第4回のおさらい

今日のおしながき
  1. 統計力学の基本的な考え方
    1. 等重率の仮定の続き
    2. カノニカル分布の導入
      • カノニカル分布
      • 平衡条件
      • 統計力学的エントロピー
今日のまとめと反省

先週は知りたいマクロ量の導入まで示しましたが,それは実際に計算してみるにはとても大変(そう)なので,なんらかの意味の確率論を導入することを試みてみます.軌道に沿って計算するのではなくて,系が位相点を実現する確率で平均値を計算してみようということでした.この段階でもどっちが簡単なのかはわかりません.むしろ,そんな確率を計算することの方がもっと難しい感じすらします.ここで,サボります.その確率として,等重率の仮定をするわけです.そうすれば,話が進めることができます.

エネルギー一定の条件の元で等重率を仮定すれば,カノニカル分布が導出できます.その過程を見て行くことにしました.ここで熱浴と注目する系に分けたときに,注目する系にエネルギーEが分配される確率を見るところで困惑が少しあったようです. それにカノニカル分布が表れるのでゆっくり見直しておいてほしいところです.講義ではさらにもっともらしい条件をみることで,平衡条件を確認しておきました.これで,熱浴のあれと注目する系のあれが同じになることが平衡条件であることがわかりました.ところが,その「あれ」とはまだ何だかわかりません.もちろん,状態数のlogをエネルギーで微分して...という量ではあります.その条件は,なんだか温度(あるいはその単調関数)のような量である匂いはプンプンするものですが,ここからもう少し進むにはさらに踏み込む必要があります.

ここで,ボルツマンのエントロピーを導入する.マクロな量エントロピーとミクロな量状態数をむすびつける謎の関係を一つもってくることにする.これをエントロピーだと思って,熱力学関係式を使えば,先の平衡条件は熱浴と注目する系の熱力学的な温度がつりあう関係式になる.さて,これが本当によさそうなのかは,ここだけからは判断できない.ではどうするかといえば...どうしますか?

今日の配り物:
レポート問題(PDFファイル.22KB). レポートの書き方とか詳しく説明しませんでした.質問等あればいつでも結構ですので,聞いてください.最後の問題として,「講義への質問,要望,コメントを記せ」を追加します.
今週の宿題:
  1. なし.
今日の質問:

5分前に終了することの意義がある講義であった.

E1をもつミクロな状態が実現する確率を評価しているところで,「比例マーク」を使ったが,それは本当に比例?近似?

熱浴のエネルギーを系全体のエネルギーの回りの展開なので,展開という意味では近似です.その近似がよいことは来週わかります.それから,ただの定数はこの場合には関係ないので,近似ではなくて,要らないわけです.後から,定数がついている場合は「比例」とは呼ばないということを指摘された.けど,まあ,それも比例ということにするか.

その確率がエネルギーの指数関数になるが,その比例定数は定数?

カノニカル分布のエネルギーの前の係数は定数かというのが質問.これはE2=Etotのまわりのテイラー展開の係数なので,定数ですね.どんな近似なのかが問題だったのかもしれません.それは,E2=Etotで熱浴の自由度が非常に大きくて,ほとんどのエネルギーをガメている状態です.

それは本当に確率なのか?意味がよくわからん.

しばらく,あれこれ説明してみたけど,うまく伝わらなかった.最後は「おはじきをならべてみます」と言ってくれたので,少し救われた気がした.納得いくまで悩んで欲しいものです.

統計力学的エントロピーの必然性は?それは導出したのか?思い付いたのか?思い付いた理由は?

エントロピーの満たすべき条件はいくつか挙げられるが,それと状態数との関係は一意的には定まらないのだと思っています.だから,導出は出来なかったはずで,どのように思い付いたかはボルツマンのみぞ知るところなんだでしょう.後で関連する問題を理想気体のところで話したいと思います.

O(1)とは.O(ε)よりもいい加減な感じ.ちゃんとした意味は?

たまに,ここはO(1)だから..と説明することがある. 数学でO(ε)というのはよく定義されているのだが,そのO(1)というのは何の展開なのでよくわからないと指摘された.確かにそうかもしれない.でも,その背後の文脈には何のオーダーをg論しているかのかが明らかにされているはず.今の場合は系の自由度Nである.O(1)というのは,O(N)でなくて,O(N-1)でなくて,O(N0)を意味しています.

もっともらしいは,「最もらしい」か「尤もらしいか」

講義でたびたび「最もらしい値」と言っていますが,そのもっともらしいは,「尤もらしい」ではないかと指摘される.ここでのもっともは,最も大きいのではなくて,尤もな値が正しい.でも,最も確率が大きい値と考えれば悪くない気がする.などと反論すると,統計の最尤推定では...とやられた.負けました.「最尤」とは「最も尤も」な推定なのか.とても強そうである.英語ではmaximum likelihood.これはあまり強そうではない.

今日の雑談:

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