今日から数回にわたって,線形応答理論の話をしようと思う.まずは,応答関数や緩和関数を説明したいというのが,今日の目的であった.その前に,線形応答の線形について話をする.具体的な問題の説明はしなかったが,みなさんがこれまでに良く知っている線形関係な法則を幾つか並べてみて,ある種の力がかかったときに,その変位が力に比例する場合について考えることにする.想定される力には,力学的な力から電磁気力や,熱勾配などがあり,これらを総じて一般化された力と呼び,それらに対応する一般化された変位との関係をこれから議論する.
一般には力が掛かると変位が生じるが,それには幾分タイムラグがあることがある.この遅れの効果を考えて,変位と力の関係を書いてみる.今は,線形関係しか考えていないので,この遅れの効果も重ね合わせで書ける.このときに時間に依存して,力を変位に伝える関数を応答関数と呼ぶ.これはある時刻に掛かった力が,それから遅れて変位になることを表していて,その時間差だけの関数であるとする.これがわかれば,時間に依存した力の与えたときの変位の様子が時々刻々わかることになる.その関数形は力の種類に依るだろうし,対象としている変位にも依るだろう.イメージをよくするために,力がパルス的の場合は,一定の力をある時間に無くした場合に,応答関数が変位にどのように見えるかをグラフで書いてみる.その途中で緩和関数を定義しておく.応答関数と緩和関数は微分の関係にある.
次に,空間依存性も考慮して,ある位置に力を加えたときの,別の場所での変位を考えることにする.ここでは並進対称性を課すことで,フーリエ変換を用いてコンパクトな式にする.このときの線形応答係数を複素アドミッタンスと言う.これと,応答関数や緩和関数との関係をまとめておく.最後にアドミッタンスの実部と虚部の関係を示しておこうとしたが,時間がなくなってしまった.応答関数への因果律の要請だけから,その関係式が出てくる.いわゆる,Kramers-Kronig分散式である.残りが10分で,真面目に示すのは難しいと思ったとたんに,何だかスイッチが切れてしまう.おそらく,電磁気や量子力学でもやっているだろうからと思うと余計に萎えてしまって,気を持ち直すのに30秒ぐらいかかった.とにかく,分散式だけ書いて,今日は終わることにした.
- ちょっとずつサボっている計算をフォローせよ.
- 分散関係を示すのは宿題にしようか.
- 特徴的な時間で緩和するとは?
- どのくらい応答が送れるかは,力の種類に依るのではないか?
- 応答関数が並進対称であるとはどういうことか?それがずれる条件は?