第2回

今日のおさらい
  1. 物性物理としてのスピングラスの続き
  2. スピングラス模型とその発展
今日のまとめと反省

先週のつづきから、相互作用の競合としてのフラストレーション効果について例題を見せる。要点は、基底状態の縮重が増えて、ギャップエネルギーが相対的に小さくなり、秩序化が起きにくそうになること。
その後、スピングラスの標準模型としてEA模型を紹介。その後の発展として、そのポッツ版や多体相互作用版があることを紹介した。また、連想記憶のHopfield模型によるブームや最近の情報統計力学というカテゴリーの話をした。
ごちゃごちゃして、なんのこっちゃよーくわからん講義だったです。講義なんで、次があるから許される(?)もののセミナーだったら、ぶっ飛ばされてますね。えー、それで、これからEA模型の平均場版を解いていきます。スピングラス問題を解きたくなるようなイントロをしたかったんですが、ちょっと伝わらないですかね。次回は符号の話を最初にちょっとやってから、まじめにスピン系の話を解いていきます。地に足がついたついた感じがするのは次回からです。

今週の宿題:
  1. Hebb則で作った相互作用は、埋め込んだパターンを安定にすることを示せ。
今日の質問:
  1. ランダム変数があることの難しさの意味は?
    黒板に「ハミルトニアンがランダムなのが難しい」と書いてしまったことの意味は?というのが質問でした。相互作用がランダム変数で与えられているので、解析をどうすればいいのかよくわからないということです。秩序変数、スピンの固まり具合を見る第一の方法は相互作用の固有モードを見ることで、均一系の場合は、フーリエ変換がとても有効です。フラストレーションがあっても、秩序化する候補はそのことでわかります。その後で、くりこみ群とかの解析もできるわけですが、ランダム変数を含む相互作用の場合はフーリエ変換してもどこにもひっかかりません。つまり、これまで我々が知っている解析テクがすぐには使えなさそうだという難しさがあるということです。
  2. マニアックな拡張って、その真意はどこなのか。また、EA模型と定性的に違うのか。
    真意がどこにあるかはよくわかりません。よくもまーこんな模型を考えたわね、というが私の感想です。どこから出てきたのかよくわからないこと自体が「マニアック」だよね。といったら、講義の後に、「そういうところに統計力学的アプローチの面白さがあるんじゃないんですか」って言われました。そうかもしれません。(別にマニアックだから悪いって一言も言ってないですよ。)例えば、ある場合(ポッツ変数の数が2とか多体相互作用が2体しかないとか)にはEA模型にいくので、その拡張としてどうなっているかとか。EA模型からずれると、スピンの反転対称性がなくなるので、相転移の性質が変わるとかってことをあからさまに示すことですね。実際にそこで劇的に変化します。
  3. ランダム変数を導入するときに、JとかJ_0とかパラメータの数が増えて、相図の様子が複雑になっているだけでは...
    3体,4体相互作用とかマニアックだと強調しすぎたので,でも2体なら偉いのか?とか,2体だって,パラメータが増えていることだけが重要なんじゃないのか.というのが質問の趣旨だったでしょうか? 答えはそうではないです.ランダム変数にしないと出てこない新しい相(スピングラス相)が出てきています.2体の範囲で,非線形帯磁率が発散するとか出てくるので,結構うまいところを捕まえた模型だと思います.なので,なおさら,何故3体なの?って思うわけです.
今日の雑談:
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Koji Hukushima (hukusima@phys.c.u-tokyo.ac.jp)