第3回

今日のおさらい
  1. スピングラス模型とその発展
  2. 強磁性相転移の平均場理論
今日のまとめと反省

先週のつづきから、誤り訂正符号に関するお話をする.Sourlas符号の話しやベイズとしての観点を述べるに止まる.この分野は歴史があるので,今日の概観的な見方はもちろん網羅的ではない.ここで強調したいのは,ある種の(って先週話した「マニアック」(しつこいって?))スピングラスがこうした分野にも自然に登場するということ.最適化問題のk-SAT問題やグラフ分割問題(仲良しクラス分け問題)も同じ.Sourlas符号の説明が悪かったので,どうやって情報を冗長にしているのかという質問があったり,p体相互作用のpとノイズ確率のpがごっちゃになってしまった.
その後、普通のスピン系の統計力学に入る.まずは,平均場近似.もう大学院のみなさんはよく知っているかも知れないが,復習も大事.平均場近似がどの程度悪いかはこの範囲ではよくわかりませんが,悪いことをしているところは明確にしたつもり.その後に,平均場模型を導入.2つの違いもわかったでしょうか.よく考えてみたら,近似の話しは必要なかったかも知れない.しかし,平均場模型が何をしているのかを知るには少しは役にたったかな.来週は平均場模型の計算を具体的にやって,絞り出せることは全てだしてみます.

今日の質問: なんか年をとったのかどんな質問が出ていたのか記憶が...
  1. 符号の問題の事前分布をホワイトにしていい理由は?
    言語とかって,Zipp則があるので,分布関数にヘンなtailが残っていたりするじゃないのよってことでしたが,ビット情報に落とすときに適当にホワイト化ができるのだと思います.
  2. Shannon限界に達する符号化法の満たすべき条件はあるのか
    よく知りませんが,ランダム符号とかSourlasとかを見ているとランダム化を使うことが重要な気がします.もちろん実際的には通信効率もそうですが,エンコードやデコードの手間も問題もありますから,どこがボトルネックかを考えないといけません.
  3. 平均場近似はどこが悪いのか?
    平均値があると思って,そこからのゆらぎという「表式」は正しいが,ゆらぎーゆらぎ相関の項を落としてしまうところが平均場近似の悪いところ.では,その平均値を入れたことは悪いのかというのが質問.最後にこの平均値を決定したいが,その過程は平均場ハミルトニアンを使って統計力学的にやっているので,問題はない.つまり,既に平均場ハミルトニアンを作るときに散々悪事を働いていて,その後はまっとうにやっているということだと思います.
  4. 平均場模型には空間構造って入っていないのか?
    そうですね.となりがどこかは入っていません.平均場近似もそれに近いところがあって,せいぜいとなりの個数がいくつかしか参照しません.結果として,平均場模型はとなりの個数を無限大にしたようなことになっていて,次元が無限大になっているような模型と解釈することができます.
  5. クラス分け問題って距離の概念ない?
    そうですね. というわけで,最適化問題やニューラルネットの問題は平均場模型がかなりよい近似になっていたり,まさにそうした状況になっていたりします.物性物理としては,平均場模型が自然のよいモデルになっているとはとても思えないので,いかに空間構造を取り込むかとか,ゆらぎをどう取り込むかを苦心してきたわけですが,実は平均場的な考え方ですでによさそうな領域が物性の外側にちょっと広がっていたというのが,情報統計力学と言われる部分です.
今日の雑談:
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Koji Hukushima (hukusima@phys.c.u-tokyo.ac.jp)