2008年度 北海道大学 集中講義
講義題目: 位相空間のトポロジーから見る相転移と最適化問題
講義担当: 福島孝治(東京大学大学院総合文化研究科)
日時: 2008年12月9日-10日
概要:
最適化問題や制約充足問題のように,複数の条件を同時に満足する多数の状態
変数の探索問題は,絶対零度の統計力学に類似していることは古くから指摘さ
れてきた.特に、近年,ランダムな制約条件のもとでの多くの問題が,制約条
件の数をパラメータとして変化させたときに,解の性質が劇的に変化すること
が見出され,多体問題の相転移現象と関連して勢力的に研究されている.全く
制約条件のない問題では状態空間の全てが解であるのに対して,制約条件を増
やすことで解の状態空間が減っていき,やがて全てが消滅することになる.こ
のような状態空間のトポロジーやジオメトリーの変化を統計力学の観点から眺
めてみる.この集中講義では,統計力学の相転移理論の基本的な考え方から始
め,ランダム系の統計力学の手法であるレプリカ法の解説から,制約充足問題
の例を示す.
1.はじめに
最適化問題,制約充足問題の例とそれらの相転移の様子
2. 平衡統計力学による相転移理論
統計力学のいろは,イジングモデルの相転移,平均場理論,ランダム
グラフ上のイジングモデル.
3. 制約充足問題の解空間
ランダムなK-XORSAT問題の解析,SAT-UNSAT相転移,解のクラスター化
4. さいごに
他の制約充足問題の数値計算による研究,講義で触れなかったopen problems
この講義に関連するが,ほぼ独立な話題をセミナー形式で初日の夕方に予定し
ている.
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数独の統計力学的研究
福島孝治(東京大学大学院総合文化研究科)
数独は日本の雑誌で有名になり,現在では世界的によく知られていてる単純な
パズルである.解くべき問題は,9×9のマスの中の各行,各列にそれぞれ1か
ら9までの数字を一つだけならべ,その中の3×3のブロックにも一つだけ数字
を入れる.これは典型的な制約充足問題であり,制約条件に適当なエネルギー
関数を導入することで,統計力学的には少し変わった格子構造上のポッツ模型
とみなすことができる.我々はこの問題の統計力学的性質をモンテカルロ法を
用いて調べた.例えば,一般のn×nマスに拡張し,全くヒントがない場合の数
独の解の個数を統計力学的に数え上げることができた.また,数独を解く難し
さと熱力学的性質の関係について議論する.
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最終更新時間:2008年12月14日 19時00分14秒