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熱力学2010最後のおさらい

最後のおさらい

無事に期末試験は終了しました.まだ,採点できていないので,講評は書けませんが,まず試験の出題意図を概観しておきます.

0 全体として

昨年と同じような問題を出したりしていますが,誘導をつけてわかりやすくしたつもりです.レポート問題もしっかりやっていると,ゼロ点にはならない仕組みになっています.ただし,レポートをちゃんと取り組んでいないとポイントはとれないかもしれません.どれも基本的な問題ばかりで,じっくりと考えれば答えられない問題はないけど,勉強していないと答えられないだろうなーと思います.

1 Carnotサイクル

(1)Carnotサイクルについて,しっかりと聞いてみました.まずは,PV図で説明を求めました.実は、この問題,状態方程式に関する情報がないので,どんな図になるかは決まっていません.もちろん,熱力学からの制限(断熱曲線と等温曲線の傾き)はあるので,そこをやぶってはいけません.

(2)ST図.一方で,この図は普遍的です.四角が正解です.どっちむきになっているかは注意が必要です.この図は大学で熱力学を勉強しないと描けないことなので,できていてほしいです.

(3)Carnotサイクルよりも効率の悪いサイクルの不可逆性.これもレポートで出した?ような問題.典型的な考え方があるので,あまり迷うことはないと思います.どっちをひっくり返してもよいです.ロジックとしてはこのサイクルが可逆だと仮定してひっくり返す方が手数はすくない.

(4)Carnotサイクルの性質.これは覚える問題なのでつまらない.でも,Carnotサイクルの普遍的な性質なので,覚えていてほしい.もっとも,この式だけを覚えていても,何がすごいのかまったくわからない.ここから世界が広がっていることが楽しいところで,それを理解しているうちにこの式は覚えてしまうはず.符号に注意が必要.

(5)これは第一法則.高校生でも答えられる.

(6)これはエネルギー方程式だが,本来はどうやって証明しても良いのだけど,ここではCarnotサイクルから証明をもとめてみた.解き方を強制するのはちょっと悪問だけど,それを承知で出してみた.今回の期末試験では,Clausius-Clapeyronの式は出さなかったが,これをCarnotサイクルから導出する過程は講義で示した.ここでの解答もそれに非常に近い.CC関係式の代わりといった意味合いもある.さらに,しめし方は同様なので,CC関係式と同じくらいに,このエネルギー方程式も第二法則の意味も含んだ大事な式といえる.一方で,その違いを考えてみるのも面白い.実証科学としての意味は確かにちがう.

(7)ごちゃごちゃと問題文に書いたが,結局,ボイルの法則を満たす気体について,熱力学の法則から,右辺はどうなるべきかを考えようということ.(6)のエネルギー方程式に,ボイルの法則を代入してみる.そうすると、一つの微分方程式がでてきる.これを解くと,右辺のf(T)は温度の線形であることが導ける.つまり,理想気体型の状態方程式がでてくるわけである.もっとも比例係数は微分方程式の性質上,決まらない.これは気体定数であって,実験的にきめるしかない.面白いことは,熱力学の法則+ボイルの法則で,状態方程式が定数を除いて決まることである.

2 Helmholtz自由エネルギー

レポート問題で,断熱過程ではエントロピーは増大することを示してもらった.それを別の条件にしたときの,Helmholtz自由エネルギー減少則を聞いてみた.単独の問題で,少々浮いているが,レポート問題ができていれば,これもできるはずである.しかも,別の問題に自由エネルギーの定義までかいてあって,そのまま解答できるはず。。。

3 熱力学関数

(1)これもレポート問題と似ている.エンタルピーが完全な熱力学関数であることを聞いたのがレポート問題だったが,ここでももっとも基本的なU(S,V)を聞いてみた.講義でしめしたとおりである.(2)そこから出てくるMaxwell関係式をきいて、(3)U(T,V)と何がちがうのかも説明してもらった.(4)最後に,理想気体の場合の完全な熱力学関数を求めてもらった.これは理想気体の内部エネルギーとエントロピーを求めればよくて,最後にTを消去すると完成である.

4 ゴム

ゴムの問題を出してみた.ただしセットアップは全部説明したので,ゴムの問題というよりは,熱力学を自由に使いこなせるかどうかを聞いている.どの部分が特定な問題で,どの部分が普遍的なことなのかがわかっていると,あまり迷うことはない問題である.(1)第一法則+ごむの仕事(2)ヘルムホルツの自由エネルギー(3)内部エネルギーの長さ依存性がないことを示す.ちょっとここで誘導がやさしくなかったかもしれない.示す式は書いてしまったので,(1)からその式を計算して,(2)からMaxwell関係式をつかって,張力の式をかいて,与えられた状態方程式を代入すればゼロである.(4)伸ばすとエントロピーは減ることを示す.これを先に聞いた方がよかった.状態方程式からすぐに示せる.(5)断熱的にひっぱると熱くなることをしめす.ヒントを与えたので,式を書き換えて,あとは熱容量が正であることを説明すれば,おわる.

簡単そうに説明してしまったけど,こんだけの問題を90分でやりきるのは,それなりに理解度が高くないとできないだろうと思う.得点分布は広いだろうなーと,試験監督をしていて感じた.


まずはここまで.(2010.9.4)


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最終更新時間:2010年09月04日 22時47分26秒