今日は運動法則の中で残った第三の法則から説明する.これは作用・反作用の法則と呼ばれている.ニュートンの運動法則の中で,この法則だけが唯一力の性質に言及している.第一法則は陰に力の存在を言っていて,第二法則では力があると運動の状態が変わることをいっている.どちらもどんな力が働くかは説明していないし,また力なるものがどうあるべき物かは知らんプリである.第三の法則で力の性質として,作用があれば反作用があるといっている.かならずそうでなくてはいけないかといえば,そうでない例として,電磁力を知っているが,力学の範囲ではこの法則は成り立っていると考えられている.また,これは遠隔作用の場合にも同様であると考えていて,それが近接の立場で考えるときにもこの作用反作用は成り立っていると考えている.さて,この法則からわかる一つのことは,外力が無い場合の運動量保存則である.運動量が時々刻々変化しない不変な量であるという表現を数式でしめすことができる.外力がある場合は一般には成り立たないが,それでも,運動は分解できるので,外力がある特定の方向しか働かないとすると,残りの方向ではやはり運動量は保存するわけである.例えば,夜空に打ち上げた花火は重力をうけるが,水平方向には運動量は保存される.綺麗な大輪をさかせる理由はこの保存則のおかげである.最近はハートマークをつくる花火もあるが,これはうまく考えていると関心すると同時に,運動量を保存しながらそんな形を作るカラクリに思いを馳せたりする.
さて,今日の予定では3項目話す予定だったので,谷間が2つ入るわけで,ここでうまくブレークをとることにしようと画策する.このブレークでは今回出すレポート問題の概要とレポート提出に際する注意点を話す.しかし,これが後で裏目に出ることは知る由もなく,絶妙の時間配分に勝手に悦に入ってしまっている.次に,次元の話しをまとめてする.次元の話しはある意味で大事だが,それほど時間をとって説明することはないと思われるので,サラーと流す.長さと時間と最後に質量の次元を導入すれば,力学の範囲では次元は尽きている.
ここで2度目のブレークをいれる.ここでは,出席表の裏側のコメント欄の活用法を説明する.何種類かとるアンケートの違いを説明することで,このコメント欄の位置付けをわかってもらう.端的に話せば,面が割れずにフィードバックがかかるコメント欄という特徴づけられるが,ここで「何書いてもいいんだよ」と挑発してしまったことが火に油を注ぐことに?なった.
さて,余談はいいことにして,次に説明したのは,ガリレイ変換とガリレイの相対性原理である.2つの並進する座標系から見た運動の法則が不変であることを理論の条件にしようというのが,ガリレイの相対性原理であるが,そこに至るまでの考え方をゆっくりと説明する.まずは状況設定として,2つの座標系の関係は等速直線運動だとする.この時の座標変換則をガリレイ変換と呼ぶ.この変換則からすぐさま速度の合成則が出て来る.これは我々の日常スケールで体験することでもある.一方で,加速度に関しては不変である.このことから自明に運動方程式はガリレイ変換に対して不変であることがわかる.こうした不変性は物理では大事な考え方である.例えば,先の運動量保存則もかなり恰好が違うが或る種の不変則ではある.
同じ議論を等加速度直線運動する場合に考えてみると,話が少し変わって来る.今度は加速度は不変にならず,座標変換のところからヘンなものが残る.しかしながら,それも新たな(仮想的な)力だと考えて,力の項に加えてしまえば,運動方程式は同じ形にある.もはや,不変ではないのだが,余分なものを加えることは許して,形は同じのままにしようとするわけである.ちょっと悪あがきだが,これでも運動法則が変わらないと思えるのだからいいとするか.さて,この仮想的な力は慣性力とよばれるもので,みなんさんおなじみの遠心力や電車の止まるときに動かされる謎の力のことである.次回はまた別の種類の不変性の議論からはじめたい.
先週の講義で出てきた質問の返答とレポート問題(PDF:103KB)を配る.
- 以前に出てきたベクトル積の方向は?
確かにこれは言い忘れていましたが,講義では右手系を採用しています.つまり,ベクトル積をとるベクトルを左から順に右手の親指,一差し指に割り当てたときに,方向は中指の方向だというわけです.
しかし,左手系でもいいわけなんだが,大半の教科書は右手系を採用している.これは右利きの人間が多いからだろうか?神さまも右利きなんだろうか?- レポートは手書きでもよいか?
