先週クーロン場を導入したので,今週は電荷が作る電場の一般的な性質を議論する.本来ならば,幾つかの例題を眺めながら,なんとなくガウスの法則を気づいてみるのがよいのだろう(と個人的には思っている)が,時間が稼ぐためにここでは飛ばして,ガウスの法則を与えることからはじめる.ガウスの法則がどんな意味を持っているかはまずは証明(クーロンの法則からの導出)をしてみる.そのためには立体角を使うのが一番簡単だと思うので,立体角の説明からする.
見掛けの大きさをどのように定量化するかが立体角のナイーブな考え方なので,そこから定義を与える.それだけではちょっと寂しいので球殻が内部に作る電場はないことを立体角を使って示してみる.これは力学の時に,例えば地球の場合,観測位置より外側の球殻からくる万有引力はないことと同じ問題である(ガウスの法則の特別な場合だが,後でガウスの法則を味わう時の伏線のつもりでもある.).この問題が簡単にできなかったので,ニュートンは論文の発表を遅らせたという逸話もある.しかし,立体角を使えば簡単に示すことができる.どうでしょうか?最後のところで,こことここがキャンセルするから...というのはちょっと曖昧に話してみました.ちゃんと理解してくださいね.
次にガウスの法則の証明をする.重ね合わせの原理があるので,点電荷の場合を示せば,後は重ね合わせの原理を使えばたくさん電荷があっても,電荷分布していても拡張はできる.そこで,点電荷の場合にガウスの法則の左辺からどんどん(といっても数行)式変形していけば右辺が出てくる.クーロンの逆自乗則と幾何学の性質がきれいにつりあっているのがこの関係式だと思える..何度もこの式を見ていれば段々当り前の式になってくるが,最初に見ると面食らうかもしれない.右辺と左辺で積分している領域が違ったりしているしね.それぞれ,何を意味しているかをゆっくり復習してみたつもり.この証明では「任意の閉曲面」というのは暗に電荷が内部にあることを使っていたようなところがある.もちろん,電荷の外側に閉曲面を考えても正しい.その場合はどのような議論になるかを考えみて欲しい.
次回はガウスの法則を使って何が議論できるかということを話してみたい.新しい法則が見つかるときはいろんな場合があるだろう.たくさんの状況証拠が集まってきて,どうもそんなことが成り立っているらしい.うーん,いけてるかもー,というレベルの法則から,これとこれが成り立てばこれが成り立つべきだとする法則もあるし,どちらも混ざったような状況もあるだろう.ガウスの法則はどうだったかは私はよく知らない.ただ,今日の話し方だと,クーロンの法則が成り立てばガウスの法則は成り立つという関係になっている.では,ガウスの法則を語ることで何かしらうれしいことがあるだろうか.それが無ければわざわざガウスの法則なんて名前をつけるほどのことではない.そんな話しは来週できるだろうかね.
先週の計算ノートと,おまけと,それからレポート問題(PDFファイル.59KB).
レポートを出したので,あまりだしませんでした.それでも...
- 配ったプリントに間違いはないかチェック.
- 点電荷の外側に閉曲面を作ったとする.ガウスの法則の右辺は0で,当然左辺も0である.そのことは左辺だけをみてもわかるか?点電荷があるので,電場がゼロであることはないし,いつでも被積分関数(電場の閉曲面の法線ベクトル方向の成分)がゼロであるとは限らない.積分の結果がゼロであることを示さないといけない.どうする.
今日くらいの内容になると,質問もどどーんと来ますね.
- 法線ベクトルの方向はどっち向きか?
法線ベクトルは閉曲面の外向けを正にとると話しをしました.しかし,それ以前に立体角を導入するときにも法線ベクトルは出てきていて,面が閉じているのか閉じていないのかわからないところで「どうする?」というのが質問でした.そうですね.そういう状況では不定性は出てきます.ただ,ガウスの法則のように閉じた領域から電場の湧き出す量が議論したい場合,つまり面に対して積分したときの量が大事になる場合が多いです.そのときは出て行く方向を正にとるか,入ってくる方向を正にとるかは「一貫して」決めておけばよいです.ウネウネになった局面だと出たり入ったりするわけだが,積分したときには決まった結果が出てくるようにきめておけばよいのです.
- xとnのなす角は,dSとdS1のなす角と同じ?
これも立体角のところ.角度を導入したのは,dSとdS1のなす角なんだけど,気づいたら,xとnのなす角として使っていた.えーと,二つは同じだっけ?というのが質問. nとdsの関係は垂直,xとdS1の関係は垂直.だから...ですね.もっと上手な図を書いておけば混乱はなかったかもしれません.
- dS1/dS=cosψ.逆じゃない?
面積要素等の微小な量を板書するときは,なんとなく大きく書きづらいのですが,そのことがこの問題を生じさせてしまっている気がします.微小な面積要素dSを観測点を中心とした球面上に射影したものをdS1としました.なので,どこが直角かと言えば,そこですよね.って,文章じゃ説明できません.
- 球殻の内部の任意の点で電場(重力)が0になることを示すとき,こことここがキャンセルするって本当?図を見るととってもそうは見えない.
はははー.図が悪かったですね. しかも,説明をサボっています.「キャンセルする面積要素の組が必ず存在する」のだから,キャンセルするのだって,とても回りくどい説明です.どこがキャンセルするのかをちゃんと考えて欲しいからです.頑張ってみましょう.もしもわからなかったら,もちろん教えますけど.
- 最後の宿題の答えは.こんな感じ.
上の質問2について,終了後に解答を説明してくれる学生がいました. こんな感じ.まず問題とする閉曲面に接するように別の閉曲面を考える.それは点電荷を取り囲むようにする.もしも合体することができれば,大きな閉曲面にはガウスの法則が成り立つ.ってことは,切り離せば問題にしている閉曲面が囲む方は右辺がゼロになるはず.こんな解答でいいのかな.合体はしてもいいのかな...が質問でした.まず,合体はよいです.それぞれの面で法線ベクトルは逆(面が逆向いている)なので,接している部分の積分の寄与はありません.よいと思いますよと答えました.しかし,よく考えてみると,左辺を変形,変形,変形していくと,ゼロがでるかというのが上で要求していることで,その解答は実は途中でガウスの法則を使って,(大きな閉曲面について)左辺から右辺に移っていますね.なので,ちょっとずるいかな.まあ,でも,いろいろ考えてみるのは楽しいことです.
- 投票用紙の裏より...
- クリスマスレクチャーが気になる.
私も気にしています.今回の講義のシリーズは14回あります.普通は13回だと思うので,一回余計にあるわけです.そこで,何か肩のこらない電磁気の講義をやりたいと思っています.でも,12月はいろいろ忙しいのでネタを作っている時間はないかもしれません.
- 太田浩一のWebページにリンクをはってくれれば毎日見ます.
すごい太田ファンがいるもんです.
- 先生頑張ってて好きです.
当然講義は頑張っています.今日は途中でのどがいかれた...