おおよそ一ヶ月ぶりの講義であった.前回の予言通り,粒子のやりとりのある系の取扱いとしてグランドカノニカル分布の考え方を導入する.これまでの数回はカノニカル分布の例題を紹介してきた.ここでもう一度カノニカル分布はどこからやってきたのかを復習する意味も込めて,その拡張としてのグランドカノニカルをゆっくり見てみることにした.このシリーズの講義の一つの(個人的な)反省点として,熱力学との遊離が挙げられる.講義の名称が統計熱力学なんだが,ちょっと熱っぽくない講義になってしまっている.しかし,その路線を改めてここでも踏襲することにする.等重率の仮定から熱平衡を記述するための釣合のパラメータとして,温度のような変数を導入したが,同じのりで,粒子のやりとりの平衡条件を表すパラメーターとして,化学ポテンシャルを定義する.その拡張された分布関数としてグランドカノニカル分布を導入する.
個人的にはよい復習になったと思うがどうであろう.それから粒子の期待値を評価してみる.ゆらぎを評価するのは宿題にしておく.カノニカル分布のときに粒子数が大きい極言でエネルギーがほぼ確実な予言が与えられるんのとおなじ議論がグランドカノニカル分布のときの粒子数にできることを確認してほしい.
最後に分配関数とヘルムホルツ自由エネルギーとの対応の議論と平行して,グランドカノニカルの分布関数の規格化定数と熱力学ポテンシャルとの対応をみる.あまり深入りしないことにしたが,この対応は化学ポテンシャルの導入の形をみるには必要であろう.さて,グランドカノニカルの例題として,理想気体の取扱いのアウトラインを示した.旨味がどこにあるかはさておき,形式的にカノニカル分布と同じ結果が得られることを示す議論の流れを説明する.理想気体の例題ではカノニカル分布の取扱いより繁雑で旨味のかけらもないような気がする.グランドカノニカルの利点を知るには,量子統計までいかないとなかなかわからないかもしれない.それは次のシリーズの講義をまって欲しい.
なし.
- グランドカノニカル分布での粒子数のゆらぎをもとめよう.
- 理想気体のグランドカノニカル分布による取扱いをやってみよう.状態方 程式を求めよう.