第8回のおさらい

今日のおしながき
  1. 静電場の世界
    1. 静電気のエネルギー
      • 電荷のエネルギーから電場のエネルギーへ
      • 球殻電荷の例
  2. 電流
    1. 電荷の保存と連続の方程式
    2. おまけ:ホール効果
今日のまとめと反省

最初に静電気のエネルギーを議論する.既に静電ポテンシャルは導入してあるので,エネルギーを考えるのは力学のノリですぐにできるのだが,ここでは最終的に電場のエネルギーまでもっていきたい.まず,電荷が二つある系についてのエネルギーを考える.一つ,二つと順に無限遠から運んで来る仕事を計算してみる.それができれば多数の電荷の場合,電荷が分布している場合への拡張は自然にできる.最後の標識から片方の電荷密度はそのポテンシャルで書くことができる.半分は「場」で書くことができた.もう一つの電荷密度も「場」で書いてみたい.そこで,ガウスの法則をとおして,ポテンシャルで表してみる.そうすると,少し難しげな式になる.これを部分積分をして,一つの項をガウスの定理で面積分にして,...と考えると,結局最後のE2を全空間で積分する式が出てくる.これは第二回講義でLC回路のCに貯るエネルギーの形から示唆されていた一般的な形をしている.おおー,電場があるとエネルギーがあるのかって思えるだろうか.

次に,具体的な例として,一様に電荷分布した球のエネルギーを求めてみる.これはたしかその昔トムソンの原子模型と呼ばれているものか(な?).このエネルギーを違った方法で求めてみる.ひとつ目は,球殻をドンドン作るための仕事を計算する.ほれほれと計算してみて,ヘンな3/5の因子を出しておく.さて,これで終わりと言えば終わりなんだが,せっかくなので,電場のエネルギーも計算してみた.まずは,ガウスの法則を使って,電場を求めてみて,それを積分してみる.先程と同じ答えになるはずである.計算の詳細は宿題に残しておく.ここでやっていることは理解できたかなー.エネルギーはどうやっても計算できるのだが,私は二番目の方が好きである.前者はその電荷を構成する仕事を計算するのだが,現状だけをみるのではなくて,過去を振り返っているようでいやなのである.今,その電荷が作っている電場だけを見て全てが理解できるはずで,その方が気持ちが良い.まあ,好嫌いの話はしても仕方がない.

さて,これで静電場の世界は終了する.次に,静磁場の世界をのぞいてみたいが,その準備として電荷を動かしてみる.それが電流である.まず,電流と電流密度を導入する.それは電荷の変化なので,電荷密度と関係しているはずである.その関係式を求めてみよう.ある閉曲面から出て行く電流を見てみると,ガウスの定理を使うことでそこで囲まれた体積でのdiv電流密度の積分の形で表すことができる.一方で,それはその体積中での電荷の変化分に等しいというのが,電荷密度と電流密度を結びつける式で,これは連続の方程式と呼ばれている.この背景には電荷は不変であることを仮定しいてる.どこかで消滅して,どこかでわいて来ることはないわけである.これは保存則のある量に一般的に成り立つ式である.考えていることは当たり前だけど,式でそれを表すというのはこういうことだって感じです(??).

ここで残り時間が20分になっている.本当はオームの法則をしてから,ホール効果の話に行きたかったが,その時間は明らかになくなっている.だが,今日話したいのはわけあって「ホール効果」なので,オームの法則はすっとばす.また来週話すことにする.すぐ前で,電流がながれたので,電流に垂直にかけた磁場中で電流を流したときに何がおきるかを考える.そうすると,電流と磁場の両方に垂直な方向に電位差が発生する.これがホール効果である.そのホール電圧を計ることで,電流のキャリアの符号とその密度を知ることができるのが,ホール効果の偉いところである.駆け足で上手いところをゆっくり話せなかったが,ホール係数のところまで話す.さて,どうしてこの話がしたかったかというと,今日話したホール効果よりももっと派手な量子ホール効果を発見し,その研究でノーベル賞をとられたフォン・クリッチング博士が来週駒場で講演会をするそうで,その宣伝をしたかったのである.VH-B曲線を書くと,今日の話だと直線的になりそうである(必ずしもそうではない)が,そこがジグザク的に大きくなるのが量子ホール効果の特徴で,驚くべきはそのジグザクのピッチがミクロな電子の電荷で決まっていることが実験的に発見されたことである.まあ,ここらへんの面白いところは私なんかが話すよりもノーベル賞学者の話しを聞く方が絶対によい.興味があれば是非遊びにいってみて下さい.

今週の配り物:
なし
今週の宿題:
今日もちょっと宿題を出す.
  1. 一様に電荷分布する球の作る電場をガウスの法則を使ってもとめてみよう.
  2. その電場を使って,エネルギーを計算してみよう.
  3. 平行平板コンデンサーのエネルギーを二種類の方法を使って求めてみよう.
今日の質問:
それでどうしてキャリアの符号がわかるのか?

最後にぶっとばしたホール効果のところ.いやー,この質問で昨晩の苦労が報われた気がしました.説明が悪かったけど,ちゃんと興味を引いた学生がいたのはうれしいかぎりです.ゆっくりと説明しなおしました.電流が流れているときに受けるローレンツ力はキャリアの符号に依らす一方向です.そこがミソで,端に貯った電荷の符号によって電位差の符号が反対であることからキャリアの正体が見破れるのです.そうすると,導体中で流れるキャリアは普通は電子なので,ほとんど負の電荷なわけだが,例えばp型半導体では電子の抜け穴(ホール)の方,つまり正電荷が動いている.

突然,電荷密度が出てきた??

電荷の連続の方程式を出すときの話し.電流密度でわきだし量を求めておいて,「一方で」電荷の変化分をみようとしたわけだが,その「一方で」が強調しなかったために,混乱を招いたようだ.

宿題の答えをWEBででも公開してほしい.

たしかに,このシリーズの講義では宿題と称するものを多めに出しています.講義では比較的抽象的な話しであるとか,考え方,その動機付けに重きを置いて話しています.実際に計算でもしてみようとすると,より「わかった気になれる」はずで,その例題を宿題にしています.でも,その解答は見てみたいというのが,上の主張ですよね.わかります.前向きに検討しておきます.まあ,みんなが反応するのを待っていたところがあるんですよ.でも,みなさんが解答を作って来てくれるととても助かるんだけどなー.それは私のわがままです.

レポートの問題2の...

電位を計算すると,あるところで電位が飛んでしまうように見えるとのことでした.その疑問は電位の基準点を共通にしていないことから生まれているようでした.詳しいことはここでは書きません.また解答例を配るときにでも...

レポートの問題1,ゼロにならない...

困惑しているようでした.うまくいかないときに,その原因がわかればいいのですが,なかなかできないこともあります.ただ,ちゃんとうまくいかないことが認識しているので,質問に来ても意味があります.今日は答えは指摘しませんでしたが,間違っているところを指摘しておきました.何かできそうとのことでしたし...

今日の雑談と反省:

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