トップ 差分 一覧 Farm ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

統計物理学おさらい7

第7回おさらい

今日のおしながき

  • 3 統計力学の基本的な応用
    • 3-1 理想気体のつづき
    • 3-2 二準位系

今日のまとめと反省

先週,理想気体の状態方程式やベルヌーイの式を出して,熱力学量とミクロな力学量が関係していることを見てきた.今回はまずマクスウェルの速度分布を見てみることからはじめた.カノニカル分布そのまんまなのだが,速度(大きさ)の分布を出してみる.これは極座標で書くのが簡単で角度方向の積分をすることで,最後のマクスウェル分布が出てくる.分布が最大になる速度が一つだけある分布である.その値(あるいは分布の平均値)から典型的な速度を見積もることが出来る.この式は実はエネルギー等分配の式に他ならない.計算をする前にこのことに気付くことはできただろうか?さて,この平均的な速度がどのくらいかは電卓を一度叩いておこう.ボルツマン定数と温度と気体分子の質量で書けている.練習問題として,重力ポテンシャルがあると今までの話がどうなるかを考察してみよう.黒板にはおおざっぱな問題を紹介しただけだったが,下の添付ファイルにはもう少し細かな設問まで作ってある.

このまま理想気体の話を終わりそうになったけど,ひとつだけ忘れていたことがあった.N!の話である.これがどうして必要なのかをまず説明しておいた.これは統計力学の体系を考える上で意味のあることだと考える.たまに統計力学は熱力学よりもエライという雰囲気の本を見掛けるが,ここでの話を理解することで位置づけを考えることはできるだろう.必要な理由はわかったとしても,どうしてそれを入れてもよいかは別の問題であろう.それには古典力学では完全に答えられない.そのあたりの状況をゆっくりと説明した.統計力学の当時に思いを馳せれば,より興味深い話題であろう.ギブスのパラドックスと言われる話題である.が,まあ私にはそんなにうまく話す技量がなかったかな.でも,もうすでに完成している学問体系を淡々と伝授するような講義にはしていないつもりである.どうだろうか.もしも,自分一人が離れ小島で研究していても,やはり講義でやったのと同じような体系が作れるように...これが私の目標である.

最後にちょっと残った時間で,次の話題としての二準位系の導入をした.問題設定と状況の説明をした.ここはもうちょっと時間をかけても,というよりしっかり強調した方がよかったかな.統計力学でのモデル化とは結局何をすることなのかというミニマルな説明になっていたと思う.残った時間があまり無かったが,ほれほれと分配関数と自由エネルギー,そして,内部エネルギーの期待値まで計算した.次回はその意味をゆっくりと考えてみたい.元気がある人は,比熱,エントロピー等を計算しておくとよい.

今日の宿題

  • 講義の途中で,幾つか式変形をサボったところがあるので,「チェック」してみてください.
  • 窒素分子の常温における平均速度を気体分子運動論の結果,理想気体のカノニカル分布の結果を用いて評価せよ.それは妥当な大きさか?
  • 理想気体に重力ポテンシャルを考慮したときの統計力学的な性質を議論せよ.
  • それから,講義で話していた練習問題の続き: note-20051118.pdf(945)
  • (2005.12.01追記) : note-20051201.pdf(121)

配布するファイル

今回はなし.

今日の質問

前回プリントのポアソン分布の規格化定数はやっぱヘンじゃない?

ポアソン分布の練習問題2の解答に関してです.ヘンでした.ヘンでした.この前の講義の後で指摘をされた瞬間は,「まずいなー,まちがってるなー.」と思ったのですが,今朝あらためてプリント見直してみると,直したのもまずいよなー.えーと,正解は,n^*が十分大きい状況を考えると,積分の下限は-∞と思ってもよいということです.そこのずれはどの程度かは考察することができます.

練習問題6のエントロピーって,温度はどうなってるの? 練習問題の独立な系A,B,Cの温度は?

練習問題を解こうとして困惑したようでした.まず最初の問題は温度はありません.コイン投げの問題なので,場合の数が分ればボルツマンのエントロピーは形式的に計算できます.それをやってみようということ.それから表を向く確率をpとしたときに,エントロピーを最大にするpはいくつかな?ちなみにその学生さんは即答でした.

