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論文リスト

Articles

最近の論文と少々のコメント.ちょっと面倒くさがっていて、リストは上のページに.

Replica symmetry breaking in an adiabatic spin-glass model of adaptative evolution,

Ayaka Sakata, Koji Hukushima and Kunihiko Kaneko

Europhysics letters, vol. 99, 68004-1–68004-6, 2012.

  • おそらく初めてRSB相が出てきた進化の統計力学的モデル.その一点において価値があると考えます.もっと現実的なものを考えたり,RSBっぽさを議論したり,ダイナミクスを議論したり,いろいろと今後の展開が期待される.それにしても通るのに苦労した論文であった.

Partial annealing of a coupled mean field spin glass model with an embedded pattern

A.Sakata and K.Hukushima

Phys. Rev. E 83,021105(2011)

Determination of Glass Properties of Spin Glasses using Nonequilibrium-Measurement Results

K.Hukushima

JPSJ Online―News and Comments [August 19, 2010]

Multicanonical sampling of rare events in random matrices

N. Saito, Y. Iba and K. Hukushima

Phys. Rev. E 82, 031142, 2010.

An extended ensemble Monte Carlo study of a lattice glass model

Hukushima. K., Sasa. S.

J. Phys. :Conf. Ser. 233, 012004, 2010.

A statistical-mechanical study of evolution of robustness in noisy environment

Ayaka Sakata, Koji Hukushima, Kunihiko Kaneko

Phys. Rev. E 80, 051919 (2009)

  • これは本論文.レターよりも、もちろん、大幅に増強されていて、そして詳しく議論しています.

Thermodynamic construction of a one-step replica-symmetry-breaking solution in finite-connectivity spin glasses

T.Nakajima and K.Hukushima

Phys.Rev. E80, 011103 (2009).

  • これは中島くんの修論のメインの結果.自由エネルギーのキュムラント母関数の単調性のやぶれから疎結合スピングラス系での1RSB解を構成した研究.これまでにfactrized ansatzと呼ばれる仮説から導かれた解が,単調性の破れからもでてくることがわかった.本当はだれも知らない解を見つけられればよかったのだが、それでもこれは正しいそうな感じ.他の不安定性が起きていなければ厳密だけど、そこを示せていないところが穴になっている.

Phase transition of a spin-lattice-gas model with two timescales and two temperatures

C.H.Nakajima and K.Hukushima

arXiv:0807.4601

Phys. Rev. E 78, 041132 (2008).

  • 二温度系で負の潜熱が起きるというPRL論文を受けて,その出現条件を熱力学的な立場から議論し,平均場スピン格子ガス模型の変形版を解析しました.

Funnel Landscape and Mutational Robustness as a Result of Evolution under Thermal Noise

Ayaka Sakata, Koji Hukushima and Kunihiko Kaneko

arXiv:0807.1217

Phys. Rev. Lett. 102 (2009) 148101.

  • 坂田さんの仕事.投稿までに時間がかかってしまったけど,時間をかけただけ内容はよくなっているように思う.これは部分的には前回の物理学会で坂田さんが話したんだけど,いまひとつうけていなかったように思う.内容はそこから増えていて,今度の物理学会でもポスターで発表することになっている.一度,自分でもこのネタで人に話してみたいと,密かに思っている.まあ,人のふんどしで相撲をとるのはよくないんだけどね.
  • 内容をちょっとだけ.進化の結果できたであろういろんな生物のシステムをみていると,どうもうまいこと安定な表現型を実現しやすいように遺伝型を構成できているように見える.たとえば,Funnel構造に代表されるようなこと.もっとも,表現型をつくるときに,すごく揺らいでしまうようでは使いものにならないわけだから,淘汰の結果として,そうでなくてはいけないという気はする.一方で,安定に次の世代に遺伝情報を継承するために,遺伝型は突然変異に関して頑強でなくてはならない.この二つの要請は,まったく別物のような気もするのだが,これは同時に実現する適当なモデル系をひとつ構成できたというのが今回の話.さらに,その際に,表現型のダイナミクスに適度な揺らぎがあるのが大事であることがこの仕事のメインのクレームである.実際にはスピン系の相互作用設定問題にマップすることができて,適度な揺らぎの元でフラストレーションのない相互作用を選択的に実現していることがわかった.フラストレーションがないことがポイントで,それはfunnelのような簡単なダイナミクスを示し,ごみが入っても頑強になっている.

