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日本物理学会2006秋

日本物理学会@西千葉(千葉大),9/23-26, 2006

歩いて10分で会場につくので,なんだか不思議な感じの物理学会であった.出張が好きなわけではけっしてないのだが,家から通うのはどうも学会の気分がでない.しかも土曜開始なので家族には不評である.これなら出張に行ってしまった方が気楽である.こんなことはもう一生ないだろう.気合いが入らないわけではないのだが...{{br}}それではレポートいってみよう!!

9/26(初日)

久々に初日の朝一にスピングラスセッションが組まれていて,最初からテンションを上げねばならない.自分の発表は午前の後半のセッションで,例によって発表資料の最終稿は朝に仕上がる.

西森研セッション
前半はそんな感じに組まれていた.人数も多いのね.残念ながら西森さんは所用で来られなかったようだ.学生さん達はいろいろと突っ込まれていたけど,もっと堂々と開きなおっていてもよいような気がする.と,後でコメントしておいた.鈴木さんとはもう少し議論したい.段々論点がずれて来ている気がする.
自分(概要:23aXD-11.pdf(424))
早口すぎた.内容はそれなりに面白いと思うのだが,ちゃんと伝わったかどうか不明.グリフィス特異性に関する話題だが,変わったランダム系の数値計算法の提案でもある.私の学会デビューのときの伊藤伸さんの質問[1]に戻って来たところもあるのだが,いつものように伊藤さんは後の方で頷いてくれていた.聞いてたかなー.話のキーワードだけを聞くと,筋はわかってしまうかもしれないが,そんな人はそうはいなくて,むしろ分らない人の方が多かったかもしれない.反省.{{br}}
  • [1]「そんな小さなサイズでそんなめったにないクラスターがあるのですか?」とこんな感じだったと記憶している.北大の学会のときである.
根本さんからの「すごいねー,10^-8」と率直な感想はうれしい.次の日の昼ごはんのときには藤堂さんに説明する.彼は発表のときは別のセッションにいたようだ.あれこれ説明しているうちに,発表していない技術的な問題に触れるところまでいって,そのうちに「これこれ」の問題に使える?ってな感じになった.確かに,私がやればニヶ月,藤堂さんがやれば一週間でできるだろうか.それなりに面白い問題であろう.うまく行けば次の学会で.それにしても,根本さんとか藤堂さんとかその道の通にしか受けないようだと問題ですな.

午後からは古典スピン系に出る.久々だったかもしれないが,実はプログラムを見たときに,一番面白いセッションだと思った.どこかの研究室の占有セッションでなくて,古典スピン系を研究している研究室から代表選手がズラーと並んだ感じでした.確かに予想どおりの面白いセッションで,流行っているというわけではないけど,着実に少しずつ知見が増えている感じが嬉しい.

