期末試験終了!!
今日は無事に物理学A(電磁気学)の試験が終わりました.みなさん,ご苦労さまでした.
まずまず,良いくらいの程度の試験だったかなと思っています.もっとも,採点してみないと本当のところはわかりませんが...「良い程度」というのは,みなさんの全体の程度によく呼応しているかなという意味です.ちょっと意地悪な問題も出しましたので,正しく答えるのは簡単では無いにしても,全く書けなかったとしたら,それは完全に学生に問題があると思います.
まだ,採点していませんが,ざーと見た第一感は,「問6の答えが史上最高に長い」である.こんなにコメント書いてもらったことは本当にないです.問題が簡単で時間が余ったということでしょうか.たくさんもらったコメントの中には,何気ない一言に猛烈に頭にきたものも(結構たくさん)あるので,いずれここで大反論することにする.もっとも,的確なコメントもあり,勉強になることもあります.
今日のまとめと反省
採点した後で,試験の講評はすることにしますが,まずは,今日の問題の心を説明しておきます.
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平行平版コンデンサーの性質を議論しました.これは完全に高校の物理の範囲だったので,
講義に全くでないでも解ける問題なはずです.最後にエネルギーを求めましたが(これも高校の範囲),ここで最初の講義と電場のエネルギーを思い出して,ほくそ笑むことができた人はちゃんと講義に出ていた人.解答には全く現れないが,大学に入ってちゃんと電磁気を勉強した人だけ,ウケる要素が入っています.
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同軸ケーブルの問題.磁場を求めたり,自己インダクタンスを求めたりした.(b)はそのための誘導.磁場を求める問題はレポート問題と酷似であるから,復習をしていればできたはず.それから,(d)はこのテストのポイント.講義ではこの状況については一言もしゃべっていない.(満点を取られると悔しいので)100点を取らせないための問題である.表皮効果と呼ばれているものの簡単な定性的説明を求めました.問題文の中で詳しく状況を説明したつもりなので,電磁誘導から何が起きるかを説明できればOK.
- 次は2つの中からの選択問題.
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定常電流の場合にアンペールの法則に,連続の方程式と合わせて,マクスウェル・アンペールの法則を完成する問題.ほとんど全ての部品は与えたので,後は変位電流を導入し,どう論理的に組み立てるかが問われている.思いっきりアンペールの法則が書かれていたので,2番で思い出せなかった人にも親切な問題になってしまった.
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静電場の2つの法則から,ポテンシャルの満たす方程式を出して,クーロンポテンシャルがその解になっていることを確認する問題.クーロンの法則に戻れるのか?という問題設定を講義の時に話した.学生にも質問されたので,宿題にして,答えのアウトラインを喋った気がするので,問題にした.上の問題との選択という意味では(量的に)バランスがよいと判断して並列にした.
- さらに選択問題.
- 講義で実演した,銅板振子の渦電流による制動の様子を説明してもらった.これは,私だけでなく,みなさんにもやってもらったので,講義に出た人は体験したし,当然その理屈を考えてみたはず.
- 上の問題に対抗する?のは,静電遮蔽の説明問題.携帯電話の内側にはってある導体フィルムの話しを覚えているだろうか.ガウスの法則を使って,説明をやってもらった.
- さらにさらにしつこいようだが,最後の選択問題.これがある意味で一番難しかったかも.大学生らしい解答を望むといったところか...
- 冬になるとドアのところでパチッとなる現象を説明してもらう.それから,「お鍋をすると,体にマイナスイオンが取り込まれて,パチッとなることがなくなる」説を否定してもらう.この説はあるお天気おじさんが真剣に説明してくれていた.おいおい.公共の電波を使ってマイナスイオンかよっという突っ込みの問題でもある.それにしても,「パチッとなるのは静電気です.」こんな小学生のような解答は勘弁してほしい.
- 下敷をこすって,髪の毛がたつ理由を説明してもらう.講義ではちょっと面倒だといって,宿題にしたところ,誰からも質問がでなかったので,試験に出したという意地悪問題である.「髪の毛が立つのは静電気です.」うーん,それでよいとおもったのだろうか?
- 方位磁石はどうして方位を指してくれるのかを説明する問題.これも上と同じなので,選択の中に入れた.最終回に不自然な?状況で磁気モーメントの説明した理由はここにある.それにしても,「地磁気があるから」は困るな.あるからなぜコンパスは北を向くのだ?髪の毛はなぜ北の方向に立たないのだ?
