第12回のおさらい

今日のおしながき
  1. 中性子散乱-- Van Hoveの式 --
  2. 磁気散乱
今日のまとめ

先週の講義の後で出た質問について,最初に少しコメントしておく.さらに,先週の微分断面積と動的構造因子との関係の式について,お話をする.ここからもう少し物理的な描像を得るためにはもう少しだけ変形が必要になる.弾性散乱と非弾性散乱が何に対応するかをもう少し具体的に見てみないとわからない.しかし,ここはちょっとサボることにして,お話を繋いで,それぞれがどんな物理的な意味を持つかを示すことにした.もちろん,もう少しでちゃんと示すこともできる.弾性散乱の例として,フラクタルクラスターに関する中性子散乱の結果と,直接観察した相関関数のデータを示した.よくみると,ちょっとヘンなところがあったが,よーく見てみるとまあ気持ちはわかるかなーというデータであった.この例では相関関数が写真からわかってしまうが,普通は見ることはできないことが多く,そんな場合でもS(q)は散乱実験で得られる.ちょっとうれしくないか.

次に,磁気散乱の関係式を見出しておく.今度は中性子のスピンの情報を使って,ターゲットのスピン状態を推定するわけである.例としてはターゲットの電子スピンとの相互作用を考える.相互作用は磁気双極子と(中性子スピンの磁気双極子がつくる)磁場の相互作用を考えるだけで,至って自然である.ちょいちょいと,例によって途中をサボりながら,式変形すると,最後にスピンスピン相関関数が出てくる.途中で,入射状態として偏極していないことを利用した.中性子をぶつけて内部の電子スピンの相関関数がわかるというわけである.少しは不思議な気もしなくはない.

最後に,典型的な磁気散乱のデータを紹介する.1つはどこにでものっているマグノンの分散関係の図.これは本当はここにこんなピークがあって,ピークがすーとずれて行く様子を下手な絵で説明する.もう1つは,希釈磁性体のフラクトン励起に関するものだが,そこは言わずに,S(q,ω)から励起状態の様子がわかったり,予想がつくことを説明する.さらに,その実験ではFDTを使って,複素感受率の虚部をフィッテングで求めていた.こういう使い方もあることを例として紹介した.これらのデータは実験的に動的構造因子を求める方法であったが,これは理論的にはどう考えるべきだろうか.普通はターゲットで起こっていることを表現するモデルを考えることからはじまるだろうが,それは一般には多体問題であり,具体的に計算してみせることはそれなりに難しい.それは固体物理かあるいは物性物理の講義で議論すべき内容かと思われる.そういう講義もおそらく駒場で行われるだろうから,詳細はそちらに譲ることにする.ここでは「問題」の構造について話しておしまい.

これで話すために準備してきたことはおしまい.来週は出張のために休講に決めたので,ここでシリーズとしての講義も終了である.最後にレポート問題を説明した.それから,よい文献が見付からないかもしれないために,典型的な古典論文を幾つか列挙した.

今日の宿題:
  1. 楽しいレポートを期待しています.
今日の質問:
スピン偏極していいことあるか?
今日の雑談と反省:

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