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熱力学2007おさらい9

熱力学第9回おさらい

今日のおしながき

  • 熱力学第二法則
    • Clausiusの不等式
    • エントロピー

今日のまとめと反省

前回の最後にババーとClausiusの不等式の式だけ説明したが,今回はその証明を与えた.その前に問題意識を簡単にまとめておいた.それはある注目するサイクル過程が受け取る換算熱の総和に関する規則である.たくさんの熱浴との熱のやりとりを考え,その熱の収支をボス的熱浴とCarnotサイクルをして消してしまう.その時,ボス熱浴からの熱の収支と注目するサイクルの換算熱の収支が関係してくる.ここから,換算熱の総和がゼロのときには全体として,可逆サイクルになっていることがわかる.つまり,注目するサイクルも含めて可逆サイクルというわけである.残された可能性は,Kelvinの原理から換算熱の総和は負でしかありえない.そしてそのときは全体として不可逆サイクルなわけで,Carnotサイクル以外の部分といえば注目するサイクルが不可逆になってることになる.全体をまとめると,あるサイクルの換算熱の収支は正でありえなくて,可逆ならば0,不可逆ならば負になることが分かった.これがClausiusの不等式である.最後に連続版の積分表示も示しておく.

ここで可逆なサイクルについて,換算熱の総和がゼロであることに注目する.これは力学でならった「保存力」の性質に似てないか.確かに議論はCarnotサイクルの性質として,普遍的な熱効率が得られて,そのときに換算熱は保存したまま低温の熱源に渡していたことから始まった.保存力があるならポテンシャルが定義できる.つまり,力学的な状態に対して状態の関数を考えることができた.熱力学でもこの換算熱の保存性から,一つ状態量を定義...したくなる.これがエントロピーだというわけである.後は,力学でやった議論を同様にやってみる.可逆なサイクルを考えて,そのサイクル過程の適当な2つの状態への向かう方向と戻る方向に分ける.この過程にそって換算熱の積分を考えるのだが,可逆な過程は一つではないことから,結局それは過程によらないことが示される.相すると,世界の基準をひとつ決めておいて,そこからポテンシャルエネルギー,いや,エントロピーを状態の関数として定義することにする.ただし,注意しなくてはいけないのは,全ての過程は可逆であることを条件に定義していることである.もちろん,一般の不可逆過程の場合も気になるところだが,今度は行きは不可逆で,帰りは可逆で戻るサイクルにしてみる.このサイクルでは前半のClausiusの不等式の不等号の場合に相当して,不可逆過程の換算熱はエントロピー差よりも大きくなれないことが分かる.

最後に,微小変化の場合を考えたり,断熱過程や孤立系のときにエントロピーは増大することを示しておく.よくいわれるエントロピー増大則だ.これは確かに大事な帰結だが,あまりエントロピーのありがたみに触れた感じはしない.次回にはもう少し例題やその後の議論を通じて,うまみが感じられたらよいと思う.

今日の宿題

  • Clausiusの不等式を考えた系の全仕事を求めよ.

配布するファイル

今日の質問

積分表現のときの分割数

Clausiusの不等式の積分表示を示すところ.ただ単にサイクル過程を無限に分割しただけでは,えーと積分にならない...そうです.積分の分割メッシュは小さくならないと行けません.サイクル過程の"全長"を一定にしたまま,分割数を増やすことを考える必要があります.

どこの温度?

さらに,その温度はどこの温度か?というわけです.全くもっともな質問です.これは定義から,熱浴の温度であり,かつサイクルしている系の温度でもあります.ちょっと考えるのが難しいかもしれませんが,特に可逆サイクルを考えるときには同じ温度でないと困ります.そんなサイクル系が別々に分割していて断熱壁で分離されているようなことを想定します.

Cが可逆であること

今日の投票用紙の裏より

「フェルミの熱力学」よりも「熱力学の基礎」の方がわかりやすい気がします.

そうですか.それはそうかもしれません.ページ数は5倍くらい違いますからね.本質的なことは,エントロピーとしてこんなものを受け入れなさいと言われることに対して,どれくらい飲み込めるかということです.私にはそれはできません.別に歴史的経緯が大事だというわけではないですが,(最初に)測れないものの存在から議論するのはどうでしょうか.一回熱力学を勉強した後に読むと,すーと霧が晴れるような感じがするということに関しては同意します.

結局いつも時間ぎりぎりまでやってますよね....同感...

ああア.たしかにそうですね.すみません.まあ,10:30までは私の時間なので...

物理の力で涼しい生活を呼び戻してください.

それはなかなか難しいのは熱力学で学ぶことです.少なくとも何にもなしには涼しく出来ないのは,Clausiusの原理ですね.誰かに仕事をして頂かなくては...

RTを「アルト」と読むのは単なる趣味です.

そうでしたか.そんな車はありましたね.

基礎現でエントロピーとエンタルピーが出てきました.

練習問題に,こっそりエンタルピーを出してみたりしていたのですが...

今日の雑談

  • 今日の投票数は, 60でした.「福島孝治」さんが4名もいらっしゃいました.しかも左列ばかりに,さらに最前列まで...
  • あっという間に9回くらいたってしまうものですね.今日エントロピーが出てきました.どう登場させるかはいろいろ悩むところですが,今回は標準的かと思います.できるかぎりスマートにしたいと思っていて,最後まで悩んだのがClausiusの不等式.これをなくせるものならなくしてしまいたいと思っていたのですが,今回の文脈だと出来ませんでした.これをなくすとふらふらになってしまいそうだったので.その代わりに,問題意識を浮かびあがらせる作戦にしたんだが,はたしてどうだったか?上にもあったように,清水本の方がわかりやすいとコメントがありました.そうかもしれません.でも,自分が大学一年生だったら,今日のような話の方が喜ぶかな.

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最終更新時間:2007年06月22日 12時17分03秒