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日本物理学会2007秋

日本物理学会@北海道大学,9/21-24, 2007

前回の北大での学会は私がちょうどM1のときの学会デビューであったので,かれこれXX年ぶりである.そのときは物性理論グループで大部屋に泊まった.もう最近では指導教官と弟子が同じ部屋に寝泊まりすることなんてないんだよなー.(といっても,今年の3月に高山先生と同室で旅館に泊まったなー).今回は大通公園のちかくのホテルで,もちろん?個室です.そこから大学の教養部まで40分くらいかけて毎朝歩いて通った.初日の猛暑を除けば気持ちよい散歩であった.

それでは学会レポート.

今回は福島研総動員(順に,坂田,中島哲,中島千,中田,平間)で発表しました.どれもまったく別のように見えて,背後にはゆるーく関係している話題である.基本的には学生さんが面白そうなネタを見付けて研究していることに,私がちょっとコメントする感じです.それでも,うちの研究室とはどんな研究室かを感じてもらうにはよい機会かと思いますので,研究室強調モードでレポートします.

9/21(初日)

坂田さん「表現型と遺伝型の進化に関するモデル研究」
研究室のトップバッターは坂田さんであった.この研究は金子さんとの共同研究であります.時間スケールが分離した自由度のうち,遅い変数に対して局所的な拘束条件をかけたときに,どんなグローバルな構造ができうるかを調べた研究.速い変数と遅い変数をそれぞれ遺伝型と表現型と考えればある種の進化の問題になっている.ここではそれらの変数に独立に詳細釣合を課して定常分布の存在を仮定している.わかったことは中間温度にだけ選択的にグローバルな相関構造が出てくることである.スピン系で言えば相互作用を進化させているわけで,中間温度でマティスSGが選択されていることになる.話したセッションは生態系で,いろいろ考えてそのセッションにしたが,果してフィットしていたかどうかよくわからない.
しかし,時田さんや池上さんにはコメントをもらえてよかった.駒場にいるのだから,池上さんには事前に聞いてもらった方がよかったが,これもKISSが壊れた弊害のような気がする.そういえば池上さんが物理学会で話しているのを見るのは久しぶりで,うーんかっこいい.
情報統計力学セッション
午前中は坂田さんの発表周辺以外は情報統計力学セッションに参加する.このセッションはお客さま状態なのだが,田中利さんのところの学生さんが非常に関係していることを研究されていて驚く.早稲田の井上さんの学生さんの原さんがスパースSGのAT線の発表をする.これは共著なのだ.簡単そうに見えて実は難しいこの問題.数年前に私はギブアップしちゃったんだけど,がんばっているぞ!.その他にはパーシャルアニーリングががはやっていることが気になった.仕掛け人は岡田さんらしい.我々の興味も深く絡んでいて,レプリカ法でいうところの一般のnでの議論がこの問題になっている.ぼくらの方がもうちょっと先に行けるのではと考えていたが,足踏をしている間にこの辺りの人に先に行かれている気がする.昼休みに,神戸の三好さんと議論をしてもらう.というか,うちの平間くんが議論してもらっているのを側で見ている.いろいろと教えてもらうことが多くて,平間くんの修論にむけてはずみをつけたい.
午後は領域11・12合同「記憶シンポ」
高分子の話は知らないことが多くて勉強になる.スピングラスの話に関することはまあよいとして,Rolandの最近の実験についてはもう少しゆっくり聞きたかった.深尾さんの実験は年々進んでいて,とうとうtwin temp. shift実験までやってしまっている.相変わらずきれいなデータで,有効時間のスケーリングの図まで見せてもらった.えーと,そこまでいくと何か温度依存性に関する情報を知っていることになるが,それはどうなっているのか気になる.さて,記憶(と生まれ変わり)はだれが担っているのか?ということには興味があるところで,個人的には深尾さんに対する根本さんの質問と,吉野さんに対する私の質問がワンツーパンチになっていて,ある方向に見解を引き出せそうな気がしたのだが,しっくりいかなかった.でも,後から反芻すると,吉野さんや多くの聴衆にとっては自明なことだったのかもしれない.

9/22(二日目)

