今週のレポート問題今日は、前回大急ぎであった、ファラデーの法則から説明をはじめる。起電 力をローレンツ力にもとめることができる話をした。その原因は大きく2とおり あって、直接動く電荷に働く力と動く磁場から電場を介してくる力である。後 者はあからさまにファラデーの法則を与える。時間に依存する世界になっては じめて、電場と磁場が絡んだ法則がでてきた。
次にマクスウェルの変位電流の話でマクスウェル方程式が出揃うことになる。こ のあたりの話はどの教科書にも書いてある。歴史を知らない私でさえもその遍 歴過程に思いをよせるとちょっと興奮してしまう。ここで一度出揃ったマクス ウェル方程式をまとめておいた。時間が無かったので、じっくり堪能すること ができなかったが、質問にもあったとおり、静電場・静磁場の時には分離して いた電場・磁場がなんとも絡んでいるのがわかるし、静的な場合はちゃんと昔 の法則に戻るのも当り前だが、。。。。当り前だ。でも当り前のことがちゃん とできているのを確認するのは気持ちのよいことではないだろうか。
時間に依存した場合でも成り立つマクスウェル方程式をみると、当然?、ポテン シャルはどうなっているか気になることだろう(ほんとか?)。そこで静電ポテ ンシャルとベクトルポテンシャルで書き直してみる。途中でクーロンゲージで ゲージ固定することが楽にできるポイントだった。そうすると、スカラー・ベ クトルポテンシャルの満たす方程式が非常に対称性よい形で出てきた。
最後に講義ではとり上げられなかったことをまとめた。
全体的な反省だが、理論偏重な講義であった。本当はもっと面白いのは実験なんだが、うまい題材を紹介する度量が私にはなかった。モータもってきたり、ダイオード光らせたりできたらよかった。それから、もっと例題を実験的なものにできればよかった。それはもっと進んだ電磁気で学べることを期待する。- オームの法則からジュール熱まで
- 物質中の電磁場の性質(誘電体とか)
- 電磁場の性質 (あー、なぜ空が青いかを。。。)
なし。今週の宿題:
今日の質問: 以前にあった質問に答えを考えてみました。PDFファイル 93KB。今日もわーとぎりぎりまでしゃべったんで、質問時間はなかった。
- 講義で定義したゲージ変換で実際に電場・磁場がゲージ不変になることを 確認してみよう。
- 今日はみなさんに「学生による授業評価に関するアンケート」をお願いしました。十五分程度で終わるとのことだったので、講義を十五分前に切り上げてアンケートをやりました。みなさん、素直に書いてくれたでしょうか?私は解答は気になりながらも、すぐにゴムでしばってそのまま教務に提出してきました。どどどーよ。
- なんて書くともう最終回のような感じですが、実は来週もう一回やります。もうすでにアンケートとってしまったので、来週は好きにやらせてもらいます。うしし。
- 最近、新聞紙上で「科学」の分野がとりあげられることが多くなったような気がしますがどうでしょうか。1つは定期的に朝日新聞では週一で科学のページがあります。なかなか最先端を伝えるのは難しいとは思いますが、それっぽいページがあることはとてもいいことだと思います。そういう記事が書ける科学ジャーナリストってなかなか日本にいないような気がします。もう1つは、最近の成果がプレスリリースというか新聞発表されることが極端に多くなった気がします。新しい酵素見付かったとか、あのブラックホールはうそらしいとか。これは科学ジャーナリストがやっているのではなく、科学者が自分の宣伝をすることが多くなって来ているのだと思います。成果を国民にうまく説明することは最近特に要求されています。それに科学者が答えているのだと思います。あんまり、人の宣伝だと思うとしゃくなのですが、「卵を回すと立つ理由がわかった」りした記事を見ると単純に面白いですね。
そしてもうひとつ、今年になってから朝日新聞で特集された「大学の力」というのがありました。みなさんは見ましたか。つい先日それに読者の声が沢山きて、しかも四割が大学関係者だとのことでした。その中の典型的な意見は、大学の講義はつまらん! でした。そして、「大学の教官は講義いい加減だぞー」とか「入学して2ヶ月で嫌になった」ということです。確かに私も学生の時にそう感じました。でも、そのときに友人から「じゃー、どうしたいんだ。おまえは大学に何を期待していたんだ?」と言われたのを覚えています。受験勉強がんばって大学入って来るわけで、何をしに来たのかよく考えなかったが、なーーんかすごーーく期待していたんです。それって、大学に行けばすごーい大学の先生がなんだかすごーーいことを教えてくれるんだ、ワクワクって感じだったと思います。それ何かちがうんですよね。もう教わるだけじゃダメなんですよ。そのことにはやく気づいて欲しいです。物理のような歴史のある学問だとなかなか最先端のところにいきなり連れていくわけにもいかずに、100年前に終わっている電磁気なんかをいつまでもやっているのです。しかし、そこには物理学としてのものの考え方が普遍的にあるからで、電磁気をやりながらもそこを学んで欲しいわけです。最先端ではないふるーい話をずーと聞いているばかりの講義ではワクワクしないかもしれないが、本当にワクワクって知的好奇心を掻き立てるコトは講義のすぐそばにいくらでもあるんですよ、すぐそばに。それを拾いあげるための道具を講義では提供しているつもりです。以前に「なぜ講義に出るか」という話をして、私の考えを表明しなかったですが、答えはここにあります。道具を学ぶために講義にでるんです。もうすでに道具をもっているのであれば、あるいは別の使ってみたい道具があれば、講義なんて出ないでその棒を振り回して遊んで下さい。- なんか、脱線して、結論の見えない山の手線型論調になってしまいました。
- 世の中の風潮だと、いつまでも教官が好きにやっていていいわけがなく、学生の立場になって講義しなくてわいけないのだそうです。アンケートもそれに関連して、教官の講義改善のための資料にします。でも、そんなにわかりやすい講義ばっかやっていいのかという気がします。みなさんは予備校の学生じゃないんだよ。学びたいと思えば、教官から吸い取ってナンボだろう。教官は吸い取られるような何かをちゃんと提供すればいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。懇切丁寧に教えるだけでなくて、長嶋氏のように「ここはサーと引いて、シュバッていくんだ」なんて講義もいいんじゃないだろうか。もっとも、長嶋みたいにカリスマじゃないとできんのかもしれんがね。自分は長嶋じゃないことは百も承知しているが、最終講義はそんなみんながついて来れないような講義をやってみたいと思っている。科学は論理的に説明できるので、ついて来れないというのはウソだが、まあババーといきたいところです。ちょっと、知的好奇心を掻き立てるために、普通の講義内容のちょっと外側にいってみます。