連休で一回休みがあったので,少し思い出しながら話しをはじめる.前回は2つの違った不変則の話しをしたが,今日はまた別の不変則を話した.それはスケール変換に関するもので,話しのつかみは特撮物に生じる違和感からはじめる.どうして,戦隊物のロボットが着ぐるみであることがバレてしまうのかを真面目に?考察してみる.単純な自由落下を例に縮尺変換に対して,運動方程式が不変に見えることがバレない条件であることを見る.具体的な変換則を出してみると,この問題の場合は不変にするために変更できるパラメータは時間の縮尺しかなく,結論は(再生時)に時間をゆっくりすすめればいいことがわかる(この問題では他には重力加速度gしかパラメータがない.gを変える術は...私は知らない).さて,この議論は一定の重力下である性質に依存している.例えば,ロボットの腕にバネがついていたらどうだろうか.これは宿題としよう.いずれにしても,力や運動の種類がたくさんあれば,それごとに変換則があり,時間の縮尺だけで辻褄を合わせることができなさそうである.これが,違和感を感じる理由である(と思う).もっとも,時間の縮尺だけでなくて,変更できる物理定数は変更すればいいわけで,例えば海から上陸するシーンでは水の粘性定数を正しく変換則を埋め込むように変えて,ねばっこい水でとればよい.ゴジラも風呂場でパチャパチャ遊んでいるようには見えないはずである.
さて,冗談のような(個人的には結構真面目な)話しはそのまま万有引力に適用すると,ケプラーの第三法則が出て来るという話しに繋がる.この場合の変換則は公転周期が長軸半径の3/2に比例することに相当している.次に,章をかえて運動方程式を解く話しに進む.まずは,高校の時にやった自由落下の問題を運動方程式を解くという観点から見直してみる.なんということはない.横方向には力がないから,これは放物運動になるが,実際にこれを示すことは宿題にしておく.どうやっても放物運動になるわけなので,よくアニメでみられる,ヒュー,おっとっと,ストン(身ぶり手ぶり)というのは現実では許されない(もっとも宮崎駿なら,おちそうになっても,泳ぐようにして空中を這い上がってくるが..).しかし,現実にも一見許されないようなことが起こっていることがある.それは優秀なバレリーナである.うまい人は水平にジャンプするときに,放物運動ではなくて,本当に水平に飛んでいるように見えるそうだ.本当に水平に動いているのは,頭部だけのようで,途中でタイミング良く足をひろげて,重心をあげているそうだ.放物運動しているのはバレリーナの重心であって,頭部は動かないようにすることができるということ.他にも日常生活でこんなことはないだろうか.
さて,もう少し難しい運動方程式を解くにはもう少しだけ数学的な準備が必要である.典型的な微分方程式の解き方を順々に説明してみた.もっとも,すべての既知の方法を網羅することはできないので,そこはみなさんで深めて欲しい.ただ,力学の講義で取り扱う微分方程式はこの程度で当面はよい.最後に十分前になってから,定数係数の線形微分方程式の解き方を説明した.これはやりすぎだったと思う.来週はそのあたりをもう一度概観してから,物理の問題に移りたいと思う.
微分方程式の解法あたりのノー ト(PDF:68KB)を配る.
- どうして,xU'がU'xになっちゃったのか?微分の合成則?
- 同次形の微分方程式を変数変換することで,変数分離にできることを示す際にあった質問.d/dxの後ろにuxと書くときに微分の演算はどこにかかるのかがわかりにくいことがある.これは書き方がまずいので,ちゃんと括弧をつけるようにして,そこははっきりさせた方がよい.その意味で,dU/dx xと書かれた式は,xには微分の演算は作用しない.なので,順番は変えてもよい.その他に,微分の合成則が混乱しているかもしれにあと,私が解釈したので,補足をしておいた.微分の定義から一度は自分でしめしておくとよい.
- T=R3/2の等号はヘン.
- ヘンでした.はい.ケプラーの第三法則は,公転周期は楕円の長軸半径の3/2に比例するですね.ここは比例するわけだから,木星のそれと地球のそれの比をとって,あれにいくわけですね.
- まくのは再生のときか?
- これは時間の縮尺をつかって,運動の区別をなくすために,「時間を1/10おそくまけばいい」といったのだが,これは撮る時に1/10にするのか,再生するときにそうするのか不明だったということだ.これは再生時です.というか,撮る時に1/10おそくまくことを想定していなかった.そうか,スローカメラはそれか.
- 特性方程式を導くときに,指数関数を指定するのはどういうことか.他の可能性はないんか...
- なくはないが,線形方程式の特徴が効いている...
- 今日のコメントについて
- 前回の反動で,雑談肯定論が渦巻いていた.これは完全に振り子が振れたような現象だろう.雑談が楽しいのはいいとしても,講義が雑談ばかりでは困る(先週と言っていることが違うか?).ある程度制御しながら,しっかり講義をしていきたいと思う.その他には...
- 1.ページの更新が遅い!
- すまんです.忙しくて,サボってます.
- 2.暑くなって来ました
- 本当にそうですね.もうバテそうです.
「このロボット大きさどのくらいだと思う」子供は素直に騙されるものである(これでも父親の職業は「天才物理学者」
「うーん,ビルの大きさぐらい」
「...」