もちろん,手書きで結構です.私は基本的に手書きが好きです.きたなくて読めない字では困りますが,丁寧に書いてくれれば結構です.
- 今日のコメントについて
- いやー,実にたくさんのコメントを頂きました.ちょっと挑発しすぎましたかね.本当は直接口で言ってくれた方が嬉しいものなんですが...できるだけ,コミュニケーションをとりやすい環境を作ろうと心がけてはいるのですが,このコメント欄がかえって,それを妨げているような気がしないでもない.普段からいろいろ会話があるときに,たまーに手紙をもらうと嬉しいけど,普段から会話が無いのに手紙しかないというのはちょっとヘンだよな.まあ,それでもこんなたくさんの学生相手にちゃんとした会話もできないだろうから,こういうコメント欄もありかな.それでは.幾つか抜粋.
- 学生を笑わせようと時間を割かないでよいから,その分講義をして欲しい.わらわせようとすることに時間をつかったり,すでに印刷配布されているプリントの内容と同じ事をしゃべったりするのに時間を使ったりするので,大学の講義を楽しみにしていたのにガッカリしている.
一番紙面を費してくれたコメントだったので,これは無視するわけにはいけません.幾つかのポイントがあって,まず「余計なことは喋るな」ということですが,確かにそうですな.貴重な授業料をヨタ話に使われてはタマランという意見です.これは講義に何を期待しているかということに多いに関係してきますよね.こういうヨタ話を期待してきている学生もいないことはないのだと思います.何よりも楽しいことは大事だと私は結構真剣に思っています.ただ,ハリウッドの映画のように,見ている120分だけ楽しめばよいというのとはちょっと違います.後々に印象が残っていないといけません.そうした,与太話の前後に肉がついて,家に帰ってからも記憶に残っているといいですよね.それから,ただ,機械のように何か講義の内容だけを話しているのであれば,それはそこらの本を読めば済むことです.もう大学生なんですから,大半のことは本を読めばわかると思います.もちろん,どの本を読めばいいかはその分野の経験がいります.力学を学ならこれとこれというふうに指摘はしておいたので,それで十分ではないでしょうか.
もう一点は,「冗長だ」ということですね.書いてあっても,ひとっつも読んでくれないという経験から,冗長な説明をしてしまっています.この年になっても,「その話しはもう前の論文にちゃんと書いてあるぜ」というような質問がたびたびあります.書いても読んでくれないことは確かにあるのです.
最後に,「大学の講義を楽しみにしている論」なんですが,講義では説明しなかったでしたっけ?こういう大事なことは説明してなかったりして,それこそ問題ですね.- 最先端の話欲しい
これは「最先端論」ですが,そのうちにすることになるでしょう.- もうちょっときれいな字でお願いします.というかていねいな...
確かにこれはスマンです.いろいろな方面から指摘されています.少しは努力をしてみますが,こればっかりはなかなか直らないです.「ていねいに」ということはわかるのですが...いや,わかってないなー.- もうちょっとはやくすすんでもいいと思う.あと,すべてのことを板書にかかなくてもいいと思う.
個人的にはこれが一番効きました.まず,第一点は,この他にも何件かどうようなコメントを頂きました.同時にこの位でいいという学生さんもいました.講義をしてみて気付くのですが,最初のはじまりが一番気と時間を使います.もう少し進んでもいいですかね.
問題?の第二点ですが,板書にいらんこと書きすぎだということでしょうか.前学期には,「結構,大事なところを板書しない!」という指摘を受けたので,それと完全に対照的ですね.ノートの取り方はよくわかっているから,ダラダラ書くなということか...その時間を先に進めてくれということか...- 中には好意的なコメントも幾つかありますよー.30分ごとに休みが入るのはいいと思う.
もう一つのクラスで,「講義が単調」という指摘を受け,このクラスでは上にも書いたようにきっちり2つの休みをいれる.どうだろうか.きっと,私は単調の意味を履き違えているような気がしないでもないが,一息いれるのは悪くないか...- 2限は腹がすいて集中力が鈍ります.
えー,そんなことは知りません.講義へのコメントじゃないし...やはり,甘いものを注入すべきではないでしょうか.私の場合は,講義の前にのど飴をひとつなめてからきます.糖分の補給を兼ねていますが,なんとなく,ミュージシャンきどりだったりします.