On-line Learning of an Unlearnable True Teacher through Mobile Ensemble Teachers

Takeshi Hirama and Koji Hukushima

arXiv:0805:1480

J. Phys. Soc. Jpn. 77 (2008) 094801.

  • これは平間論文.おおざっぱな内容は,ここ

Large Deviation Property of the Free Energy in p-Body Sherrington-Kirkpatrick Model

Tetsuya Nakajima and K. Hukushima

arXiv:0802:1302

J.Phys.Soc.Jpn., 77(2008) 074718

  • 中島(哲)君が去年の卒研から取り組んできた話題をまとめたもの.卒研からしっかりグレードアップして,面白くまとまっていると思う.下の松田くんも,西森研での卒研から端を発した研究である.若い人の元気がよい.
  • なぜ,多くのランダム系が1step replica symmetry breakingで終わってしまうのか,という問に部分的に答えを与えている.この疑問はかなり以前に私自身がもった疑問で,p体スピングラスとかポッツグラスとかをいじってみたが理由はよく分からなかった.AT安定性を調べたら,RS解は不安定化して,1RSB解を作って,その後はもう破る理由が見付からないというわけだった.でも,もうちょっと低温にしたら,1RSBも不安定化することがあり,なんだろなーというわけで,ほったらかしておいた.そしたらM1の中島くんが答えを見付けたというわけである.そこを狙っていたというわけでないところも面白い(論文の主題はあくまでも大偏差).有限のレプリカ数での解析をしていたら,RS解の破れ方がある模型では特徴的で,もう1RSBしかないという破れ方をしていて,低温になるとちゃんと別の機構が見えてくる.そっちがいつでも完全RSBを導くかどうかは全然まだわかっていない.
  • JPSJ論文に掲載が決まりました.

Distribution of Lee-Yang zeros and Griffiths singularities in the +/-J model of spin glasses

Y.Matsuda, H. Nishimori and K.Hukushima

arXiv:0712.4063

J.Phys.A:Math.Theor. 41(2008)324012.

  • 鹿児島の学会での松田さんの発表にコメントをして,帰りの鹿児島空港でrare events samplingの話をしたら,あっという間に実装してくれた研究.下の論文に続いてGriffiths特異性関係だが,全く独立の研究で,問題の難しさという点ではこちらの方が断然難しい.

A Monte Carlo Algorithm for Sampling Rare Events: Application to a Search for the Griffiths Singularity

K. Hukushima and Y. Iba

Journal of Physics: Conference Series, 95(2008) 012005, arXiv:0711.0870

  • Rare event samplingプロジェクトの論文

Testing Error Correcting Codes by Multicanonical Sampling of Rare Events

Yukito Iba, Koji Hukushima

arXiv:0709.2578

J.Phys. Soc. Jpn. 77 (2008) 103801

  • arXivには改訂版が出ています.
  • 掲載決定.そしてEditors' choiceされる.

Scaling Analysis of Domain-Wall Free-Energy in the Edwards-Anderson Ising Spin Glass in a Magnetic Field

M. Sasaki, K. Hukushima, H. Yoshino, H. Takayama

cond-mat/0702302,

Phys.Rev. Lett. 99 137202 (2007)

  • 磁場中スピングラス相転移が無いことをdomain-wall RGを使って示しました.磁場中転移が無いことは最近いくつかのグループが示唆していて,その意味では後手を踏んでいますが,見ていることの内容は我々は深いと思っています.磁場があると,どのようにスピングラス秩序が壊れていくかをRG的に追いかけています.どうやらドロップレット理論の予想があたっているように見えます.

Extended Scaling for Ferromagnets

I.A.Campbell, K.Hukushima, H.Takayama

cond-mat/0612665

Phys.Rev.B 76 (2007) 13442

  • 駆け込み的にpostしました.比熱の話がちょっと面白くて,実験データも解析するといいかもしれません.

Computational Experiment on Glassy Dynamic Nature of the Field-Cooled Magnetization in an Ising Spin-Glass Model

H.Takayama and Koji Hukushima

cond-mat/0610284

J.Phys.Soc.Jpn, Vol. 76, 2007, 013702

  • FC(磁場中冷却磁化)とZFC(ゼロ磁場冷却磁化)の差のonsetがスピングラス転移の兆候とするのは,古くから一般的で,実験的にもよく行われるプロトコルです.理論的には簡易的にFCを平衡磁化で,ZFCを非平衡磁化と捉えられることが多いです.「本当にFCは平衡磁化なのか?本当にって言われると,まあそうではないでしょうねー.」と多くの人はなんとなく思っていたのではないでしょうか.我々は今回それを陽に確認し,さらに単に緩和が遅いだけでないことを見付けました.磁場中冷却磁化を冷却中に温度を止めてみたところ,平衡磁化へ単調に緩和するだけでないというわけです.この仕事の前に高山先生とPetraが実験的にも見付けていた結果と定性的には同じですが,平衡状態の情報を計算機実験でおさえたのが新しい点です.