中島哲くん@スピングラスセッション「r体スピングラスの自由エネルギーゆらぎ」
いろいろあったが,うまく発表できたのではないかな.内容は多体スピングラスの自由エネルギーの確率揺らぎをレプリカ法で考えてみることだが,通常のレプリカ極限をとる前の情報に揺らぎの情報があることが面白い.レプリカ法の解析接続にも関係している基本的な問題である.SKの場合にはすでに仕事があって,多体にしたときに,特に全てが分かっているREMとどのように接続しているかに興味がある.大偏差的になっているところは大体わかって,レート関数の情報まで数値的に詰める必要がある.講演の後で樺島さんからいろいろ指摘をもらう.中島くんはM1なんだが,学会で発表できてよかったんじゃないかな.
松田くん@西森研
前回の学会で質問したことがきっかけ?で,議論を続けることになり今回は共著になった.分配関数ゼロのtailの問題で,rare event探索で結構深いところまで見えて,どうやらスピングラスにおけるGriffiths特異性を捕まえたという内容.質疑応答で伊庭さんに叱られるが,私がもっとちゃんと言っておくべきだった,松田くんにも伊庭さんにも悪いことをした.
他にも西森研の学生さんがたくさん話していた.勢いは相変わらずです.
座長
後半のセッションの座長をしたのだが,緊張が途切れたのか?あたふたしてしまう.しまりの悪い座長だった.深く反省.Surunganさんの発表では7分過ぎてもイントロだったので,こっちがドキドキしてしまう.scale free上でのスピングラス問題だが,scale freeには全く興味がないが,中田くんの研究と関連して何が起きるかは気になるところ.休み時間に捕まえて,いろいろ質問した.connectivityを変えても,para-SG転移にならないのはSFの特殊性か.
中島千くん@古典スピン系セッション
午後の古典スピン系のセッションで話す.いわゆる二温度問題の相転移の問題をBethe近似で調べてみた研究.素朴な平均場近似と定量的だけでなくて,定性的にも変わるところがある.ってことは,もっとちゃんと調べないとよくわからんということかな.でも,負の潜熱のような奇妙なことはロバストに残っていそうである.質疑応答はかみ合っていなかったので,何が面白いのか伝わっていなかったかもしれない.
古典スピン系セッション
そのまま午後はずーと古典スピン系セッションに居座る.岡部研の学生さんの発表にからんで,普遍性について岡部さんと川島さんにいろいろ教えてもらう.

9/23(三日目)

レビューセッション
何を思ったのか,学会の総合講演に出てみる.思い起こしてみると,ドジャンが講演をしたとき,自分が論文賞をもらったとき,以来だ(きっと).今回は総合講演とはちがい,レビューセッションなるものが企画されている.それが気になってもので,参加する.レビューセッションの前の論文賞受賞式では,5件のうち米谷先生が受賞されていた.おめでとうございますと挨拶にいったら,「もう,いいよー」とな.照れ照れである.
レビューはパラレルセッションで,福山先生と土井先生によるレビューを聞きにいく.お二人はお互いに対照的な話方であった.受賞式のときはガラガラだった会場は,思ったよりもものすごく多くの聴衆であった.となりのセッションはどうだったかはわからないけど,なんというか,いいことなのか悪いことなのかは正直不明.
若手奨励賞
午後からは領域11の第一回若手奨励賞の受賞講演を聞く.若い人が元気なのはいいことです.勢いのある講演ばかりでたのもしい限りです.もうちょっとサービス精神があってもいいかなーとは思いました.

9/24(四日目)

最終日の午前中はポスターセッションでした.

中田くん「彩色問題の相転移」
K-SATといいcoloringといい,私の直観をことごとくはずす結果がでてきて,いかに自分にセンスがないかを思い知らされる.彼の結果はcoloringを有限温度で見てみると,グラス転移があるのだが,絶対零度ではどこに突き刺さるのかが問題であった.どうやら,color-uncolorにはつながらないというのが今回の結果.SPでも予想されていたので,それを確かめたことになるんだけど,うううん,そうなんですね.これもうまくまとめて論文にしておきたい.

平間くん「動く教師のアンサンブル学習」
彼はほとんど一人でやってしまった計算でした.真の教師から学習中の偽教師から生徒はどのくらい賢くなれるかが問題.うまくアンサンブルすることで,偽教師を追い越すことはできるようだ.でも,ポスターの後で聞いたけど,それは自明だと突っ込まれたそうだ.さて,二の矢はどこに放つべきか...
福島「数独話」
今回はどうしてもポスター発表がやりたくて,前回ポスターをやったのを思い出せないくらい,久々のポスター発表.そして久々の手書きのポスター.万全の体制でポスターに挑む.裏では経済物理のシンポをやっていて,なんというか色物対決...でも役者が違うのでお客こないかも...というよりも,こんな広がりの無い,浅い研究やってていいのか???数独の話なんかすると物理を分かっていない単なる数独ファンしか来ないんじゃないか...と朝の40分の散歩では悶々としながら会場に向かう.ところが多くは杞憂に終わる.久々に,いや正直申しましてこんなの初めてなくらいに大勢の前で連続講演をしました.スピン系のプロから,経済シンポの合間に駆けつけて下さったであろう方まで,楽しく過ごせました.普段議論することの少ない早川さんや大信田さんとも議論できたのはよい体験だった.議論するといろいろ深いもんだと再認識.多くの指摘があったのは,キーストーン的な考え方で,抜いては困る数字の存在だったが,きっとあるのかもしれないが,それを調べるのは現状では面倒で,人間が解くときに陽には使っていないので大事なのかどうかはよくわからない.でも陰につかっているかもしれないし,結局それは問題を創る方の難しさに関係しているので,そっちは研究不足でした.それから忘れていけないのは,物理を知っている数独ファンからのツッコミです.お名前は挙げませんが,私の考えている難しさと,プロの難しさはちょっと次元が違うかもしれないと感じました.私はせいぜい「借り置き」の数の多さで,それは比熱やエントロピーのような静的な量にも反映されると考えたわけです.例が好くなくてプロを説得するには至りませんでした.それでもいい線いってるような気はします.
ガラスと粉体を行ったり来たり
久々のポスターが終わって,完全にぐったりしました.お昼を食べて,ガラスの勉強に行きました.といった感じで,学会は終了.自分でポスターをやったことが最大の成果かな.

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最終更新時間:2007年09月26日 20時50分58秒