先週の予告として,静電遮蔽の話をすると言っていましたが,それをするためには導体の性質を説明しなければならず,その前に電位の話をしておいた方がよいとおもって,この順番になりました.来週こそは導体の話からそちらへ向かいます.と思ったら,来週は駒祭でお休み.
さて,今日は,電位の話をしました.電磁気の教科書を見ると,大抵最初に電場,そしてすぐに電位が出てきます.しかし,どうも電場の話が一通りしないと,電位に行きにくいような感じがあり,ちょっと遅めの電位の登場になりました.力学で登場した(であろう)位置エネルギーに静電気版と考えることが出来ます.電場の中で,電荷を動かすときの仕事から導入し,保存場(力)の性質,すなわち,仕事が経路に依存しない性質を使って,電位を導入します.電位を計る(定義する)ための基準点が必要ですが,それは普通は無限大にとります.後でその心はわかりますが,いかにも理論っぽい決め方ではあります.実際には,共通の接地点から定義するのでしょう.いわゆるアースするってやつです.さて,電場が保存場であることは,次のように議論します.仕事が経路に依らないことから,すぐさま閉じた経路での仕事がゼロになることがわかります.また,ストークスの定理より閉じた経路での線積分は経路に囲まれた面でのベクトル場の回転の面積分になることがわかります.(ストークスの定理は証明しませんでした.後でプリントで配ろうかと思います.証明はガウスの定理の証明とよく似ています.) 実はクーロンの法則で決まる電場の回転(ナブラとのベクトル積)はいつでもゼロになることがわかります(これは宿題).というわけで,ちょっと長くなりましたが,電場は保存場であるわけです.このあたりは,チャートのような感じで黒板にまとめてみました.もう一度何をやってきたかを整理しておいてください.
電位を説明できたので,ここで改めて電場(ベクトル場)と電位(スカラー場)の関係をまとめておきました.お互いは積分と微分の関係になります.上の導入のように,電場から電位は(線)積分として定義されます.逆としては,もし電位がわかったとしたら,電場はgradすることによってわかります.以前に,gradを説明するときに,等高線の話をしたのを思い出して(ちょっとわざとらしかったが,見事な前振り,いや伏線張りであろうとこのあたりで悦に入る.って,何週前の寝たネタフリやねん.),電位と電場の関係を絵で書いてみる.ここでの等高線はそのまんまだが,等電位面という.また,任意の空間二点の間の電位の差は,それぞれの位置に定義された電位の引き算になるが,その際には,基準点がどこにあろうと関係ないことがわかる.これを電位差とか電圧と呼ばれている.この節の最後に,電位の単位について説明を加えておく.いわゆるボルトという名前で呼ばれているのである.乾電池は何ボルト?
ここまできて,すでに十時を回ってしまったので,ちょっと迷ったが,少しだけ導体の話に突入する.そこし,ミクロな原子の説明をしてから,導体中では電場を打ち消すように電荷(実際は電子)が動くことを説明した.こういう話になると,途端に素朴な疑問がわいてくるようだ.よい傾向です.来週は導体の話を少し続けてみたいと思います.いやいや,来週は休講でした.
ちょっとさぼって,なしです.
- クーロン電場が∇×E=0を満たすことを示せ.先週も出したが,今週の講義のあとには,もっとやってみたくなったんではないだろうか.
- ストークスの定理の証明をできるなら,やってみようか.
- どうも数式のイミが...仕事って...
- 導体の中の電荷の動きはどうなってる?
- 「電場をかける」ってどういうこと?
- ってことは,E'=-Eですか...
- 導体の外側の電場は...