Analysis Method Combining Monte Carlo Simulation and Principal Component Analysis -- Application to Sourlas Code --

Masato Inoue, Koji Hukushima and Masato Okada

J. Phys. Soc.Jpn Vol. 75(2006), 084003

  • でました.使い道はあるかな.1 step RSBを示す系が確かにそうであることを,目で見ることはできるように思います.もっともTAPを解いて見ればいいのですが,TAPが作れない系に対してもその様子が見えることが強みです.

Extended scaling scheme for critically divergent quantities in ferromagnets and spin glasses

I.A.Campbell, K. Hukushima and H. Takayama

Phys. Rev. Lett. 97, 117202 (2006). (cond-mat/0603453)

  • とりあえず,レター版ができたので,cond-matに出しました.この仕事に関しては,よい話しやら悪い話やらいろいろエピソードがあります.内容は二次相転移の臨界現象の(新しい)スケーリング変数の提案です.これまでに部分的には実験や理論(高温展開)で知られていましたが,それを統一的に提案したのがこの話です.「狙ってとりにいった」というよりは,その辺を歩き回っていたら"当った"という感じの仕事でした.これまで知られている普通の変数を使うよりも,断然に,もうそれはビックリするくらい(ちょっとおおげさ)にきれいです.実験の解析にも使えます.何か新しい概念を産んだわけではないので,物理学の進展への寄予はほとんど無いですが,ちょっと賢くなった気がする仕事です.
  • 内容の半分は,3次元イジングスピングラスの臨界指数の話で,これは10年前のD論のときにもやっていました.そのときには,帯磁率から決まるthermal exponentνとBinder parameterから決まるνが大きくずれて困っていました.困ったときには"correction to scaling"という謎の印籠があって,それで逃げてしまうのが業界標準でした.今回はそれを使わなくても,「新しい変数を使うとばっちりずれません」というのが大きな主張です.さて,10年前ちょうど交換法の最初の大規模応用としてがんばっていたのですが,そのころA.P.Young氏が Kawashimaさんと同じ問題をbrute forceでやっていました.我々は根性が入っていなくて(というか落としどころがわからなくなってしまって),proceedingsしか出せませんでした.Kawashima-Youngに完敗だったわけです.それから十年後,別にこの問題に展開があったというわけでも何でもないのに,先月 (2/10)Youngらはこの問題を交換法を使って調べ直して,cond-matに投稿しました.うすうす聞いていたとは言え,なんでシンクロするのだ!?といった感じ.今度は我々は秘密兵器(新スケーリング変数)を持っているので,簡単には負けません.
  • この仕事は,去年の9月に日仏セミナーでパリに行ったときに,Campbellさんとカフェで話したのがきっかけで始まりました.最初にうまくいくスケーリングプロットを見たのは12/6の帰りの電車の中だったので,それから少し時間がかかってしまいました.でも,学会前に間に合ってよかったです.原稿ができたときに,「そういえば,パリのカフェでのテーブルクロスの落書きからはじまったんですよね」ってメールを書いたら,「いやいや,はじまりは筑波なのかも」と返事が帰って来たときはちょっとジーンと来ました.最初の日仏セミナーがもう15年くらい前の筑波であって,そのときが初対面だったのです.私はピーピーの大学院生で何をやってたのかよくわからないし,会議内容も英語でよくわからなかった.なつかしい.これはちょっと「よい話し」.
  • (2006.8.11):今日acceptの連絡が来た.first roundから一月半反応が無かったので,そろそろこちらから督促しようかと思っていたところでした.とにかく,とおって良かった.最近は,我々の中でジワジワっと進んでいることがあるので,それをまとめたいところです.

Monte Carlo simulations of the phase transition of the three-dimensional Heisenberg spin glass

K. Hukushima and H.Kawamura

Phys. Rev. B 72, 144416 (2005)

