第7回

今日のおさらい
  1. スピングラスの平均場理論
    1. レプリカ対称解の性質
      1. 秩序変数
      2. 線形帯磁率
      3. 内部エネルギー,比熱
      4. エントロピー
    2. レプリカ対称性の破れ,AT安定性
今日のまとめと反省

今週はレプリカ対称解の性質を概観する.先週実はRS解は正しくないということをバラしたので,これをやる理由は見えないかもしれない.しかし,秩序変数の軟らかそうな感じとがわかるのはためになるし,何よりもいろいろ調べてみないと,間違いに気づかない.自分がSKだったら,エントロピーなんて計算しなかったかもって,思ってしまう.ことがないように,計算してみる.今日は計算の詳細は省略してしまった.もし興味があって,自分でできなかった場合,あるいはノートが間違っていた場合は教えて下さい.

その後で,RS解の回りの摂動展開をやってみる.RS解の安定性解析とは自然な流れで,ヘシアン計算して,不安定モードが出てこないかどうかをチェックする.実際は,ちょっと(難しくないけど)面倒くさい計算だが,やってみる.こんな解析を講義でやるとは渋すぎだなーと自分で思う.うーん,悦に入っているのか?院生さん困惑してるかも.とにかく,負の固有値を出す犯人を割出す.その安定条件を見ると,スピングラス相に入った途端に破ってしまっていることがわかる.

エントロピーが負になることから,RS解がダメなことがわかった.では,どこまで立ち戻る必要があるかというと,(1)レプリカ法はいいけどRS解がだめか(2)レプリカ法自信が全くダメか...他にもあるかしら.今日の安定性解析の結果は安定条件を破っていたわけで.ある意味で一安心というところかもしれない.ちゃんと鞍点評価になっていなかったわけだから,少なくとも(1)だと思える.もちろん,まだ(2)の可能性だって残っている.来週は,正しく鞍点評価をやる方法を考える.

今日の宿題: なし

今日の質問:
  1. 比熱にカスプとか出てきてしまうし,帯磁率のカスプはそれほど重要視しないとすると,平均場理論の売りはどこか?
    そもそも,平均場理論を考えるのは,物理描像を探るためではないかと個人的には思う.Weiss以来,相転移描像はそうであったのではないだろうか.なので,物理量の定量的あるいは定性的な降るまいもなかなか信じられない.これはスピン系に特有のことかもしれない.一方で,我々の住んでいる三次元とか2次元のように低次元の世界にくると,ゆらぎが効いて来ていろいろな変更が必要になる.でも,例えば臨界現象での臨界指数とかなんか程度で済む場合が多いのではないか.もっともKT転移みたいに,本質的に2次元であることが重要な例もあるので,そのときには,本当に驚く.
    そこで,なぜ平均場理論か?ということだが,一般には上にいったように,いろいろな描像が得られるからだと思う.スピングラスでも例外ではなく,今後の講義で示すように,まーちょっといろいろありまっせ.
  2. 固有ベクトルの直交性の要請を上下に分ける(強い要請か)のはなぜか?
    物理的にはMとQが秩序変数として,違うということが挙げられる.結局危ない固有モードでは上はゼロになってしまうし,固有値の数を勘定すれば全部つきていることも確認できる.
    この辺りの計算はわかったでしょうか.私自身は自分で手を動かしたんで,わかった気になっていますが,講義でばーーーーとやるとあんまりよくわからなかったかもしれません.やっていること自体は難しくないので,その気になればできるもんです. このあたり詳細もやっぱり簡単な話(あるいは渋すぎか)ということらしく,世の教科書にはあんまり載ってない.西森さんの本には詳しく書かれています.
今日の雑談:
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Koji Hukushima (hukusima@phys.c.u-tokyo.ac.jp)