先週の宿題の答えの例から講義をはじめる.我々がクーロン力を普段感じなくても済むのは,ほとんどの物質が電気的に中性であるからに他ならない.どれくらい「ずれていないか」を議論するために,もう一度水素原子を考える.電気的中性が崩れていれば,水素原子間にはクーロン斥力が働くが,一方で,星の誕生には水素原子が集まって芯を作ることが知られている.このことを事実として受け止めるならば,水素原子間の重力がそのクーロン力よりも大きいことになる.このことから,電気的中性の破れの大きさの上限が評価できる.式と答えだけあらわしておいた,答えは吟味されよ.
さて,今日はクーロン力から決まる「電場」の話をした.まずは,場というものはどんな感じのものかを説明する.スカラー場やらgradやらを説明すれば,力学のときにやったことを思い出すかも知れない.スカラー場のgradをとるとベクトル場ができるというのは,力学でのポテンシャルと力ベクトルの関係である.電磁気でもそれに対応することをこれからやっていくわけである.まずは,クーロン力から,クーロン電場を導入する.力が合成できることから,クーロン電場も重ね合わせの原理を満たす.このことが,たくさんの点電荷がある場合や,連続分布している場合にもそれぞれの和を合成すればよいという簡単な話になる.一般的な場はそうでないこともいろいろありそうですねってな話を講義の中でする.
原理的には,ひとたび電荷分布が与えられれば,どんな位置での電場を計算することができる.もう少し実感をするために,例題を考えることにする.例題は直線上に一様に分布した電荷の作る電場を計算してみる. 連続分布する電荷の作る電場の式に,代入して積分するだけなんだが,何での最初にやってみるときは戸惑うものなので,ゆっくり式を作るところを説明した(つもり).式だけ書ければ,後は計算するだけで,えーーいと計算してみる.実際には答えを示すだけだった?そうでもないか.最後に極限をとりながら,出てきた答えを眺めてみる.
来週はこのクーロン電場が示す一般的な性質についてお話する予定.
- 水素原子の電気的中性のずれの上限を評価せよ.
- 直線電荷の作る電荷の計算をフォローせよ.
- 直線電荷の長さlの0と無限大の2つの極限を調べよ.
- 直線上に一様に分布する電荷って,どうやってつくるのか?考えよ.
あんまり質問が出ないなー.盛り上がってくるにはもう少し時間がいるのだろうか.
- その積分の仕方は?テクニックとしてすぐにわかる方法はあるか?
ない.おそらく.
- δεのεって,eのこと?
そうです.そのとおりです.ノートでもごちゃごちゃになっていました.こういうのは講義の中でも指摘してくれていいんですよ.
- ネットのレジュメを授業前に公開してほしい.
理由は?
まだ要望がよくわかっていないです.配布物でしょうか.それともこのページ自体でしょうか.もしもこのページのことならば,それは無理です.これは講義の反省を元に書かれています.話したことを思い出しながら,書いているので,事前には書けませんね. もしも見たければ昨年度のものを見るのが一つの手かも知れません.でも,昨年度と全く同じ講義をする程,落ちていないので,完全に同じではないと思います.「講義ノート」かなー.それは公開しない主義(今のところ)です.