- 最後に「感想書いて」ということでした.上にも書いたように,沢山のコメントを頂きました.このページで返答していこうと思います.
全体として,難易度は低めで,選択を沢山出したので,勉強したことが無駄になりにくい,学生にやさしい試験であると,自己評価している.どうだろうか.
今日の雑談:
- 今日試験を受けた人数は106名.大きめの教室の教壇に立つのはとても気分がいいものでした.講義でもこれくらいの人数が集まらなかったのは残念でした.最後の方は半分だったので,力量不足を痛感します.
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しかし,試験の後は決まって,単位の話だなー.以前に一度だけ,試験の後にお礼を言ってくれた学生がいた.そこまでいかなくても,なんかこうアカデミックな話題とか,ざっくばらんな楽しい話とかはないのだろうか.このおじさんはみんなに単位をバラまくマシーンじゃないぞと大声で言いたい.後で言及することになるだろうが,「予備校の先生」と学生の関係
のような(ちょっと失礼な物言いかもしれんが)けちくさいものと,大学の先生と学生の関係は全然違うはずで,もちろん,単位でつながっているわけではないと思うのだが...予備校の先生のようになるのが大学からの要請だとしたら,私は喜んでこの仕事を辞める.
- それはそうと,レポート3を返却中なんだが,みなさんとりに来て下さい.頑張って「赤」入れたつもりです.もってかないと,減点にするぞ!?.
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先日,「13歳からのハローワー..」を駒場の書籍部で発見.思わず手に取ってみて,開くページはもちろん「大学教授」.あんまり楽しそうに書かれていないので,妙に暗くなってしまう.ポストが空かないとダメとか,専門でそれなりの結果を出さないといけないとか,教育もただ講義するだけではだめで...こういうネガティブなところじゃなくて,素晴しいことを書かなあかんでしょう.唯一よかったのは「真にその分野を好きであることが望まれる」(だったかな).とにかく,「真に」という言い方がよかった.
- (2005.2.14追記)最近試験帰り?の学生さんがちょくちょくレポートをとりくるが,今日はその時に「あのー,全然関係ないのですが...」と質問してきた.
- 軽く振れるとスイッチが入る電燈があるんですけど,あれってどうなってるの?
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確かに全然関係ないと言えば関係ない.でも,電磁気つながりではある.
知ってます.知ってます.ありますね.えーと,即答できないところがかっこ悪い.ヒントはあって,手で触れたり,スプーンなどの導体で触れるとOKだが,絶縁体で触れるとダメだそうだ.きっと電気を流してスイッチにしているのだろうけど,どうすればいいかなー.
などと考えていると,このコーナー?にたびたび登場する加藤さんがやってきたので,昼食にいくときに聞いてみる.すると,彼はその物を知らないにもかかわらず,ほぼ即答.やられました.答えはこんな感じです.レポート3でもやりましたが,電位をスイッチ側に掛けておくとか,手との静電容量に差があればよいわけです.静電容量の大きい方に電気が寄ってきます(簡単ですね.冬と夏では手の状態が違うからどうするかなーと困惑していたけど,スイッチ側から流れるなら気にすることはない).検証実験としてこんなのはどうでしょうか.大きな導体(スプーン)では十分な静電容量があるので,電気が流れます.それをどんどん小さいものに換えてスイッチに触れます(例えばアルミ箔を小さくして,わりばしでつまんで触れてみる).そうすると,スイッチとの静電容量の差が小さくなって,つかなくなるはず.検証と同時にスイッチ側の静電容量の大きさを見積もれます.どうでしょうか.このページ読んでるかなー.宿題:この検証をやってみよ.うまくいったら是非教えて下さい.私は今回で電磁気はちょとお休みしますが,数年後また講義するときには講義のネタに使わせてもらいます.
- (2005.2.15追記)おーー.早速2人の学生さんから上の宿題のレスポンスが来る.しかも,夜中の2時や3時ころにメールがやってくる.早い!!帰りの電車でこのメモを書いて,家に帰って,サーバーへアップ.朝起きてメールを見ると返答が帰って来る.なんだか外国にいる共同研究者とやりとりやっている感じです.その結果はまたここで報告します.