Stochastic Potential Switching by 佐々木さん
なんか聞いたことがある方法かと思ったが,そうではなかった.文字どおり確率的に相互作用を切ったり貼ったりするらしい.あるモデルではSwendsen-Wangになるらしい.当然詳細釣合は満たしている.こんな方法が日本から発信できればいいのになー.ちなみにこれは外人発.これをダイポール系に応用して,ちょっとだけメリットがあるという話.肝心の佐々木さんの寄与のところは,妄想モードに入っていて聞いてませんでした.すまん.
八面体エッジ共有格子
今田研の学生さんの発表で,きれいにまとめられていた.ただ,あまりにもきれいすぎて,本当に泥くさくやったんだろうかと疑問になり,ちょいとつついてみた.いやーそこはちょっと難しくて...と,少しやってる感は伝わった.でも,そういうとこちゃんと見てなくて,そんなきれいな相図描いていいのって,思うんだけどね,まあ,趣味の問題ですが.確か以前にXYかHeisenbergモデルについては,板倉さんが調べていて,第二近接をいれるとヘンなクラス(4 state Pottsとか)になっていたような...非常にあいまいな記憶です.
{{ilayout fontcolor,name:red,text:(2006.9.30追記)}}
今田研の田原さんからメールを頂きました.格子の名前は逆ペロプスカイトで,エッジ共有でなくて,コーナー共有だと指摘されまして,当日質問した点についてすこし議論しました(というか,今さっきメールで返事したところ).M2かと思っていたら,M1でした.もう立派な研究を始めているので驚く.さらに,私が駒場にきて最初の記念すべき醜い講義に出ていた学生さんだったようで,感動ものでした.本当に最初だったので,最終回に解析力学的にマクスウェル方程式を出したりしたのですが,それが印象的だったとコメントをもらって嬉しかったです.もうそんなことはやらなくなってしまいました.
{{ilayout fontcolor,name:red,text:(2006.9.30さらに追記)}}
その上に書いた佐々木さんからも,早速文献をメールで教えてくれました.きっとこのページを見たに違いない.こういうページを書くことに何の意味があるか思うことも多々あります.ただ,blogのように月日が経つと見えにくくなるのでなくて,学会に行った記録が残るのは悪くないかと思います.ここに書かれるのは基本的に当日コメントしたことを書くようにしています.コメントしていないことをここで書いてもしかたないしね.ここに書いていないことは面白くなかったということではないです,ハイ.
高次元転送行列 by 西山さん
みなさんからは結構突っ込まれていたけど,個人的には好きな部類の話でした.モンテカルロ法に真向から勝負を挑むために,ちょっと小細工して繰り込まれたハミルトニアンをつかったのが不評のようでした.えええ,そんなの素粒子じゃー常識だし,それで全てを解決したわけでなくて,ベアーよりも少しだけ固定点に近付いただけのものだって説明しているのにとやかく言われなくてもよかったでしょう.それよりも,分配関数ゼロとかを計算する変化球の方が受けたんじゃないでしょうか.
Entropic barrierのときにQuantum annealing by 田中さん
Entropic barrierな系にもQAは機能するか?その動機はよくわかったし,話がうまくてよいプレゼンだった.だけど,よく考えたらそこでQAに行っちまったら動機が消えているのではないだろうか.
中島君
うちの学生も発表しました.発表自体はそこそこよかったと思いますが,内容はもっと上げてこれたでしょうね.宮下さんがこっち向いて質問してきたので,えーーそれは私はわかりませーん.という態度でかわしました.格子の温度とスピンの温度が違うことはよくあることと指摘されたが,ここでの話ももう少し簡単な状況を考えているので,宮下さんのやっている問題とは違うのですが,そちらへ近付けてみたい気がします.

9/24 二日目

今日はあちこち歩き回る一日だった.午後からはレオロジーのシンポを聞きにいく.しかし,今日の午後はシンポ集中日だった.

生物物理
収穫無し.こっちの理解力がなかっただけです.
昼食
上にも書いたように,藤堂さんと昼食.学会で有意義なのはこういう与太話ができること.
バグノルズ則
レオロジーシンポでの御手洗さんの話.以前に駒場でセミナーをされたときの話を思い出しながら,合わせ技で理解する.次元解析の話は非常にきれな話で,天才の仕事だと思う.もちろん,それだけでみなが信用するはずがないという意味合いもある.ドジャンの教科書を読んでいるような感覚である.しかし,現代的な研究では,それに数値計算が加わって,怪しいと思えることをキチンと検証できるところが大きいと思う.物理的にずれるところを,確かめることもできる.ある意味で計算機の正しい使い方のような気がする.
液液転移
そのままシンポを聞いていたい気もしたが,どうしてもこっちも気になって,抜け出す.過冷却液体セッションで,田中研の人達の話を聞く.ひさしぶりに小林さんの話を聞いたが,動機付けから慎重な実験まで気持ちのよい仕事だと思った.その後は液液転移の話.ピントのずれた質問をしてしまったけど,それを理由にセッション終了後に,若い学生さんに一気にいろんな状況を聞きまくる.一度田中さんのGL理論を勉強してみないとまだよくわからないが,ミクロな模型から液液を出すのは難しそうだということはわかった.どうも液2相はかなり大きなクラスターが基本単位になっている液体らしい.どうすればよいだろうか.
{{ilayout fontcolor,name:red,text:(2006.10.12追記)}}
今日,研究室にひょっこり小林さんが来てくれました.明後日から,ドイツ(マインツ)にポスドクに行かれるとのことでした.いろいろ立ち話をしました.是非,向こうの新しいプロジェクトでもがんばってほしいです.