次の問題では,ほぼ独立というのが愛昧な表現でわかりにくいということで,具体的には温度はどうなっているのかということでした.図に書いて説明しました.非常に大きな熱浴にそれぞれ系A,B,Cがくっついています.それぞれの系は熱浴とは弱く結合していて,AーB間の相互作用等はないということです.

カノニカル分布を出すときに,どうしてlogとるの?

確かにログを取るのは作為的な感じがするし,とらなければヘンな形になってしまって,確率の意味を持たせるには少々苦労しそうである.さて,ここでの議論は具体的なW(E)の形を見ないで進めている.知りたいことは,全体の分配に対して,エネルギーが少しだけ注目する系に渡したときの熱浴の分配の比を知りたいわけである.式で書くと,\frac{W_2(E-E_1)}{W_{tot}(E)}をE1の関数として求めたい.これはおはじきの問題では指数関数的であったように,多くの場合指数的になるという事実がある.ここでやったのは,それを導く方法を一つ示したにすぎないので,上の質問のような疑問がわいたのだと思う.しかし,logを取ることをしないで,もう少し一般的に話を進めることもできる.それが練習問題10の前半である.一度ゆっくりと考えてみて欲しい.

今日の投票用紙の裏より

テストは応用的なものがでるんですか?それとも証明問題ですか?

やはり試験は気になるもんですね.どっちもと答えておきます.簡単な応用例と原理に関する問題を一問づつ出す予定です.

しかし,試験まではまだしばらくあるので,試験のことなんか忘れて,どっぷりと学問してみませんか?

さっきは私語を注意してくれてありがとうございました.ときどきうるさくて講義がきけず,「ジーザス...!」てなることがあります.

そうですね.私が気になるくらいだったので,当然の対応でしょうか.ちょっと遅いくらいだったかな.反省.それからこんなコメントは真剣に話を聞いてくれているようで少々うれしいですね.

一シーズン一度はこんなことがあるので,だいぶ飽きて来ましたが,みなさんには最初かもしれないので繰り返しますと...そもそも大学の講義なんていうのは聞きに来たい人だけがくればいいわけです.それ以上でもそれ以下でもないですね.だから,この講義もできるだけ,「来ることによる余計な価値」は無くしているつもりです.例えば,出席点なんていうくだらないものは無くして,それから授業内容は公開(このページのことだけど,ここは実はちゃんと内容が伝わっていなくて,雑文だらけだな)です.それでも講義に出たいものだけが,何かの価値を求めてでるのが 大学の講義です.その神聖な場で他人の邪魔するなどという奴らは全く大学を何だと思ってるんだー.えーと,一人で盛り上がって来ました.とういうわけで,講義に関係ない雑談は全くの悪です.まあ,それ以外で,講義を聞いていてなんかおかしいと思ったことがあったら,それはその時に指摘してくれればいいし,「どうしても納得いかないなー,ちょっと表で議論しようぜ」ってモードになったら,外出て友人と議論するのは全く問題ないので,遠慮しないでドンドンやってください.

一日休むとついていけない.

そうだな.このページが役に立っていない証拠ですね.友人からノートを借りて見てみてください.それから,なんか一問くらい練習問題解いて来たついでに質問に来てくれればいいですよ.

今日の雑談

  • 今日の投票数は, 78でした.なんかすごく減って来た.

学生の期待に答えていないことのあらわれです.まずいです.ピンチ!!グラフにすると余計にまずい感じがする.

  • 今日のアンケート
 この講義は難しい?面白い?

でした.回した投票用紙の裏をスキャンしたのをそのまま乗せてみた.

左下の方に沢山あるとうれしいのだけど,右下を基本にそれから右上の方に伸びている感じですね.総じて「難しい」ということですか.難しいというのにも,気持ちのよい難しさと,全く分けのわからん難しさというのもある.大学では少々難しい方が授業料の元をとっているようで望ましいですかね.でも,落ち着いてみると,難しくて,面白くもつまらなくもないというのも,何だか悪い講義の感じがします.ううう.もうちょっと,すっきりマークが連発するような講義であるべきだということでしょうか.

  • そういえば,以前に師匠のひとりから,「福島の話は難しい.特に語りがはいると...」と指摘されたことがある.「語っていること」が難しいということだ.学生にも「板書しないところに大事なことが多く含まれているような気がする」と言われたこともある.おそらく,ばばーと喋っているところが意味不明だったりするのだろう.

[このページのアクセス数:331]

[ページのアクセス数: 0224510]

最終更新時間:2005年12月01日 20時57分42秒