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熱力学2008おさらい10

第10回おさらい

今日のおしながき

  • 3 熱力学第二法則
    • 3-8 エントロピー

今日のまとめと反省

前回は換算熱の可逆過程での遷移の図を描いて終わったので,今日はここから.この図はちょうど内部エネルギーを登場させたときの図とよく似ている.そのときには断熱過程での仕事を描いていたわけだが,今度は可逆過程での換算熱というわけである.そこで内部エネルギーを登場させたように状態量を一つ定義したくなるわけである.これがエントロピーである.ある二つの状態の間を可逆過程で移動し,またもどってくることを考えると.前回のClausiusの不等式より,0になることが分かる.可逆過程はいろいろ作ることができるので,結局二つの状態を結ぶ経路に依らないある量が決まる.てきとうな原点を設定して,エントロピーを導入する.

不可逆過程についても,少しだけ議論することができて,状態AからBにいくときには可逆過程でつれていき,帰ってくるときに不可逆過程で戻ってくるとする.Clausiusの不等式からこれは負であることになり,S_B-S_A+換算熱(B→A)<0であり,BからAに移動するときの換算熱は状態AとBのエントロピー変化よりも小さいことがわかる.さらに,この不可逆過程が断熱だとすると,当然換算熱はゼロになるから,エントロピー変化は正であることがわかり,これがエントロピー増大則と言われている第二法則の別の表現になっている.断熱であるこが大事であり,宇宙全体はその外と熱のやりとりをしていないという意味で外と断熱的であるから,宇宙のエントロピーは増大すると言うことができる.

例として,熱源と熱接触により熱平衡に至る過程のエントロピー変化を求めておく.また換算熱ももとめることでこの過程が不可逆であることが示される.次の例として,理想気体のエントロピーを計算する.第一法則と第二法則,さらに理想気体の性質を使って,簡単に求めることができる.

また,エントロピーの性質として,体積一定では温度の単調関数であることが示される.ほれほれと不等式で抑えることで単調性が示される.最後のところは,比熱の正値性になるところがなんとも面白い.一回目のレポートが思い出される.そういえば正値性を示すために温度の性質を使ったが,これはClausiusの原理に関係している性質であった.

理想気体の真空膨張の議論をしようして,時間が足りないと判断して,次回に続きの解説をすることにした.そうそうエントロピーの計り方も説明しておいた方がいいかな.

今日の宿題

  • 熱接触の際の換算熱は,移行前後のエントロピー差よりも小さいことを示せ.
  • van der Waals気体のエントロピーを求めよ.

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今日の質問

今日も3時過ぎまであれこれ議論していました.指摘されることも多く,反省点も多いです.まだ,言われるとすぐに記憶を辿れるので補正もできるのだが,そのうちに思い出せなくなるのかな.

講義の前にも少しおしゃべりして,それはそれで楽しかった.

エントロピーの単調性示すときの不等式で,温度T2でわるのを忘れている.

確かにこれはまずかった.今度の講義で説明します.これは後で出てくる自由エネルギーの単調性とも関係していて大事な式であった.そもそも,次元があっていないのはちょっとまずかったです.

換算熱が経路に依らないことを示すならば,帰り道は引っくり返した方がよいのでは...

その通りです.内部エネルギーのときの話を思い出せば,AからBに行くときのエントロピー変化と換算熱の変化を比べる式になりますね.先週もその絵を描いたんで,ちょっと焦って飛ばそうとしていたのがよくなかった..

全微分の式

理想気体のエントロピーを計算するところ.これがどうして積分できるかということだが,それぞれの微係数は定数になっているので,全微分の条件をみたいしている.

熱源と接触して,熱移動する問題で示したことは,結局なんだったのか?

これは大事な質問です.今日示したことを落ち着いて考えると,まず換算熱の変化量を調べて,その後で可逆過程を考えることでエントロピー変化を求めました.それで,その大小関係を見たのだが,これはClausiusの不等式そのままなので,これは新しいことはなく,その不等式を確認したことになる.また,もし熱移動が可逆ならば等式になるはずだが,そうではないことがわかったので,この過程が不可逆だと結論したのであった.しかし,ここでのツッコミは,そもそもこれはClausiusの原理で否定されている過程で逆過程あって,そのすぐの帰結で不可逆過程であることは知っているというわけである.この指摘はもっともである.この意味では新しいことはない.ただし,第二法則から議論が進んでエントロピーを定義するに至った.全ては第二法則から出発しているのでそこと整合する議論しかできないのは当然だが,エントロピーを状態量として定義できたので,この不等式は定量的な比較が可能になっている.ここは明らかに進歩しているところである.実際に熱源の温度と固体の温度を近づけると等号になる.

上の問題で,温度を準静的に動かすときの図???

エントロピーを求めるところの温度変化の図で,可逆過程をてきとうに描くのはよいとしても,熱移動で不可逆過程のときにこの図をかくのはどうか?という指摘であった.前にもあったのだが,不可逆過程をこの平面に経路として描くのはよくないということだ.それはまったくそのとおりである.もっとぐちゃぐちゃとして,平面からはみだしているように書いた方がよかったな.

二回目のレポートの熱容量の問題は,何を要求しているのか?

これはまた後で解説を書くことにしようか...基本的には,理系の議論の仕方の練習のつもりである.理系の説明はいわゆるディベートとは本質的に異なっていて,客観的な理屈で説明されるべきものである.その感覚は理系人間は備えているべきである.まず誰よりも自分自身を説得しないといけないのだが,みなさんはそれができているだろうか?誰よりも小難しい自分を気持ちよく説得させることは結構難しい.これができれば,他人を説得することは簡単である.理系の人間とはそんなものだと私は思う.

nモルの気体

比熱の議論をnモル気体でするとどうなるかということだったが,それは状態方程式を変更して,熱容量の定義に注意すれば同じ議論になる.

逆サイクルとは...

逆サイクルとは,熱の授受と仕事のやりとりが順方向と逆むきであればそれでよいか?という質問.もうちょっと限定していて,サイクル過程の全てを逆過程で戻ってくることで,逆サイクルは定義されています.

今日の投票用紙の裏より

あれこれ

今日の雑談

  • 今日の投票数は, 95でした.いよいよ,100切りは現実のものと受け止めなければなりませんね.今日は先週よりも増えている印象だったんだけどなー.残念です.
  • 一般的に...:講義の前に学生さんと議論.「一般に」といったときに,反例を認めるか認めないかは,業界によることなんだと認識する.「一般にこれこれが成り立つ」といったときに,我々物理の業界では例外は想定しません.一般に言えることは非常に強力で,「ある問題設定の条件の元では必ず」を意味します.きっと.だから,等圧で温度変化に伴う体積変化,膨張率は「一般に」正であるとするのは間違いである...と思う.氷点近傍の水やゴムは温めると縮むので負である.とすると,それは例外だがら,やはり一般に正であるといってもよい...学生さんに反論されたのであった.それは違うと思っているのは特殊なのかな.
  • この議論で,例外かそうでないかの判断に客観性がないことが問題なのです.2つが少ないか多いかには客観的な判断はないので,それは排除したいと思うのは自然なことです.一体,いくつ例を挙げれば「一般」でなくなるのかは人によるというわけです.同じ条件,つまり熱力学の対象になる物質を議論するという条件の範囲内で一つでも反例が見付かったので,もはや「一般」ではないわけです.まあ,言葉の問題なんだけど,理系のお行儀を理解する上ではよい経験だったでしょうか.

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最終更新時間:2008年07月03日 22時59分44秒