9/25(三日目)

今日も領域11と12をいったりきたりする.午前中はガラスセッションへ行く.ガラスセッションはどういうわけか,人数が少ない.裏のソフトマターの方がメインストリームということか.午後の非平衡セッションは大人数で,こっちは領域11のメインストリーム???

宮崎さん
昨日のシンポの宮崎さんのトークに戻って来れなくて,残念だったので,どうしてもこの話は聞きに行く.χ4ではなくてχ3を計算していることを認識した(論文全然読んでないことがバレる).ううう,それにしても詳細な計算を一度追ってみないと分らないことだらけだ.もちろん,講演では計算の詳細ではなくて,そのアウトラインと物理について議論していた.いろいろ聞きたいことがあったのだが,大槻君がまあものの見事にまとめて質問してくれていた.これで帰ったらχ3の計算を始めるだろうな.ちゅーうかフランスの連中達がやっとかなあかんでしょう.ちゅーか,でるのわかってるから,調べないのか?ちゅーか,4と3の差って,図的には結構違う気がするのだが...
宮崎さんとはこれが発の遭遇.ではない.彼は大学の一年先輩なのである.お名前をよく聞いていて,そうではないかなーと思っていたが,今日そのことが確認できた.
非平衡セッション
特別講演から聞く.若い学生さんが沢山頑張っている.うーん,最後まで聞きたがったが,夕方から千葉である会議に出席するために途中で退席.残念.会議は学会のスケジュールが終わってからにしましょうよ.

9/26(最終日)

とうとう最終日.出張であろうが,なかろうが4日間の学会は疲労が貯まる.今日は午前中は情報統計力学セッション.自分で言うのも何だが,感じの悪い突っ込み親父になっていたなあ.私よりも年上の人があまりいない若手中心のセッションだったので,頑張って突っ込みいれていたわけだが,黙っていたら若い人が盛りあげていたかな.お昼にダッシュでポスターセッションを見に行って,午後からはコロイドシンポに参加する.途中で凄い雨になってきた.

レプリカ法のモーメント問題 by 田中利さん
京都の数理研での研究会で話を聞き逃した話題だったが,十分講演の割には勉強になった.話がうまかったせいだろう.熱力学極限に行く前にすでに問題があるという指摘であった.解析接続に問題があるのだが,できるけど違う答えを出してしまう例の話だった.この他に熱力学極限を考えなければ行けないかと思うと,すごく暗くなる.今日示してもらった十分条件の話だけではあんまりわからないので,具体例を見ながら考えることにしたい.
3体TAP解のcomplexity by 外崎さん
解の個数を地道に計算してみたという話.裏で凄く苦労している感じがよくわかった.BRSTが顕著に見える例を見付けて来るあたりはさすが樺島研といった感じか.
ポスターセッション
ダッシュで幾つかを見て回る.安田さんに現状を教えてもらう.地に足がついている感じで,話を聞いていて落ち着く.矢久保研の学生さんのポスター(フラクタル次元の分布の研究)を遠目で見ながら,矢久保さんにボソボソつぶやく,分布のテールに興味のある際は御一報下さいと.
大沢さん
初めてお目にかかる.学会で理論の話をしたことがなかったとか,Asakura-Ohsawa論文は紙切れ一枚ものであることとか,いろいろ面白いエピソードを聞かせてもらう.何より本人が楽しそうに話しているのが印象的だった.30分じゃ短い.続いて土井さんも楽しそうに話をしていた.

混み合い問題
Asakura-Ohsawa理論もそうだが,エントロピーの効果がほんとに顕著に見えるということを知らされる.こういう研究はもう普通に沢山あるのだなー.タンパク質も混み合い問題も指摘されていたが,どのくらい調べられていて,機能とどう関係しているのかは分っているのだろうか?ダイナミクスにも影響するのだろうね?ちょっと印象的だったのは,散乱強度を見せながら,本当はぶつかっているアニメでも見せればいいのでしょうが...とおっしゃっていたところ.物理屋の集団なのだから,アニメなんか見せなくても大丈夫だ!!!

学会全体を通じて,来年のイベントのことが頭にずーとあって,集中できないところがあったのが残念.HFM+ICMの反動もあってか,領域3に一切出なかったが,それはさすがに問題だったかもしれない.291

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最終更新時間:2006年09月30日 00時42分38秒