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今日の一言/2008-8-4

高校生とのひととき

今日の午前中に,ある伝手で高校生2年生10人の前で話をする機会があった.どうして私のところに話が来たのかはよくわからなかったが,その高校は大学のころからよく知っていたので迷わずお受けすることにした.話のお題は「研究内容」と先方から指定されていたのだが,目的は大学受験への動機を強くすることだろうと勝手読みして,研究の話の前に「大学での物理」の話をした.大学の講義でもそうだが,若かりし自分に対してウケることを目標としてみたわけだ.高校生のころの自分は完全にブルーバックスおたくであって,物理に対してある意味で(ストレートだけど客観的には)ちょっと曲がった興味を持っていた.粒子は光速で飛び交い,統一理論に向けて,頭の中はビッグバーンだったわけだ.もちろん,ニュートン力学も知らずに...大学にはいって,3・4年生のころにそれらがすっかり変わってしまう相転移のようなことが起こるわけだが,その顛末話をしてみた.17才の自分なら,「...聞きたくない!」と言ったかもしれないが,高校のときに抱くイメージと大学での学問はずれていて,だが,しかし大学での学問はすごーくよいものだということがわかる一つのよい例だと思う.

小学校のときに,担任の先生が「大学には遊びにいくようなもの」だと冗談でおっしゃったことがあった.私が本気にしてはいけないと思われたのか,その夜にわざわざ家までいらして,そのいきさつを両親に説明してくれた.田舎育ちの自分は純粋に学問への憧れがあったので,先生の言ったことの意味がわからずにいた.大学に入学したときに,その「意味」はよくわかって沢山遊んだが,それでも学問をする姿勢は保ちつづけることはできた...できた?というか,好きでやっていたのだ.そうでなければ「相転移」は起きなかったのだと思う.最先端の「研究内容」はほとんどしなかった理由も感じてもらえたかな.今日の話は,冗談ではなくて,本気で大学で学問することをすすめたつもりである.最先端の話で頭の先っちょをピピーと刺激するよりも,腹の底の方でジワーとするのが大事だと思ったわけだ.何も東大に行くことだけが全てではない.どの大学に行っても,5年後に目をキラキラして学問しているみなさんがいることを切に望みます.

午後には東大の工学部の先生を訪問するらしい.そこで,ピッカピカの最先端のテクノロジーを見せつけられて,心踊らされてしまったら,午前中の話はなかったことになるで...>自分.

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最終更新時間:2008年08月06日 11時42分00秒