夏学期の講義は終了しました.残すは夏休み明けの試験です.少し間が空くので,どのように動機付けするかは難しいところです.みなさん,頑張って下さい.
さて,以前からWEBでは少し話していたり,講義の最後にも少しだけほのめかしましたが,「夏休みの大質問大会」をやろうかと思っています.講義以外に何かをやる義務はもう私にはありませんし,みなさんは立派な大学生なので,自分のペースで勉強したり,研究したり,遊んだりするので,その意味では何の必要性も感じられません.ただ,もしやったとしたら,何が起きるか,何が出来るかを見てみたいという個人的な好奇心からやることに決めました.
夏休みのカレンダーを見てみると,それほど時間はありませんでした.日程は以下のようにこちらで設定します.
- 夏休み大質問大会
- 日時:2004年8月25日10:00--12:00
- 場所:16-221A (福島の居室)
- 参加者:福島担当の水曜,金曜クラス
- 内容
- 目的は,講義内容に関する疑問,質問をできるだけ多くの学生と共有しながら,解決することである.
- 試験の平等を確保するために,基本的にこちらから能動的な情報の提供は行わない.この意味で,補習や特別講習の類ではまったくない.これに出たとしても,試験に有利になることはまったくない.出ることで,物理に目覚めて,テストがよくなるということはひょっとしたらあるかもしれない.
- 事前に学生は講義内容についての質問事項をまとめておき,事前,または当日に質問する.それに対しての解答や解説は学生がしてもいいし,私がするかもしれない.
来る意志がある学生はメールをくれるとうれしい.2-5名程度ならば,私の部屋でいいし,10名までならばセミナー室を抑えておけばよい.それ以上なら...そんなことはないと思う.
(2004.08.20追記) 気付けば夏休みが終わろうとしている.今年の夏は本当に暑かったが,みなさんは楽しい夏を送れただろうか.最近はオリンピックが盛り上がっている.開幕まではそうでもなかったが,いざはじまるとどうも見てしまう.深夜まで,頑張っている選手達を見ては,自分も頑張らねばなるまいと奮起を誓うものの,朝起きると暑さにふにゃふにゃになっていたりしないだろうか(これは私のことではないですよ).さて,夏学期の(残り)試験が近付いてきました.みなさん頑張って勉強していることでしょう.さて,「大質問大会」の告知をここでやったのですが,参加表明をしてくれた学生は,皆無ではなかったが,ほとんどいなかったので,場所は私の部屋ですることにしました.
(2004.08.25追記) 大質問大会は終わりました.数名の学生さんが訪れて,2時間くらいあーだこーだとやっていました.自分からはあまり積極的に話しませんでした.試験に関する余計なことをしゃべるとよくないし,学生が何を聞きたいのかを自分で説明してもらおうと思ったからです.個人的には楽しい時間を過ごせました.学生さんのがんばって勉強している様子が伝わると,こちらも元気が出てくるものです.
この大質問大会の裏目的を書いておきますか.参考図書として挙げている藤原先生の「物理学序論としての力学」の最後の章の最後の問題で,Einsteinの言葉「教育とは学校で習ったことを全て忘れた後に,のこっているところのものである」の意味を問うています.答えは私にはわかりません.ただ,「のこっているもの」が何かあればよいとは思っていて,それは抽象的ですが,「スイッチが入った自分」なんじゃないかと思います.大学生活の中で何度かスイッチが入ると思うのですが,何がきっかけで入るのかは人それぞれです.それは講義かもしれませんし,そうでないかもしれません.ちょっと傲慢かもしれませんが,できればスイッチを押してみたいと思うわけです.いや,そのスイッチは他人には押すことができないものだから,その瞬間に立ち会ってみたいという感じでしょうか.おそらく,きっかけをバラまくことは教官にもできることでしょうから.この企画もそんなバラまきの一つのつもり,なわけでした.
全然関係ないですが,過去問に「天動説を否定しなさい」という問題があった.それについて今日学生さんと少し議論した.ポイントは公転運動をどう肯定するかということであった.自転でいいかと思っていたけど,そうではないと指摘された.なかなか簡単ではないですか. さて,それで思い出したが,まずは地球が丸いということをどうして知るかというのはその前にある問題かと思う.「地球は本当は丸いって,知ってるか?」と子供に聞いてみた.どうやら知っているそうだ.「見たことないのに,なぜそう思えるのか?」としがみつく.頑固なわからず屋の親父のようであった.場面は夏の休暇で遊びにいった犬吠岬の地球が丸く見える丘展望台へ続く階段.これから見えるであろう光景を前に,価値づけをしておこうと思ったわけだ.ところが,地球は丸いことはとっくにお見通しのようだ.答えは,「月も太陽も丸いから」.うーん,地球は月や太陽と同じようなものなのか.
(2004.9.2追記) 上のコメントに早速コメントを頂く.Einsteinのいう「教育」とは「教養」のことではないかと.なるほどね.学校で何かを習って全てを消したときに残るもの,それが教養か.何も習わないならば決して手にすることはできないってことですか.わたしが上で言ったのは,短期的な(例えば大学4年くらいの)進歩を指していて,教養というのはもっと長期的な一生ものなものですね.勉強になります.大学のときにとった「教育原理」なる講義よりも百倍ためになります.
私の前任地は研究所で研究一色だったので,教育のことなんか考えもしませんでした.いやー,駒場にいることを実感するし,またこの境遇に感謝せねば...冬学期がはじまるまではちょっと研究モードへ.