トップ 差分 一覧 Farm ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

今日の一言/2013-1-1

新年の一言--学問のすすめ--

あけましておめでとうございます.駒場に移ってきて10年が過ぎました.東京大学,そして駒場がどこに向かおうとしているのか混沌とした状況の中で,自分自身の教員としての在り方も考えるべき時期に来ています.いや,もうとっくにやってきていたのに真剣に考えていなかっただけかもしれません.東京大学発信の昨今の学部教育に関する話題は,どれも従来型の教育システムの否定の元に議論が展開されているように思います.私はそこには違和感を常に持っている旧来型人間なのでしょう.大学には時代を超越したあるべき姿があるのだと,割と真剣に考えています.それは学生さんも含めて作り上げる文化なのですが,それは受け入れられないということかもしれません.

さて,駒場にいながらして教養に欠ける私なのですが,最近また一つ勉強したことがあります.「天は人の上に人をつくらず,人の下に人を作らず」とは福沢諭吉の学問のススメの一節だと小学生のころに習いました.しかし,よく考えてみるとこのような平等をうたった文言がどうして学問のススメなのかはよくわかっていませんでした,つい先日まで.学問の権利は平等に開かれている...程度かと.しかし,このくだりには「...といへり」と続きがあり,これは福沢の言葉ではないことが書かれているとのことです.ある説によれば,平等社会をうたっても,格差が生じるのが現実だと認識し,格差の差を埋めるのが「学問」だとして,学問をススメているとのことです.これが本当だとすると,「学問のススメ」の意味はある意味で現実主義的で,社会啓蒙としての価値は素晴らしくても,おおよそ大学の価値を語っているとは思えないです.また真面目に読まないと行けない本が一冊増えました.我々大学教員は別の意味の「学問のすすめ」を説かないといけないと思っています.それは「タフ」な何かかもしれませんが,そうでないのかもしれません.

今年もどうぞよろしく.

2013年元旦

福島孝治

[ページのアクセス数: 0224537]

最終更新時間:2013年01月02日 14時58分33秒