第6回のおさらい

今日のおしながき
  1. 静電場の物理
    1. 電位と保存場のつづき
      1. 静電場ポテンシャルの満たすべき方程式
    2. 導体系
      1. 導体系の一般的な性質
      2. 静電遮蔽
今日の配り物
プリントを一枚配りました.
  1. レジュメ:補足PDFファイル (76KB)講義で配ったものから若干修正しました.特に,図に式に対応する項を書き込みました.
今日のまとめ

先週は出張であったためにお休みを頂いた.一度休むと二週間ぶりになるわけだが,なんだか忙しくいると,あっという間である.とはいえ,みなさんはそうではないだろうから,これまでの復習を兼ねて,静電場学んで来たことをゆっくりと眺めてみる.その前に前回ポテンシャル(電位)を導入するために電場が保存場であることを見たが,その必要十分条件が電場の回転がゼロになることだと説明した.その際に一つストークスの定理を証明なしに用いていた.あまり数学チックになってもいけないと思い,証明はアウトラインだけ説明してプリントを配ってさぼることにした.方針はガウスの定理の証明とよく似ているので,ゆっくりと見て行けばわかるのではないだろうか.

さて,その後に静電場の満たすべき方程式を書き出した.それはガウスの法則とうずなし(回転がないこと)の条件の式であった.後者の議論を進めることで電位の導入をしたので,逆に電位の満たすべき条件として,欠けているガウスの法則を絡めることで電位の方程式を出してみる.それはラプラス方程式と言われている偏微分方程式である.実際に解くには境界条件を与えなければならないが,その元では解は一意的に決まるという性質をもっている(これも証明はしていない.興味があればまたプリントでくばるかなー.).(先週電場がガウスの法則だけからは決まらないことを説明した.ちゃんと決めるためには渦なしの条件が必要だったわけである.そうすると,電場の3つの変数を決めるのに4つの方程式が出てきて困るのだが,渦無しの条件は独立な3つの方程式でないことはすぐに示せる.) ラプラス方程式の解を見付けることは結構難しい問題であるが,次回には特殊な場合の解の見付け方を紹介したい.

次に,話題を変えて導体の話をする.先の特殊な場合というのは導体の例であることもあるし,これまで電荷が与えられた時にそれが作る電場を求める議論を続けて来たが,導体系ではそうはいかないことをまず説明した.つまり,外部の電場によって,導体の電荷分布が自動的?(適応的?)に変化する系なので,あらかじめ電荷の分布が決まっている場合ではない問題なのである.導体は,金属等の電気が流れる系の総称である.20世紀の最大の発明が原子論と言われているが,導体も原子から構成されている.その中で導体に顕著な性質は原子核に束縛されない伝導電子をもっていることである.電気が流れるということがその性質をもっとも表していて,そこから幾つかの一般的な性質が分かる.まず,電場中に導体を置いたときに,導体の内部には電場が入り込まないことである.もしも電場が存在すると,導体内部の電子がすばやく動き,電場を中和するまで動くわけである.また,ほとんど同じことではあるが,導体内部に単独で電荷が安定に存在することはできない.もしあるとすると,その電荷が作る電場を中和するようにまわりの電子が動くからである.導体中に存在し得るとすれば,それは表面に限られている.その表面に貯まった電荷は当然電場を作るわけだが,それは表面に対して,法線方向に限られていることもわかる.もしも水平成分があれば,その電場が消えるまで表面の電荷(電子)を動かすからである.そうすると,その近傍にガウスの法則を当てはめることにより,導体の表面電場を求めることが出来る.ほー.導体中に電場がないことから,いろいろ考えることでいろいろなことがわかった.他にもわかることあるかなー.

今日の最後は,導体系の例でもあり,ガウスの法則の例でもある静電遮蔽を説明する.うー,疲れた.導体中に空洞をつくると,その中には電場が存在しないことをいろいろ議論した.単純にガウスの法則を当てはめることでどこまで言えるかを詳しく見た.結局,ガウスの法則だけからはあまり大したことは言えないわけである.最後はストークスの定理を持ち出して,やはり電場はないことを示す.導体の内部の空洞には電場外部の電場は染み込んでこないという事実は,静電遮蔽と呼ばれていて,例えば携帯電話にも使われている.開けると導体のフィルムが張られているか,導体塗料が塗られている(はず).携帯電話の中の動作がいちいち外部の電場に左右されていたら,困ってしまうわけだが,そのようなことはないわけである.思いっきり下敷をこすって,携帯に近付けても壊れない(はず)なのである.さて,以前のレポートで球殻の電荷がその内部で電場を持たないことを示してもらった.そのときは綺麗な対称性をもっていることが,証明に決定的に効いて来ている感じがした.積分しても,立体角を考えてもそうであった.しかし,今日の話は全く球であることを使っていないし,むしろどんな変態的な形でもよかったわけである.だから,携帯電話でもOKなのが...その昔,ガウスの法則の検証実験も実はこの静電遮蔽の確認だったわけである.もしも,綺麗な球状の導体を作らなければならないのであれば,どこかでぶつけてへこませただけで,検証にならなかったはずである.反検証といって,大騒ぎになったかもしれないが,そんなことは気にする必要がなかったというのが,今日の話である.

実に見事 に?5分前に終了する.本当は10分前に終わるんじゃなかったっけか.

今週の宿題:
  1. 今日のプリントに間違いはないか.
  2. クーロン電位がラプラス方程式を満たすことを示せ.
  3. ガウスの法則はたった一つの方程式であるが,どうしてそれを応用することで3成分ある電場が決定できたのだろうか?これは不思議なことか?
  4. こすった下敷をアルミ栢に近付けると引き合う.なぜか?アルミは導体だからか?では,導体でない紙でも下敷に吸い寄せられる.なぜか?
今日の質問:
なかったような...
今日の雑談と反省:

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Koji Hukushima (hukusima@phys.c.u-tokyo.ac.jp)