- 頂いたメールは,まとめるとどんな導体を持ってきても人間の手で触らないとつかないということでした.
それはハンドパワーってやつでしょうか?
(足でも大丈夫ですね,きっと).さて,沢山試みてくれた調査の中で象徴的なのは,
鉛筆を持って,芯で触れると点灯して,木の部分で触れると点灯しない.
です.これで(微小)電流が流れて,それをセンサーで検知していることがわかります.
では,なぜ電流が流れるのかが次の興味でしょうか?調べてくれた学生さんは「アース」されていることが大事であろうと指摘してくれています.それは結局静電容量の大きな方に電気が流れているということですね.
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現状では,導電性かどうかが「点灯条件」になっています.これでは,
個人的に不満です.だって,電気が流れるか流れないかの判定だったら小学生にもできるもん.
えーと,私がどう考えているかは関係ないといえば関係ないのですが...
来たるべき将来のデモ実験としても迫力がない.そこで,アースする必要はなくて,これだとダメで,これだとOKという境目が知りたいです.地球ほど大きな導体(といっても講義でやったように大した容量は持たない)が必要かどうかが問題です.まず,「アース」が必要か「人間」程度で大丈夫かを見てみたいです.そこで,
ジャンプしながらスイッチに触れたらどうなりますかね?
うーむ,なんか考えが素人臭いし,ドスンドスンやっていたら近所迷惑になるかもしれない.でも自分でその電燈持っていれば絶対にやるんだけどなー.
それでつけば人間程度で大丈夫だとわかります.その次に,ちょっと簡単コンデンサー作ってみますか?学生さんによれば,5×10cmくらいのアルミ栢ではダメだったので,ボールにアルミ栢を巻きつけますか?
小さな地球を作るわけです.
スプーンでダメだったので,ピンポン球くらいだとダメでしょうね.サッカーボールくらいでどうでしょうか?(実家にいる人だと,アルミホイルの無駄使いだと怒られそうです).
先のジャンプ実験でダメだったら,サッカーボールでも小さいかも知れません.あるいは,講義で披露しなかった紙コップコンデンサーを試してみますか?
紙コップ2個にアルミ栢を巻き付けて,重ねるだけでできます.重ねるときに,別の長方形のアルミ栢をはさみます.そのベロをスイッチにくっつけてみるわけです.下敷をこすって,このベロに触れると,確かにビリッとするくらいの電気は貯まります.必要ならば,私が作ったものの写真を貼りますあるいは,WEBで「コップ コンデンサー」で検索しても出てきます.例えば,でんじろう直伝?はこれ.今度は行けそうな気がするのだけどなー.
- (2005.3.10追記)上の問題について,自分で電気屋さんにでも行かねばならないかなーと思っていたのだが,意外なところからコメントを頂く.
とあるセミナーでの休憩時間に,総合文化研究科の大学院生の大槻さんが,
「ジャンプでつきますよー」
と教えてくれた.こんな深いところまで読んでくれているとは...(WEBのよいところであり,こわいところでもある).とにかく,これで必要な下限が(地球でなくて)人間くらいあればよいことがわかり,ダメな上限はスプーンというところまで絞れた.今度大槻さんの机に遊びに行って,「答え」をつめてくる予定.そんな話をしていると,そこにいた他の大学院生に,その辺にころがっているバリコンもっていけばいいんじゃないかと指摘される.うーん,それはわかってるんだけど,学部一年の教養講義でやるには,徹底的に身近な道具でせめたいところである.
- (2005.4.25追記)
追試が終了した.採点も終了.ご苦労さまでした.例年思うが,この追試というのは(おそらくお互いに)つらいと思うものの,学生のがんばりをしっかりと見せてもらえる良い機会であるとも思っている.ここはキチンと手をつくさねばならいところだと,いつも考えさせられる.今回もまったく勉強しない学生がいる一方で,これが追試をうける学生の結果かと目を疑いたくなるくらいに大変よくできている学生もいた.さぞかし,がんばって勉強したのであろう.わたしなどまったく役に立っていないわけだが,追試の内容がノートに書かれていることだけから出ているので,ピシピシ心地のよい解答が書かれていると,ちゃんとノートを理解してくれているような気がしてうれしくなる.とにかくご苦労さまでした.
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