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大学院・統計力学2008おさらい2

第2回おさらい

今日のおしながき

  • 1 相転移と臨界現象の基本
    • 1-3 臨界現象
  • 2 Weissの平均場理論
    • 2-1 Weissの分子場理論
    • 2-2 平均場理論
    • 2-3 変分法

今日のまとめと反省

まずは,前回残してしまった臨界現象についての基本的なことがらをまとめる.二次転移の前駆現象としてのゆらぎの増大から,熱力学量の特異性の出現とその特徴としての臨界指数をまとめる.さらにその臨界指数が普遍性の指標になっていることを概観する.これらは具体的な問題で示さないと気持ちは昂ぶらないだろうから,また後で説明してみたい.

今日はWeissの平均場理論の話をすることがメインテーマ.今日の文献は,

P. Weiss, J de Physic 6(1907) 667. 

である.これは当然?Heisenbergの交換相互作用の仕事1928よりも20年も前であることなので,いわゆるHeisenberg模型の近似理論として出てきたわけではなく,強磁性相転移を議論しようとしいてる.だから,ファンデルワールス理論のように(非自明な)状態方程式を書いて相転移を理解しようとしている.元はLangevinの双極子の配向理論の外部場に相当するところをえいやーと分子場に置き換えることで理論は始まる.そこからの帰結を簡単にまとめて,普通はWeissの理論の欠陥を指摘することが多いのだろうけどあえて,その重要なことがらをまとめてみた.そこで普遍性と個別性の典型的な現れ方をみることができる.当然不満なところは沢山あるわけだが,ひとつは分子場の起源であり,もうひとつは転移温度近傍での実験との不一致である.これらは数年後,数十年後に解決をみることになるのは物理のえらいところだろう.前者からHeisenbergの理論につながり,協力現象としての認識につながるわけなので,個人的には興味深いところである.

その後で,交換相互作用からはじまって,そのハミルトニアンを分子場でおきかえることで,一体問題に帰着されて,相転移が議論出来る様子を概観する.ゆらぎを無視することを共分散がないと言ってみたが,必ずしも全てがクリアにとおるわけではなかった.が,ただ置き換えるよりはちょっとはましかな.その後で変分法的な見方でも同じようにできることを見てみようとしてタイムアップ.当然TAPなどにはたどり着かずに,ちょっと反省(下へ).

今日の宿題

  • Langevin理論を見てみる.N個のスピンが磁場と相互作用している模型(H = -\mu\sum_i \vec{H}\cdot\vec{M}_i )の統計力学を考えよ.ただし,\vec{M}は長さが1の三次元空間に定義されるベクトルとする.
  • 平均場理論でのself-consistent eqを解いて,磁化mの温度依存性の概観をグラフに描け.特に,転移温度現象と絶対零度での振舞を求めよ.
  • 平均場理論での,比熱と磁化率を求めよ.
  • 臨界指数を求めよ.
  • 確率変数Xに対して,任意のふたつの確率分布P(X),Q(X)があるとする.このとき,\sum_{X}Q(X)\log(\frac{Q}{P})は非負であることを示せ.

今日の質問

平均場近似しているときにはスピンの離散性が効いているのでは...

からはじまって,いろいろとつつかれる.多くのことが絡まっているようで,ほどきつつ答えたつもり.イジングスピンでなかったらどうなるかというもは自然な疑問で,よくあるのはガウス模型.だけど,指摘されたのは一様分布.考えてみれば平均場近似した分布関数の事前分布に何をもってくるかという話になっていて,今は±1のδ関数にしたが,そこを一様分布にかえても言い訳である.ちょっと計算すると,相転移は出てこない.というか,自己無燈着方程式が意味のある解をもっていないようである.まだ意味はわかっていない.直観的にはゼロにつぶれるかとおもったけど,どうもそうではないらしい.

今日の雑談

  • 今日の投票数は, 27でした.今日は目算しましたが,ほとんどただしいと思います.講義が始まるときにはがたっと減ったような気がしたけど,とりあえず増えていてよかった.
  • 今日は反省すべき点が多い.本当は一回読み切り講義を目指していたのだが,すでに二回目で挫折.講義ノートを作ると,どうしても概論的にうまくまとめることができなくて,ゆっくり話すモードに突入してしまう.結局そういうのが好きなんだということだ.けど,今日のはどっちつかずになってしまって,結局どっちにもストレスの溜る講義になってしまったと後悔.久々にどっぷりと落ち込むことになった.来週はとりあえず一つの区切りにして,次の話題にいきたいところだ.
  • TAP方程式やるって前回のページに書いてありました...とつっこまれる.確かにそのとおりでしたが,全然そんなところまで行かなかった.変分法もまだ変分できるところまで行かなかった.来週はそこの話をして,Bethe-Peierls理論の説明だな.
  • そもそも平均場模型とはどんな模型のことなのか?と,情報関係の先生と議論になったのは先週の金曜日.確かに物理屋はこの模型の定義をいい加減にしているということだった.無限レンジ模型でいいのではないかと思うのだが,必ずしも物理屋はそれだけに使っていないということだった.平均場方程式が厳密になるような模型のことだと言ったら,だから物理屋はいい加減で困ると...まあ,物理屋にとっては平均場は通り過ぎる第一歩なんで,そこでうろちょろしてしてなくて,愛もないということだろう.ただ,歴史的には大事な価値があって,平均場を組めるということは秩序変数が何かをわかっているわけなので,いろんな分野で平均場理論が出来た状況を見てみるのは面白いかもしれない.加藤先生に教えてもらった情報では,超伝導で協力現象の認識に至ったのはLondon理論ではないかということだったが,それは192x年くらいで,GL理論は1950年.そこには少しギャップはあった.世界情勢の問題もあったかもしれないが,BCSは1957年なので,平均場理論を作るにはそれなりに苦労があったということか.

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最終更新時間:2008年04月21日 22時44分33秒