cond-mat/0504016

  • 私がサボっていたために,こんなに遅くなってしまいましたが,なんとか投稿までこぎつけました.敵が世界中に多いので,掲載を勝ち取るまでにこれから時間がかかりそうです.個人的にはかなり苦しみました.残念ながら,これで完全決着という論文ではありません.ここ数年はこの論文をターゲットに潰しに来てくれればよいと思います.十年後,二十年後に生き残っている論文とは思えません.仮にこの論文の主張が生き残ったとしても,この論文には「主張」以外のことが沢山書かれていて...
  • (2004.4.4)一番最初に来たレスポンスは知合いから「大論文がでましたね.卒業論文ですか?」って,それはひどいじゃないの?
  • (2004.8.30)acceptの知らせが来る.レフリーとのやりとりで図を一つ増やすことになったので,cond-matにも改訂版をあげておいた方がよいだろう.
  • 上の文章では何の研究かわからないので少し捕捉:3次元の丸い対称性を持った古典ハイゼンベルグスピングラスはスピングラス相転移をするのかどうかが基本的な問題であった.少し前までは有限温度スピングラス相転移はないとされていたので,実験との整合性は実は深刻な問題で,それに対して川村さんがカイラルグラス秩序なるものを提案した.部分的な対称性だけが自発的に敗れるというわけである.その状況証拠が徐々にたまってきたところに,やっぱりスピングラス相転移が有限温度で起こるんじゃないか派がアチコチからわいて来た.どれも部分的な証拠だったわけだが,数が集まればそれなりの勢いがあるようにも思えて来た.今回の我々の仕事は平衡状態の性質を広く調べて,やはり有限温度スピングラス相転移はなくて,カイラルグラス転移だけが起きていることをもう一度主張した.反対派に対しても,我々の立場からの解釈を詳しく示した.もう少し大きなスケールに数値計算が到達すれば決着がつきそうなことも論文の中で示してある.逆に,チョロイ計算でごちゃごちゃ言うのは難しいことを陰に言っている.あるいは,Mermin typeの議論をもう一度考え直してもよいかなー.特に技術的な進展があったわけではないが,別の人が考えるとよいことがあるかもしれない.

Temperature Chaos and Bond Chaos in the Four-Dimensional +/-J Ising Spin Glass : Domain-Wall Free-Energy Measurements

M. Sasaki, K. Hukushima, H. Yoshino, H. Takayama

Phys. Rev. Lett. 95, 267203(2005).

cond-mat/0411138,

  • スピングラス状態は摂動に対して非常にsensitiveだとこれまでに予想されてきたが,それを実際に有限次元系で数値的に示してみたのがこの仕事.摂動は温度変化や相互作用変化だが,どちらも同じように平衡状態が壊れることが示された.また,その壊れ方を表す指数ζと,励起状態の自由エネルギーの指数 θと励起状態の液滴のフラクタル次元dsの間に成り立つ式が一つの仕事の中で系統的に調べられて,それらの間のスケーリング関係式がチェックできたのはおそらく初めてだろう.

これまでの研究の思考(見るべき物理量)や技術(それを計算するためのテク)を持ちよって,このタイミングでこの仕事をやるのは我々だけだろうと思う.実際には佐々木さんがほとんど全ての仕事をやってのけた.さすが即戦力のポスドク!

  • (2005.11.4):投稿から一年,こんなこともあるんだなーといった感じ.私は短気なのであきらめかけていましたが,佐々木さんをはじめ他の方々の粘り強い対応のおかげで掲載可となりました.研究の内容はかなり面白いと思いますが,この結果は少々複雑な気分(かなり悪い)です.きちんとrefereeできないと業界がダメになる.

Neel Temperature of Quasi-Low-Dimensional Heisenberg Antiferromagnets

C. Yasuda, S. Todo, K. Hukushima, F. Alet, M. Keller, M. Troyer, H. Takayama

Phys. Rev. Lett. 94 217201 (2005), cond-mat/0312392

  • 低次元磁性体の研究は少し前に,実験的に一次元的や二次元的な物質が合成され,その磁性を詳しく解析されたことが研究の動機にあります.理論的には一次元・二次元系は有限温度で相転移しないことがわかっています.現実には本当に一次元・二次元系の物質はありえず,温度を下げて,効いてくるエネルギースケールが小さくなると,いずれ3次元性が見えて相転移が起きます.その時の,例えば1次元物質ならば,低温では一次元方向に非常に強い相関ができるのですが,相転移が起こるためには,残りの2次元空間での相関が発達する必要があります.そこで.具体的に量子モンテカルロ計算を行って,擬一次元,擬二次元の量子スピン系で相転移現象を調べ,残りの次元で有効的に結合しているボンド数に相当する量を評価してみました.その結果は古典スピン極限も含めてスピンの大きさに依らなかったのです.不思議です.
  • (2005.4.28追記):first authorの安田さんからPRLアクセプトされたとのメールを頂く.安田さんの粘りのおかげです.
  • (2005.6.15追記):この不思議さを気付いてくれている人達もいたようで,我々の見付けたことを理論的に考察しているプレプリントが今日のcond-matに出ていた.低エネルギーの有効理論を作って,普遍的なスケーリング関数の存在を議論している.個人的には古典スピン極限も含めているところが厄介かも知れないと思っていたが,そこはそうでもないようだ.彼らは我々よりももっと実験に測りやすい量のスケーリング関係を予言している.実験家の人達が乗って来てくれるだろうか.その前にその新たな予言は数値的にも検証すべきだろう.

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最終更新時間:2015年12月20日 19時20分39秒