している.計算では転移温度の上からと下から近づく場合でその係数が倍違っている.よく実験結果を見るときには,帯磁率の逆数を温度の関数として,プロットすると,ちょうど転移温度をつきさすようなグラフが得られる.また,反強磁性の場合に負の温度へつきさすように見えるのは,このCurie-Weiss則の考え方である.

ここで中途半端な時間が余った.次回の予告をしておく.次回は大きな分配関数の説明をする.ボーズ凝縮やら電子比熱の話をするのは,この大分配関数を用いた量子理想気体の話で出来てしまう.それは来学期の講義でされるはずである.本当かなー,きっと.講義でやらなくても,演習ではやるはず...

今日の配り物.

なし.

今週の宿題:
  1. 平均場近似での比熱とエネルギーを調べてみよう.エントロピーは?
  2. あれー,自発的対称性の破れってどうなってるんだっけか?
今日の質問:
水の相転移はどうなっているのか.
今日の磁石の相転移は二次の相転移である.なぜ二次相転移かという話を後でするといっておいて,実際に話すのを忘れているような気がする.今回の話では帯磁率が発散していました.帯磁率は自由エネルギーを磁場で二回微分した量として表すことが出来ます.その量に特異性が現れるので,二次転移と呼ばれています(ランダウの教科書では違う解釈が与えられている.問題は呼び名というよりは,その特徴の方である.).さて,水の例では実は秩序変数が転移温度のところで連続ではなくなっています.すなわち,自由エネルギーの一回微分量に特異性が現れることにあり,それを一次転移と呼ばれています.
さて,講義では一次転移のことはわからないことが多いとしゃべって,その典型が水の相転移だといったのが,引き金.知っていることをいろいろとお話する.昨年のNatureにはシミュレーションで水ー氷転移の凝固のメカニズムを見たという話題が出ていました.
今日の雑談:

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Koji Hukushima (hukusima@phys.c.u-tokyo.ac.jp)