大学院・統計力学2008おさらい3
第3回おさらい
今日のおしながき
- 2 Weissの平均場理論
- 2-3 変分法
- 2-4 TAP方程式
今日のまとめと反省
平均場方程式の導出の仕方はいろいろあるが,ここでは変分法を最後に取り上げる.前回の最後のKLダイバージェンスを導入したので,それを使って変分法を構成する.もっとも,自由エネルギーの変分原理から入ってももちろん同じものである.まずKL最小化が自由エネルギー最小化と同じことを示す.ここでKLの非対称な定義のうまい方をとっていることがわかる.ほれほれ計算して,最後に平均場方程式を示す.最後の変形がくるっとしていてなんとなくかっこよい.
変分法の利点は,試行関数は自分の好きに決められることで,ベーテ近似も2体の相関まで取り入れた試行関数を用いた変分法として書くことが出来る.このベーテ近似を磁性の問題に最初に応用したのは,
P.R.Weiss, Physical Review 74, (1948) 1493. "The application of the Bethe-Peierls Mehtod to Ferromagnetism"
である.ベーテ近似の論文は, Bethe 1935, Peierls 1936なので,少し時間がかかったようだが,ここには歴史的な問題があった.とにかく,これはいわゆるBethe-Peierls-Weiss理論と呼ばれる論文である.先のWeissから40年が経過している.と思っていたら,このWeissは全く関係ない別人らしい.PierreとPeterらしい.強磁性理論の非常に初期のレビューとして,
J.H. Van Vleck, Review of Modern Physics, 17 (1945) 27, "A Survey of the Theory of Ferromagnetism"
を挙げておく.講義ではこの辺りのヨタ話をして,Bethe近似の詳細は省略する.試行関数は与えておいたので,後はちょっとめんどくさい計算をすればよい.
最後に,もうちょっとモダンなところに帰ってきて,TAP方程式を導出してみる.TAP方程式はSG理論の基礎的方程式の一つだが,今日の文脈ではWeissの平均場理論からの補正項として求めてみる.真の自由エネルギーをWeissの平均場自由エネルギーからの展開を試みる.その最初の補正項からTAP自由エネルギーがでてくる.それを自由エネルギーと思った変分条件からTAP方程式がでてくる.それがオンサガーの反跳項と呼ばれる項を与える.平均場強磁性に問題ではこの項はオーダーとして必要ないことが分かる.スピングラスの場合はそうではないというわけである.最近の情報統計力学ではこの項が役に立つというわけであるが,その導出は今日示したように非常に自然である.実はTAPの論文
D. J. Thouless, P. W. Anderson, R. G. Palmer, Philosophical Magazine 35 (1977) 593, Solution of 'Solvable model of a spin glass'
は読みにくいと評判であって,Plefkaがわかりやすいとは高山先生の本にも書かれている.でもまあ基本的には今日みたいことをやっているのが,TAP論文である.
今日の宿題
- ベーテ近似を変分法で導出しよう.
今日の質問
あんまり質問がでないのはよくない講義ですね.講義の後で質問されて,TAP方程式の周辺の最近の状況を議論しました.
今日の雑談
- 今日の投票数は, 24でした.微減です.
今回のWEB投票
- 今日の講義の出来は?
項目 | 得票数 |
---|---|
よい | 106票 - 投票 |
ふつう | 104票 - 投票 |
ダメ | 102票 - 投票 |
- 思いのほか投票数がある...
今回の一行コメント
[ページのアクセス数: 0000577]
[ページのアクセス数: 0224643]
最終更新時間:2008年05月11日 19時24分19秒