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物理学B金曜2006おさらい14

おまけ

今日のおしながき

  • 念じれば振れるコインのほぼ完全解説
    • 実演
    • 振り子のモデル化
    • エネルギーは保存する
    • 念力の効果

今日のまとめと反省

今日は力学の本当に最終回の講義であった.講義日程の都合上,木曜のクラスにはこの14回目がない.試験をフェアにするためにこの回の内容は試験には関係ないとした.つまり,私が好きなことを好きなように話す回だったわけだ.講義の内容以外のことは,また下の方に書いておくことにして...

早速講義を始めるが,まずは実演である.今日のおもちゃはこれ↓.

念じたコインだけが揺れるおもちゃで,実は理屈がわかっていない子供でも,真剣に念じると揺れるからちょっと不思議である.さて,この現象を力学の言葉で全てあらわしてみたい.まずは,揺れているコインの運動を記述するために振り子のモデル化をする.重さの無視でき,長さの変わらず,さらにたわまない糸にコインをぶら下げて,ぶらぶらさせる.この運動方程式を書いてみたい.少し考えてみると,この運動方程式を求める一つの方法は先週の角運動量を考えることである.糸のぶら下がっている支点の回りの角運動量を求めて,その時間変化が力のモーメントで表される(先週求めた角運動量の運動方程式)式を使う.力のモーメントも結局接線成分しか関係ないことがわかって,運動方程式が求まる.

これを解きたいが,一般的に解くのはちょっと面倒なので,コインの振り子の振動は大きくない(微小振動)として,運動方程式を近似してみる.そうすると,ばねの運動方程式と全く同じ形になっている.同じ運動方程式は同じ運動を表す.これは当り前のようだが,一度は認識しておいた方がよい.式が同じなのだから,同じなのだが,それを導出してくる過程やそもそも考えている問題を思い出してみると,こんなこととこんなことが同じなのかー!と驚くこともある.これは数学を使う一つのメリットだと思える.全然ちがう2つの現象がまったく同じ運動を示すとすると驚かないだろうか.もっとも,今回の話しは,よく考えるとどちらも振動運動しているようにみえるわけだが...

さて,運動方程式も解けたので,エネルギーがどうなっているかを考える.ばねのときにも示したが,今度は微小振動でない条件でも力学的エネルギーが保存していることを示した.そうすると,運動エネルギーは何かしら回転のエネルギーのようにも見える.それからポテンシャルエネルギーも求まる.微小振動では確かにばねのポテンシャルと一致している.振り子の力学的エネルギーは保存するわけである.これはまずい.これが保存していると,延々と振り子は振れたままであって,どんどん振幅が大きくなることはない.なんとかして,外からエネルギーを注入しないといけないわけである.

それが念力である.

いや,当然,念力ではない.念力のやっていることは,手が微妙に振動をしていて,コインに慣性力を与えているのである.もちろん,コインを指さして念を送っている方ではなくて,上の棒を持っている方である.その効果を角振動数ωの力として,先の運動方程式に加えて解いてみる.これは非斉次線形微分方程式である.まずは特解を求めて,...と一連の手順を踏んで最終的に解を求める.さて,この解が念じるコインの解を表しているだろうか?ぱっとみたところ,振幅が時間に依存して大きくなるようなところは内容に思える.しかし,注意してみると,ちょうど手の振動数ωと振り子の固有の振動数が同じになっているところが,ゼロ割るゼロになっていて危険である.そう,そこを注意して会席すると時間に比例して,振幅が大きくなる解が出てくるわけである.なるほど.これが共鳴と呼ばれる現象である.黒板にちょろちょろと描いた振幅の時間依存性のもう少しマシな図を張り付けます.

最後にこの解の性質として,

  1. 手の振動数と振り子の振動数が同じときに,「振れる」.つまり,念じた奴だけが振れるのである.上のグラフで手の振動数が0.8倍の振り子の固有振動の例も示した.念じていない奴は振れないのである.
  2. 手の振動の振幅は「とても小さくてもよい」.これは効率のよいエネルギー注入法である.
  3. 振幅は時間に比例する.

とまとめておいて,最後におもちゃではなくて,いろんな実用例の話しを幾つかまとめておいた.電子レンジの話しとか,側溝におちた車を助ける方法とか...これらは冬学期の「振動・波動」のメインテーマである.是非,また物理の勉強を続けてほしいと話して最終回を終わる.お疲れさまでした.

今日の宿題

  • 振り子のエネルギーを吸い取るためにはどうすればよいかを考えよ.

今日の質問

微小振動のよしあし

振動を小さいとしたときに,どの位よいのかがわからないということだった.かなりまえにテーラー展開のプリントを配ったと思う.そこで,どの程度よいかわるいかのデモのグラフを載せておいた.一度それをみて,考えておいて欲しい.

今日の雑談

  • 今日の投票数は, 42でした.試験には出ないという状況にしてどのくらい学生が集まってくれるかは不安でしたが,そこそこ集まってくれました.木曜クラスの多くは語学の試験等があると聞いていましたが,数人来てくれました.ありがとう.私はこういう機会があると,必ず「試験に関係ない講義」をするようにしています.単純に興味を抱いた学生に,できるだけそれに答えるように講義をするのは,ある意味で本当の真剣勝負だと思っています.今日のみなさんの感想を聞いてみたいところです.
  • どうしてこんな講義をやろうと思っているかという話しを講義中にする時間がなかったですね.答えは単純で私が大学のときに幾つかそんな講義を受けたからだけなんです.単位はどうでもいいから受けてみたい講義が大学のときに2つほどありました(それだけしかなかったのか?).今でも覚えているのはそんな講義です.やっぱ,学生のときにはおもろい講義を受けるべきなんだと思います.講義が面白いと本当に思うと,ほっといても勉強するようになるし,そうでないと,まあそこまでの学生ってことですね.とにかく,教官側はできるだけ,おもろい講義を提供せなあかんと思っています.「おもろい」って,外面的でなくて,深くある必要があるので,簡単ではないです.もう駒場にきて4年が過ぎたけど,それだっけはなかなか難しいです.
  • 今日の内容は,そこそこの小ネタだと思ってます.まず,これまで力学で学んで来た概念や方法が実にいろいろ出てきています.まるで,今までの講義が伏線のようにさえも思えてしまうくらいです(ちょっとおおげさです).バカバカしいと思えることを実にバカバカしく真面目にやっていました.そこからいろんなことが見えてくるものです.これが物理の面白いところです.自分で実演をやってみると,見方が変わってりするかもしれません.
    • 今日の講義ノートは公開してもいいかなと思い,スキャンしてPDFにしてみました.ところが4.3MBにもなってしまって,ここに置くのは止めました.TeXにうって原稿を作ってもいいのですが,なんとなく面倒で,手書きの風情がなどと思っていると,もうやらないと思います.個人的に希望する人がいたら,連絡ください.
  • これで講義は全日程が終了です.みなさん,よい夏休みを.レポートを返す準備が出来たら,この上のページで告知したいと思います.9月1日の試験にまた会いましょう.そうそう,質問大会も希望者はどうぞ.

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最終更新時間:2006年07月24日 11時14分17秒